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クロサギ

原作:夏原武 作画:黒丸 (小学館 ヤングサンデーコミックス)

まあまあ(10点)
2013年9月16日
ひっちぃ

詐欺師に騙されて父親が一家心中をはかり、ただ一人生き残った青年は、父親を陥れた詐欺師に復讐するため、詐欺師を詐欺に掛ける「クロサギ」となり、手がかりを求めていろいろな詐欺師を潰していく。テレビドラマにもなった人気青年マンガ。

よく覚えていないけれど確か2ちゃんねるのまとめサイトを読んでいてこの作品に言及していたレスを見て、そういえばこの作品はテレビドラマ化されてヒットした作品だなあ、詐欺がテーマだなんて面白そうだ、と思って読んでみた。掲載誌が途中で変わって「新クロサギ」となるらしいのだけど、とりあえず無印のほうだけ全部読んだ。

読み終わるのに時間が掛かった。面白いけれど面白くない作品だった。

主人公の青年は、詐欺師の情報を謎の老人・桂木から買っている。この桂木は、詐欺の業界の大物であり、本来であれば青年のターゲットになる大物なのだけど、同時に青年に「クロサギ」としての生き方を教え導いていく存在でもあった。

連作短編みたいになっていて、振り込め詐欺だとか学習教材詐欺といった小さなものから、大企業の公共事業や買収といった大きなものまで、大小さまざまな詐欺が扱われている。読んでいてとても勉強になる。

でも読み進めていくうちに飽きてきてしまった。いつも陰気な顔をしている主人公が、仕事をするときは笑顔を張り付けてビジネスマンを装い、カモのふりをして詐欺師の心の隙間をついて一見おいしい話を持っていき、逆に詐欺師を詐欺に掛けるという一連の流れが延々繰り返される。結局人間は人間に騙される。方法は色々あっても核心は一つしかない。

一方でいくつか横糸があって、検事を目指す大学生の女の子・吉川氷柱とのふれあいが描かれるのだけど、なかなか進展しない。主人公の青年はその生い立ちのため人に心を閉ざしているので、女の子にもそう簡単には心を開かないのだった。このへん安易な展開にならないのはいいんだけど、なんかほとんど心の動きが描かれないんだよなあ。もっと主人公の心のほころびが描かれればいいと思うんだけど、妙に締めていて読者に想像の自由も与えていない。詐欺師が主催するパーティに潜入するため吉川氷柱にいい服を買ってあげてぶつくさ文句言い合いながらもいい感じになったけど結局またすれちがって服を突っ返されるというシーンはグッとくるんだけど、このシーンで主人公の青年の心情を読者に想像させるのはここまでの展開上厳しいと思う。一方で女の子の方の視点でも時々描いていて、こっちは自分の恋愛感情を自覚しながらも悩み続けるのだけど、途中で吹っ切れてしまうので逆につまらなくなり、そこからまた心をゆさぶろうとする展開に持っていこうとされてもいまさらって感じがした。っていうかこのヒロインあんまり出番がないw

倒すべきラスボスのほかに、中盤で白石というヒゲのダンディが出現する。こいつはベテランで主人公の青年より一枚上の男として最初出てくるのだけど、主人公の成長もあって最大のライバルとして競い合う関係になっていく。さらに主人公の青年と似たような境遇の若きエリート刑事が出てきて、互いのやりかたを認めずに反目しあう。とまあプロットだけ説明していくと面白そうなんだけど、描かれ方がいまいちであんまりワクワクしない。

この作品の芯は、詐欺師に復讐するために自分も詐欺師になるところだ。普通なら詐欺師を捕まえる刑事かなにかになるところだろう。それをあえて詐欺師にした。そこには社会の不条理があるはず。そのあたりの描かれ方が足りないのでふわふわしてるんじゃないかと思う。いわば、合法的な詐欺的行為についての描写が一切ないからなんじゃないだろうか。桂木が裏で何をやっているかなんてそれに比べたらかわいいものだと思う。合法的な詐欺的行為とはなにかって?そりゃ税金公金に関わるもろもろに決まってる。さらに突き詰めると、人を騙す行為、といったら露骨すぎるので言い換えると、人を出し抜く行為とはいったいなんなのか?というところまで行きついて欲しかったのだけど、勧善懲悪の王道路線でまとめられている。

騙されることのどこが悪いのか?というような切り口がちょっとだけ出てくる。ここはもっと掘り下げるべきだったと思う。白石に騙されて付き合っていた女が、自分は別にそれでもよかったと言って主人公の青年をくやしがらせるシーンがとてもよかった。あ、ここを押しすぎると別の作品になっちゃうか。あと、詐欺師の親玉と子分といった上下関係も描かれるのだけど、単に力関係があるということしか描かれておらず、人間の習性みたいなところまでは踏み込んでいない。真鍋昌平「闇金ウシジマくん」みたいに、闇金にだまされる愚鈍な人々といった視点は少ししかない。ついでに同作品のようなエロや暴力もない。あ、暴力は少しあるか。

結局最初の単行本全20巻を完走できたけれど、五巻ぐらいで読むのをやめていたほうが良かったのかもしれない。でも、詐欺のいろんな手口がそこそこ興味を引き、飽きた飽きたと思いながらもなんだかんだで面白く読めた。物語的なものにはそれほど期待せず、詐欺の手口に興味のある人には勧められる。

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