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「ドル安」はアメリカに貯まりすぎたドルからの逃避だ

大前研一 (SAPIO 2002.8.7 「最強のビジネスマン」講座)

傑作(30点)
2002年8月4日
ひっちぃ

最近のドル安は、アメリカ経済への不信というよりも、世界中に流通しすぎたドルが売られていっているからだという。GDP で世界経済の二割の経済規模をもつアメリカだが、世界の中央銀行の準備通貨と個人貯蓄通貨では 68.2% のシェアがあるという。

ここ 10年くらい特に、アメリカは世界中にドルを浸透させる戦略をとってきたという。自国の金利を高くし、他国の金利を低くさせることで、自国に資本が集まるようにしたらしい。

普通に個人レベルで考えると、自分の金利を高くするというのは要するに高利貸しから金を借りるようなものなのだが、国レベルだと自分で好きなだけ貨幣を印刷すればいいだけのことだ。いくら印刷しても、使われなければ価値は下がらない。こうして、アメリカ全体の価値を遥かに超える量のドルが世界中にばらまかれた。

それが要するに最近になって使われ始めているからドルが安くなっているのだと著者は主張している。といっても貯めたドルで急に何かを買ったりするわけではなく、別の通貨を買うのだ。最有力なのが、新興勢力ユーロである。ドル対ユーロで通貨戦争が起きるのだと言っている。

続いて著者は、通貨戦争がクリンチ状態になり、二つの通貨が一つになる可能性があると言っている。その理由が、単なる数字あわせでたまたまレートが 1対1 に近いからだと言っているが、そんな馬鹿なことがあるだろうか。じゃあ 1ドルが大体 115円の日本円は全然可能性がないのか。子供に通貨の仕組みを教えるレベルの話ではないか。

それはいいとして、ドルの威信をたもてないとアメリカはこれからかなり長い不況に突入することが確実だ。著者だけでなく多くの人が主張するように、アメリカ国民は証券での貯蓄率が高い。ドルが下落しても国内経済には関係ないが、証券は世界中から集まった資本が少しでも逃げると大きく下落する。そうなると、国民の購買力が下がり、国内経済が停滞してしまう。

著者はこの文章の最後の結論として、最近の円高ドル安は日本の経済がよくなったためではない、と締めているが、この結論は正しいのだが主題ではない。アメリカのお先が真っ暗だと言っているのだ。

まあ実際のところ、冒頭で挙げたドルのシェアの数字にどれだけの意味があるのかは疑問だ。各国の中央銀行および個人貯蓄にあるドルの額面と、アメリカの GDP 98,729億ドルとでは、数値が違うのではないか。先進諸国の外貨準備高は数百億ドルくらいらしい。日本や一部の国でも千億二千億ドルくらいだ。ただし米国債を日本は二兆三兆ドルくらい保持しているというらしい…。

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