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Fireface UC

RME

傑作(30点)
2011年4月10日
ひっちぃ

DTM(パソコンで音楽)用のUSBオーディオデバイス。独自のFPGAによる短いレイテンシ(遅延時間)と豊富な入出力と高機能な内蔵ミキサーが特徴。

パソコンを使ったオーディオシステムの性能が上がってくると、デジタル信号の生成時の精度が問題になってくる。デジタルデータをデジタル信号にするだけなのになぜ精度が問題になるのかというと、一般的なオーディオ装置で使われているデジタル信号でデジタルなのは振幅をあらわす数値だけで、時系列のタイミングについてはデジタルに符号化されていないのだ。この問題をジッタと言う。

marantzのPM-11S2というプリメインアンプの中では高い方のアンプを買ってからというもの、自分のオーディオシステム全体のバランスから考えてDAC(デジタル・アナログ・コンバータ)を見直す必要を感じていた。近頃はDACだけでなくDDCつまりデジタル・デジタル・コンバータといってパソコンの中のデジタルデータをいかに高精度な音声デジタル信号に変換するかに注目が集まっていた。PCオーディオになじみのない人にはDDCという言葉は耳慣れないかもしれないが、要するにUSBオーディオデバイスから音声アナログ信号ではなく音声デジタル信号を取り出すだけの変換を言う。

とは言うもののオーディオの世界はオカルトが蔓延していることもあり、DDCなんていうものが一体どれだけ音質に影響を与えているのか、当時の私は半信半疑だった。そこでまず自分の手持ちのサウンドデバイス同士で比較してみることにした。驚いたことに、私がメインで使用していたEMU 0404 SEの同軸デジタル出力の音よりも、主にデジタル信号のセレクターとして使っていたONKYOのSE-U55GXの光デジタル出力のほうが明らかに音が良かった。ONKYOのSE-U55GXにはジッタ低減のための技術が使われているほか、一般にパソコンの場合は電気的なノイズが強いため、デジタル信号を電気信号として送る同軸デジタル出力よりも、光信号として送る光デジタル出力のほうが音が良いことが多いらしい。また、SE-U55GXには本来のドライバではなくASIO4ALLというデータロスのない転送が出来るフリーのドライバを使用した。

そのあと私はC.E.C.のDX71mk.2という旧世代のミドルレンジDACを買ったこともあり、それならDDCも性能の良いものが欲しくなったので、中途半端なものを買うぐらいならいっそ思い切って高いやつを買ってしまえと思って買ったのが、前置きが長くなりすぎたけれどこのRME Fireface UCだ。円高還元セール中で以前より安くなっていたものの、家電量販店でなんと132,500円もした(ポイント11%)。

この製品はもともとDTM用つまりパソコンで音楽制作をやるためのものなので、前面にマイクやギターなんかをつなぐ端子がある。マイク用のプリアンプの性能が良いようで、録音時の音質が高いらしい。…ってムダ性能だw

18チャンネルずつもの入出力を持っている。といっても、光デジタル入出力にADATという多重チャンネルを送れる形式で48khz時なら最大8チャンネル送るのを勘定に入れているので、これを使わなければ12チャンネル、全部ステレオで使えば6系統ずつとなる。内訳は、同軸デジタルと光デジタルの入出力が一つずつ、アナログ出力が背面に3系統と前面にヘッドホン出力1つ、アナログ入力が背面に2系統に前面にモノラル2×2でそのうち2つは業務用マイクもつなげるXLR 3pinでも使えるノイトリック社製のジャック。

これらの豊富な入出力を、FPGAというアップデート可能なカスタム回路上に実装された高性能なDSPによるミキサーで自由に混ぜたり入れたり出したりできる。これを使うと、たとえばゲーム機の音とテレビの音とパソコンの音とギターの音を全部混ぜてヘッドホン出力に送ったり、それと同時にテレビの音だけをプリメインアンプに送りながらギターの音だけをパソコン上で録音するなんていうこともできる。ただし、DSPで処理しているのでアナログで入力しても必ずいったんデジタル信号に変換されてしまう。

