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とりかえばや異聞

木原敏江

いまいち(-10点)
2002年6月5日
ひっちぃ

日本の古典「とりかへばや物語」にヒントを得たと思われる、まったく違う物語、少女漫画。戦国時代を舞台に、毛利と織田にはさまれた独立勢力佐伯家の領主とその双子の妹が入れ代わる。でも主人公は別にいて、妹の恋人の男、鬼ハーフでバイキング関連という意味不明な設定。

少女漫画の平均レベルから言うと、むしろ平均点落ちなのではないかと思うくらいの出来だが、それでもそれなりに楽しめた。

作品名の元となった「とりかへばや物語」は、男が女装を、女が男装をして、宮仕えをして大騒動を巻き起こす話らしい。日本の、いや世界的に見ても、古典の中では異色の作品のようだ。

この作品はその趣向をそのまま取り入れた作品なのだが、むしろ物語の中心は鬼ハーフの主人公と姫君との恋愛にある。題名倒れの作品と言わざるを得ない。これといって新しい趣向の男女交換が描かれるわけではないからだ。

むしろ面白いとしたら、主人公が鬼の母親と人間の父親から生まれた鬼ハーフだという点だろうか。鬼の力を持っているので、妖術が使える。そして、鬼をなぜかバイキングと結びつけている。冠二郎がバイキングで男らしい愛を歌い上げたのと同じくらいヘンな違和感がある。鬼は鬼としてそこでやめておけばよかったのではないだろうか。河童ハーフとかはどうやって説明する気だろうか。

織田と毛利という二大勢力に囲まれた独立勢力、という設定が面白い。どっちについても利用されるし、かといって独立を守れば二つの勢力と渡り合わなければならない。

結局、毛利の姫君を迎え入れつつ、同盟のつもりではないということで独立を守ろうとする。しかし、結局は完全な独立を選び、両勢力の連合軍に蹂躙されてしまう。…待て待て。これはもう絶望的にヘンではないだろうか。まず、なぜ強大な毛利がわざわざ姫を差し出さなければならないのか。普通は逆だろう。それに、両勢力が連合を組んで小国を攻めるという筋書きはなんなのだ。根本的に話の組み立てがダメ。

話の語りかたはうまいと思う。変わったストーリーだが引き込まれた。ただ、筋書きだとか設定がヘンで、すっきりしない。それでも前半までは、ダイナミックに描いていて、作者の力量を感じた。しかし、とりかえばやがあっけなく終わるところからラストまでの筋が、ぜんぜんダメ。

絵は平均点くらい。ただし、少女漫画に読み慣れていないと抵抗があるだろう。私はひさびさにこの手の少女漫画を読んだので最初は抵抗があった。

少女漫画を読み慣れない人には、もっと別の作品があるので、あえて読むべき作品ではないだろう。

(最終更新日: 2019年6月1日 by ひっちぃ)

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