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銀の匙 4巻まで

荒川弘 (小学館 少年サンデーコミックス)

まあまあ(10点)
2012年9月23日
ひっちぃ

勉強しかとりえがなかった少年が挫折し、うまくいかなかった親元を離れて農業高校に進学し、生き物とふれあいともだちとつきあいながら自分を見つめなおしていく。少年マンガ。

錬金術という架空の超能力を扱う少年が国家の闇と戦う「鋼の錬金術師」で大ヒットを飛ばした作者が、一転して現代日本の農業高校での青春物語を描いたのがこれ。早くもマンガ賞を受賞している。少年サンデーは立ち読みで済ませているけれど、この作品は掲載順が先頭の方にあることが多いのできっと人気があるのだろう。

まあまあ面白い作品だと思ったけれど、面白いのはもっぱら農業がらみのことで、物語自体は正直つまらなかった。主人公は黒メガネのまじめ少年八軒クンなんだけど、こいつの抱える悩みとか親との関係なんかが全然共感できない。うーん。読者である私がこの青年と距離がありすぎるからなんだろうか。挫折とか親との関係とかって結構共感を得やすいと思うんだけど、それでもびっくりするほど冷めた目でこの青年を見るしかなかった。たぶんその大きな理由は、あまり具体的なエピソードが語られていないからだと思う。なんか知らないけど悩みを抱えているっぽい、みたいなのが続く。少し親との関係改善のきざしだけが見えてきたけれどまだまだな感じ。

ヒロインは乗馬が好きなショートヘア(内ハネ)の長身な少女。でも相変わらずロマンスらしいロマンスなし。主人公の八軒クンの片思いかと思いきや、八軒クンに女の影があると手に持っていたものを取り落とすというベタな描写があったのできっと悪からず思っているのだろう。でもこの作者ほんと恋愛描かない人だなあ。女の子はかわいいのになあ。

ともだちはみんな個性的なんだろうけど、なんかあんまり魅力を感じない。なぜだろう。先生連中のほうが面白い。でも総じていまいち。ノリは楽しげなんだけどなあ。妙に空回りしているような感じでずっと読んでいた。この作品、人気あるみたいだし、現に売れているらしいから、コミカルな描写はきっと多くの人に受け入れられているんだろうなあ。私はなんかこのノリについていけなかった。嫌いなわけじゃないけど、ふーんって感じなんだよなあ。

みんなちゃんと進路について考えていて、少しずつ語られていくところはとても良かった。農業高校という目的のはっきりした高校でも進路は人それぞれで、実家を継ぐという人が多いけれど、ほかにも畜産に携わる獣医師になりたいだとか、乳製品を作りたいという人など色々いる。人間模様としては基本的に主人公を中心にした星型になっちゃってるけれど、ヒロインと野球部の新エースとのつながりが描かれるなど、なにやら別展開も進行中。でも数話使ってるわりに思わせぶりでまだ進展なし。

農業高校ならではの部活動の話がある。主人公は乗馬部に入る。馬のこと、先輩や先生、大会のこと、ばんえい競馬のことなどいろいろ。ほかにホルスタイン部なんていう牛をめでる部があって、品評会に出すために牛をドレスアップしたり、遺伝子操作を目指したりしている。部の先輩たちが牛を愛しすぎていてネタにされている。

この作品に出てくる食べ物がみんなすごくおいしそう。

同じ農業関係の学校が舞台の作品の中でも、発酵が中心の石川雅之「もやしもん」、獣医をめざす佐々木倫子「動物のお医者さん」と異なり、畜産のしかも食肉がいまのところ中心になっているのは興味を引かれた。加工して調理して食べるところまで描かれるのがよかった。農作物にも多少のウエイトがある。

この作品はおおげさにいうと日本人の食の意識を変えると思う。

でも物語としてつまらないのがなあ。青春感があるところは魅力があるんだけど。農業や食べ物に興味ない人は読まないほうがいいと思う。あ、たいていの人は食べ物に多かれ少なかれ興味あるか。積極的に勧めるには弱いけれど、読んでみるといい作品ではあると思う。

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