多チャンネルのたとえばDVDの5.1chのソースを全部同時に再生してそれをそのままアナログ出力に出すことも出来るので、AVアンプを使わなくてもプリメインアンプを三台用意すれば多チャンネル再生が出来る。ただしドルビーのデコーダ機能はこの製品だけでは出来ない。もちろん5.1chなり7.1chなりを2chにミックスダウンして再生することも出来る。

で、肝心のDDCとしての性能はというと、ONKYO SE-U55GXと比べてほとんど違いが分からなかった。SE-U55GXの性能が負けず劣らず良かったせいなのか、聴き比べに使ったDACのC.E.C.のDX71mk.2の性能で頭打ちになったせいなのか、それとも私の耳の感度の限界なのか分からない。

DACとしての性能についても聞き比べてみたところ、最大24ビット192khzとスペックで勝る上に、音についてもなんとDX71mk.2に迫るぐらい良かった。さすがに若干劣るかなというぐらいの差は感じだけれど、ほんのわずかだしブラインドではっきりと聴き比べられるかどうかあまり自信がない。

おまけでヘッドホン出力についても聞き比べてみた。ネットでの評判どおり割と良かった。たぶん五万円ぐらいのヘッドホンアンプと同程度の音質だと思う。すっきりした素直な音だったけれど少々の物足りなさがあった。

DTM用の機器というと一般のオーディオ機器と比べて電源部分が弱くてちゃちな造りをしているのだけど、はっきりいって自分がこれまで思っていたほどの差を感じなかった。この一台があれば極端な話ほかのDACもヘッドホンアンプも要らないレベルだと思う。ただ、ほんのわずかとはいえDX71mk.2の方が音質はいいしヘッドホン出力の質も上だと思う(A級アンプを謳っているけれどヘッドホン出力は違う回路かも。プリと共通のボリュームを使っているからたぶん同じだと思うけれど)。このわずかな差にどれだけの金を払えるのかということなのだろう。一台で全部まかなうのでなければ、それぞれの機能で性能の良い機器を選んだほうがいいと思う。

ただ、数少ない欠点として、接続するパソコンにはCore 2 Duo以上の性能が推奨されている。パソコンとつながなくても使えるけれど、ミキサーの細かい設定にはパソコンが必要となる。ミキサーの設定だけだったら性能の低いパソコンでも良いとは思うけれど、音楽ファイルを再生するならそこそこ性能の良いパソコンが要る。レイテンシ(遅延時間)を短くすればするほど性能が要求される。

DACというのは音質への影響があまり出にくいものなので、アンプとスピーカーに合計二十万以内しか使わないようなシステムだと、ONKYOのSE-U55GXの現行機種であるSE-U55SX2みたいな二万円ぐらいのデバイスでも十分だと思う。それより高いシステムを組むならもう少し良いDACにしたほうがいいので、セパレートアンプなんかでシステムを組まない限り、このRME Fireface UCは音質だけでなく機能性から考えてもかなり良い選択肢だと思う。ただ、ONKYOはDAC-1000という上位機種を出したので、高機能なミキサーとヘッドホン端子が要らないならこっちのほうが安い。聴き専なら入出力の少ないBabyfaceという製品が最近RMEから出たけれど、ネット上の評判では音質が若干劣るという声が上がっていたり、発売間もないこともありまだユーザー数が少ないので評判があてに出来ない。また、最上位機種UFXのほうが少し音がいいという声もあるけれど、こちらもまだ評価が確立していない。

正直DDCとDACを別々に揃えるより、最初からC.E.C.のDA1NやESOTERICのD-07あたりのUSB接続も出来るミドルレンジDACを買っていた方が良かったんじゃないかと思わなくもない。

(最終更新日: 2017年5月3日 by ひっちぃ)

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