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フォーチュン・クエスト4 ようこそ!呪われた城へ

深沢美潮 (角川スニーカー文庫)

傑作(30点)
2008年2月6日
ひっちぃ

初心者パーティがゲームっぽいメタなファンタジー世界で繰り広げるラッキー続きの不思議な冒険の、本巻はゾンビなどが巣食う呪われた城に踏み込む話。

シリーズを振り返ってみると、1巻が悪い魔法使い、2〜3巻がドラゴンときて、この4巻ではアンデッドなのだからファンタジーの王道を行っている。ついでに言うと5〜6巻が怪しい新興宗教、7〜8巻が海と、こりゃファンタジーの入門本でもあるんだろうなぁ。

私が最初にこの本を読んだのは学生の頃だった。読後感が非常によく、ジンと心に残った。いい小説ってのは読み終えて本を閉じたあとになぜか意味なく表紙や背表紙をながめて、本棚に仕舞うときも心なしか丁寧になるもので、この作品にもそうした覚えが私にはある。いつか再読するだろうなと思ってその時を楽しみにもした。

で実際に十年以上たって再読してみると、やはり初読と印象が違っていた。ナニワ節を効かせ過ぎだなあとか、思ったより話が短かくて中身が薄い話だなあとか、こんな都合よく敵が…とか思ってしまった。作品ってのは読み手によって価値が変わってくる。私にとってこの本は再読してはいけなかったのかもしれない。

まあだからその分、冷静な分析が出来る。

この作品の最大の魅力はネタバレになってしまうので説明しにくいのだが、基本的には前の巻と似たようなものだ。子供はこういうのが好きだと思う。最終的には他人と分かり合えるんだという甘え。母親や他人が別の自我を持っているとは認めたくない幼児性。あるいは日本製のゲームやアニメなんかで結構多いのは島国という恵まれた環境にあるから、なんていう馬鹿みたいな説明も繰り返してしまう。でもどんな理由をつけても、そういうのが好きな人がこういう作品をすごく楽しめるという事実にはなんのケチもつけられない。

呪われた城の謎が非常に突飛で面白い。テーブルトークRPGの文化がなければ生まれなかった発想だと思う。まあSFまで行けば結構この手の趣向はあるのかもしれないけど。

終盤になって主人公たちとは別のパーティが出てくるのだが、描写が浅い割にやたら作者の思い入れ過剰で描かれるのにはシラケる。

ちゃんと最後盛り上がって物語がハッピーエンドで終わるのがいい。最近の小説や作品って面白い面白くないは別として盛り上がるポイントが少ないような気がする。あるいは変な空騒ぎになったりして。こういうちゃんと盛り上がってくれる話を読むと読んでるほうは高揚する。って再読の今回はあんまりしなかったけど。映画とかにも簡単に出来そうだ。

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