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終物語(中)

西尾維新 (講談社 KODANSHA BOX)

傑作(30点)
2014年2月26日
ひっちぃ

数百年生きた吸血鬼の女と特別な関係を持っていた阿良々木暦だったが、これ以上吸血鬼化するのを防ぐために女とのリンク(関係)を解除したままにしていた。そこへかつて吸血鬼の女と深い関係にあった数百年前の男が蘇って姿をあらわし、女と別れるよう迫るのだった。人気小説シリーズの一篇。

なんか普通の人にもわかるように説明しようとするとひどい文章になるな。

このシリーズはキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードという女吸血鬼が高校生の青年阿良々木暦に助けられたことから始まっていて、シリーズ自体は他にもいろんなメスが出てきてハーレムを形成しているのでこの女吸血鬼もその中のあくまで一人という位置づけにある。こいつは平たく言うとひどい失恋をした経験があって以来長く男を作らずにいた。その昔の男が登場する。SF的な設定を抜くとこんな感じ。

で、その男が女吸血鬼に会おうとするのだけど女吸血鬼は頑なに会おうとしない。今の男は阿良々木暦だと言う。そこで昔の男は今の男と接触し、勝負を挑んでくる。今の男である阿良々木暦は、その勝負を受けるのだった。

でも待ってよ。阿良々木暦には他に彼女がいるじゃん。女吸血鬼にもそれが分かっているはずなのに。というツッコミは封印しないといけないんだろうか。なぜ阿良々木暦は彼女でもない女の昔の男と生死を賭けた戦いをする気になれるのだろうか。昔の男に代わって女の想いを向けられていることに対する責任みたいなものを果たそうとでもいうのだろうか。そのあたりが阿良々木暦らしくて、はっきり言ってしまえば人として間違っているのだけど、シリーズを通じて一貫していて筋が通っている。そうすることで人の想いというものが持ち上げられて、尊さみたいなものが強調されているんじゃないかと思う。

で本来であれば一番の主体である女吸血鬼のほうはといえば、今でいえば着信拒否な状態か。でも、ちゃんと会ってはっきり拒絶を伝えてあげなよと女友達(?)から説得される。なんだこりゃ。女の恋は上書きと言われていて、女というものは一度別れた男のことなどなんとも思わないのが一般的らしいのだけど、状況からしてうまく別れきれていないから引きずっているってことなんだろう。気持ちの揺れる女吸血鬼を描くことでこの巻が成り立っている。なんか突き放して言いたくなったのでこう結論づけてしまうことにする。じゃないとクライマックスが意味不明になっちゃうし。きっと男の願望だろうなあ。

一方、阿良々木暦は本命彼女である戦場ヶ原ひたぎに対してこう質問する。もし自分よりも条件のいい男に出会ったらどうするか?それに対する答えは自分にとって非常に納得のいくもので、自分の想像する彼女のイメージと一致した。たぶん彼女は偽らざる本心を理屈で包んで言ったのだと思う。そしてその答えを聞いた阿良々木暦は、彼女の意図通り良いように解釈した。普通に考えると、ここでの戦場ヶ原ひたぎと阿良々木暦との関係は、女吸血鬼と昔の男との関係についてもほのめかしているんじゃないかと思う。男はすでに離れてしまった女の気持ちを理屈でごまかしてつなぎとめようとするが、女にとってそんなものは意味をなさないのだということ。

という本筋はこのへんにして、今回はスポーツ変態少女こと神原駿河との対話が非常に面白い。なにかと阿良々木暦に誘い掛けて自分に手を出させようとする。気絶しておんぶしてもらって意識を取り戻したのでさあ降りろと言われたらカニばさみするところとか笑った。作者があとがきで書いているように、こういう恋愛関係じゃない男女がじゃれあう会話が多くてとても楽しい。

なんでも知っているチートキャラの臥煙伊豆湖が今回阿良々木暦のとある行動にドン引きするのがすごいウケた。

だんだん伏線が回収され、シリーズ中の謎の解明とか理屈づけが進んでいっている。正直この作品についてはどうでもいいんだけど、きっちり終わってくれるんであればなお良いので期待しておくことにする。忍野扇が結局どんなことをするのか、あとはそれだけが気がかりだ。

(最終更新日: 2017年8月19日 by ひっちぃ)

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