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偽物語 (上)

西尾維新 (講談社BOX)

最高(50点)
2011年2月7日
ひっちぃ

妖怪っぽいものと頻繁に関わるようになった高校生の青年・阿良々木暦(こよみ)には、正義感の強い二人の妹がいて、彼女たちの通う私立中学で勇名をとどろかせていた。そんなある日、子供たちに怪しいまじないを教えて金をとる謎の男が現れ、町内を騒がせる。正義感に駆られた妹のうちの一人、妙な道場に通って体を鍛えている単細胞の阿良々木火憐(かれん)が、無鉄砲にも単身で男と接触し、男から奇妙なまじないを掛けられて高熱を出す。妹の危機に阿良々木暦が立ち上がる。西尾維新の「物語」シリーズの三作目の上巻。

さんざんちょいちょい触れられながらほとんど語られることがなかった主人公の妹二人にやっと焦点があたる。上巻では筋肉バカ的なキャラの阿良々木火憐がヒロインだ。「化物語」のアニメだと次回予告でやたらハイテンションに声だけ出演していてうざったかったけど、一体どんなキャラなのか興味があった。割と型どおりというか、例によって西尾維新のキャラはしゃべりまくるのだけど、この筋肉バカキャラもそれなりにしゃべっていて魅力を感じた。

ストーリーはしょぼい。主人公の恋人となった戦場ヶ原ひたぎをかつて騙した詐欺師が謎の男の正体で、主人公は彼女とともに行動して男の目論見を阻止しようとする。つまり妹たちの物語というだけでなく戦場ヶ原ひたぎの物語でもある。でもなんか釈然としない感じ。導入部の展開はウケたけど強引すぎて素直に楽しめなかった。何も考えずに楽しむのが良かったのだろうけど、うーん。それにほんとただプロットにのっとって展開を描写しただけって感じ。謎の男の妙ないさぎのよさとかの行動原理が訳分からなかった。

妹の物語としては、題にあるように「偽物」がキーワードになっていて、彼女たちの正義感なんてのはニセモノにすぎないんだとか、じゃあ本物ってなんだ、みたいな感じで語られる。でもそれ以上は深く突っ込んでいないので、表面をなぞっているだけのように思った。もっと哲学的に踏み込んでくれればと思った。そもそもなぜ主人公は妹たちの正義感をニセモノだと思ったのだろう。ごっこ遊びだからみたいなことが書かれているけれど、その程度なのだろうか。きっと主人公の考える正義というものが重いから、妹たちの正義感がニセモノに思えてしまうのだろうけれど、その肝心の主人公の考える正義がほとんど語られていないので、大した思索もなく流れていってしまう。ほかに偽書とか、偽物であることの劣等感がどうのという話も出てくるけれど、どれも小粒ですっと頭から抜けてしまった。

まあそんなわけでメインテーマは肩透かしなのだけど、これまでに本シリーズに出てきた魅力的な女の子たちとの、ストーリーから関係のない日常会話がこの作品では爆発していて、それがこの作品の一番の魅力になっている。妹の内気な友人だったはずの千石撫子が主人公を自宅に招待して暴走し始めたり、エロ変態体育会系キャラの神原駿河が大失敗して落ち込んだりする。もちろん小学生の浮遊霊キャラ八九寺真宵とのぶっとんだ会話や、狂気にますます磨きが掛かる戦場ヶ原ひたぎとの会話も楽しい。もうストーリーなんてどうだっていいから、彼女らと主人公との対話をただひたすら読んでいたい。

まあだから終盤の格闘シーンなんかダルくて読むのも面倒だったけれど、そんなのがまったく気にならないほど面白くて、中毒症状に掛かったかのようにすぐ読んだ。傷物語でちょっと違うなと期待が外れた人も、傷物語は飛ばしてもいいからこの作品を読んだらいいと思う。ただ、化物語にあったようなちゃんとしたストーリーは期待できないので、ストーリーを楽しみたい人は猫物語まで飛んだほうがいい。でもこのシリーズを読み進んでいるってことは、やっぱりこの会話が楽しいから読んでいるんだよね?この点に関して言えば、満足度120%の素晴らしい作品だった。

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