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恋物語

西尾維新 (講談社 講談社BOX)

傑作(30点)
2012年4月1日
ひっちぃ

蛇の神となった少女・千石撫子に命乞いして、高校の卒業式の日まではなんとか生きながらえることができた青年・阿良々木暦とその彼女・戦場ヶ原ひたぎだったが、二人にこれといった解決策はなく残された時間を過ごすしかなかった。そんな絶望的な状態のもとで戦場ヶ原ひたぎは、かつて自分と家族をボロボロにした詐欺師にすがることを思いつく。人気ライトノベル「物語」シリーズのセカンドシーズン最終話。

最初のページを読んだだけですぐに分かることなのでいきなり書いてしまうが、なんと今回はあの詐欺師・貝木泥舟が一人称をとって語っている。主要登場人物とは言いがたいこいつがまさかまさかの独白モードで、一風変わった哲学を持つこいつが詐欺師らしく本当かウソか読者をまどわせることを言いながら物語を進めていく。面白かった。

で作中で明記されているわけじゃないけれど、詐欺師・貝木泥舟と戦場ヶ原ひたぎはかつて深い関係にあったんじゃないかと想像できてしまう。その点についての具体的な描写はまったくないのだけど、もうそうとしか思えなくなってしまった。

神の力を得た千石撫子に対しては、いくら怪異の王たる吸血鬼の力を持った阿良々木暦と忍野忍でもかなわないのだから、もはや言葉で言いくるめるしかない。そこで貝木泥舟は入念に調査をし、大胆にも信者のふりをして会いにいき、策を練る。「撫子だよ!」と無邪気に神を演じる彼女がかわいい。撫子と何度か接触するうちに貝木泥舟は自らの成功に自信を持つようになる。しかし本当にうまくいくのか…?

という謎解きと言葉の対決がこの作品の中心で一番面白いところなのだけど、もう一つ外せないのはあの自分の恋人にも高飛車な態度の戦場ヶ原ひたぎが、貝木泥舟に対しては言いなりにならざるをえず色々我慢して耐え忍んだり、けなげなところを見せたり、気丈にも反抗してみせたりするのがなんともいえず魅力的だった。

正直、戦場ヶ原ひたぎが阿良々木暦のことを好きだということにいまいち実感が持てないというか、ついでに言うとそれ以上に阿良々木暦のほうが戦場ヶ原ひたぎのことを好きだということにも説得力がないというかまあそれはいいとして、戦場ヶ原ひたぎのことが読んでいてよく分かっていなかった。一応正ヒロインなのにそれでもこのシリーズが楽しめたのは、ハーレム状態の主人公のまわりに集まる女の子の中でもこの戦場ヶ原ひたぎが一番ひどい毒舌キャラだったからだ。一応一作目「化物語」の終盤で彼女の心の奥のことが軽く描かれ、印象的なシーンのもとで盛り上がって満足していたのだけど、いま思えばなんだかぼかされていい感じになって留め置かれているだけだった。まあそれを言ってしまえばこの巻を読んだところでまだ足りないのだけど、彼女の余裕のないところが今回描かれていて、彼女の本性らしきものに触れられた気がした。

と持ち上げておいてこう言うのもなんだけど、やはりまだ全体像が見えてこない。シリーズが十冊超えていてまだヒロインが見えてこないってどうなんだろう。この巻で完結かと思ったらまだサードシーズン(?)があるらしい。結局この戦場ヶ原ひたぎは単なるエキセントリックな女ということで終わるのか、最後に読者に深い感動を与えてくれるのか。このまま投げっぱなしになりそうな気がしている。今回彼女の人格形成に貝木泥舟のような詐欺師の存在が大きく影響したことが描かれているわけだけれど、そこからもう一歩踏み込んでくれるのかどうか期待してしまう。

最後、もっと大きな力の存在をほのめかしているのだけど、これはやっちゃいけないことのような…。こういう展開って読者は求めていないと思うんだけどなあ。でもこの作者が原作を書いているあの駄作としか思えない「めだかボックス」が結構人気あるみたいだから、わけのわからん終わり方をする筋書きが見えてきたようで怖い。

そうだ。本シリーズの「偽物語」が今年アニメ化されたので見た。この作品はアニメになると制作会社シャフトの変な演出がうっとうしいのと、そもそもアニメという表現手段の情報量が多いために原作の純粋な対話だけだと持て余してしまうので、見ていてちょっとつらかった面もあった。でもあの歯磨きのシーンとか、原作にはない素足フェチな演出がとてもよかった。ネットでも原作ファンが盛り上がっていた。

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