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To LOVEる

漫画:矢吹健太朗 脚本:長谷川沙貴 (集英社 ジャンプコミックス)

まあまあ(10点)
2012年2月4日
ひっちぃ

高校生の少年結城リトは、同級生の西連寺春菜のことがずっと好きだったが、勇気がなくて想いを打ち明けられずにいた。あるとき空から宇宙人の家出美少女ララが降ってきて、リトのことを好きになって付きまとうようになった。ララは銀河系を治めるデビルーク星の王女だった。家出してきた彼女やリトたちに宇宙から様々な魔の手が伸びる。年頃の男の子の送る学校生活に宇宙人が入り乱れるちょっとエッチなラブコメ少年マンガ。

アニメ化された作品を見て、裸の女の子の絵がとてもかわいくて、なんだかんだで見続けていたけれど、話としては大して面白いとは思えなかったのでそれっきりになるはずだったが、2ちゃんねるでこの作品の漫画担当の矢吹健太朗がとても人格者だということが語られていて、そのつながりで作品についても色々みんなが語っているのを見て原作を読みたくなったので読んでみた。

で単行本全18巻を結局読破したのだけど、やっぱり話としては全然面白くなかった。ただ、絵がきれいで裸満載なのと、キャラクターが外見だけじゃなくて性格も込みでかわいくて、作品世界にもそれなりに愛着が持てた。

この作品は漫画担当の矢吹健太朗と、アニメやゲームの脚本家の長谷川沙貴という人が、編集とも相談しながら作り上げたものらしい。矢吹の前作「BLACK CAT」のアニメ化のときに知り合ったとのこと。話の作り方が手堅くて、エロを入れつつ毎回19ページで基本的に話を完結しているところは職人的ですごいと思う。

でもやっぱりアニメの脚本家ってここまでなんだなあ。脚本家は脚本家であって原作者ではないという。話を整えることはうまくても、物語のコアがない。登場人物に確固とした想いが感じられない。

主人公の少年リト、宇宙からきた王女ララ、リトが想いを寄せかつ実は相思相愛な西連寺春菜との三角関係が基本となっているのだけど、ほとんど緊張感がなく毎回ハプニング的なエロシーンを軸に話が進んでいくだけ。唯一の例外が、ララの父親がリトを脅してララとの付き合いを強制しようとしていることを知ったララが、リトを含めたみんなの自分についての記憶を消し去ろうとするエピソードで、この話はとてもせつなくて良かったけれど、ララは基本的に天然不思議ちゃんなので普段あんまり真剣味がなくお気楽に過ごしていて、人格に統一が取れていない。きっと「こうすれば話が面白くなる」的な流れで話を組み立てることが優先されていて、キャラが本当の意味で動いていない。

シチュエーションコメディとしても質が低く、話の展開で楽しむ要素はほとんどない。それはもちろん毎回完結させるという短編の制約上ある程度は仕方が無いのかもしれないけれど、短いエピソードの積み重ねがのちの話に少しずつ影響していくことだって出来るのだから言い訳にならない。具体的に言うと、勘違いが積み重なっていくだとか、何かの事件があとを引きずるだとか、短所がえぐられたり逆に克服したりとか。幽霊キャラの犬嫌いはエロシーンを作るだけにしか使われていないし。

キャラ同士の意外な接触とかがなくてワクワク感にも乏しい。○○なあのキャラと△△なこのキャラがこういう場面で接触するとどんなやりとりになるんだろう、みたいなの。主人公リトと少し距離を置いたキャラ同士の交流を描いて暖めて、あとからリトと接触させる、とかそういうの。ヤミとキョーコの話なんかそれっぽいけど、ララがキョーコと出会ってあっさり処理されて終わっちゃってその後なんにもないし。そもそもレンのキャラが弱いしなあ。男と女の人格が体ごと入れ替わるなんていう相当おいしい設定を持っててこれだからあきれる。そういえばララは「うる星やつら」のパクりだし、レンは「らんま1/2」のパクりだよなあ。面白い要素はどんどん取り入れる方がいいけど、それで面白くならなければしょうがない。

単行本の幕間に製作裏話が載っていて、割と興味深く読んだのだけど、この人たちは色々考えすぎて話をダメにしていると思う。一番でかいのは、主人公以外の男の登場人物がほぼ猿山しかいない点じゃないだろうか。こんなステレオタイプなやつしかいないなんて。途中から古手川の兄という年上キャラが出てくるのだけど、読者の反感を買わないよう慎重に性格を決めたと書いてあり、あたりさわりないようにしか出てこない。タイプの異なる色んな女の子さえ出しとけばそれでいい、邪魔になりそうな要素は極力排除、これで話が面白くなるんだろうか?

そんな中で一番魅力的だったのは風紀委員の古手川という少女だった。このキャラもステレオタイプといえばそのとおりなのだけど、普段から故意でないにせよエッチなことばかりしている主人公リトに対して怒りつつも惹かれていくという広い振り幅、相反する気持ちを抱えてそれに気づいていく動き、時に暴走してみんなから嫌われる話、この少女が一番人間味があって魅力にあふれている。この作品に出てくるキャラは大体役割や動きが定まっている中で、数少ない成長キャラだと作者が言っていて、それはそのとおりなのだけど、それだけでは決してない。

リトが想いを寄せる西連寺春菜も単なる想われキャラではなく自分の想いと悩みを抱えるキャラなのだけど、作者が話の内容に制約を掛けた影響が強いせいか、大して魅力のないヒロインになってしまっていると思う。あ、西連寺春菜の飼い犬であるボストンテリアのまぬけな顔をしたマロン(♂)が面白かった。春菜がマロンに抱く思いとのズレがウケた。SFなので犬の考えていることが分かる描写が簡単にできるし。

矢吹健太朗はアニメ・ゲーム脚本家と組むんじゃなくてまず小説書く人と組んだほうがいいと思う。ってそれがその後やってる「迷い猫オーバーラン」なのか。でアニメ化するときに改めて長谷川沙貴なりアニメやってる人と組んだ方がいいんじゃないだろうか。

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