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MDR-1000X

ソニー

まあまあ(10点)
2017年10月1日
ひっちぃ

ポータブルオーディオという市場をウォークマンにより切り開いた日本の電機メーカーソニーによる、ノイズキャンセリング機能のついたBluetooth接続のワイヤレス(無線)ヘッドフォンの最上位モデル。電車や雑踏の中などの騒音が大きい場所でも逆位相を作り出すことで打ち消して比較的静かに音楽を聴けるほか、わずらわしいコードがなく無線でスマホなどと接続することが出来るのが特徴。

全体
色はベージュ

十年以上前にソニーのノイズキャンセリング機能つきウォークマン(+専用付属イヤホン)を使っていたときは、中途半端なノイズキャンセリング機能なんかよりもカナル型のいいイヤホンを使った方がマシという結論に至り、この問題についていったん自分の中では決着がついていた。それから十年以上の時を経て、本製品をヨドバシカメラで試聴したところ、これならイケるんじゃないかと、思い切って買ってみた。約三万六千円のポイント10%還元だった。いまは新モデルの発売を控えて在庫整理のためかさらに値下がりしている。

結論から先に言うと、音楽を楽しみたいのであればこの製品は最高の選択肢だと思う。しかし、音響を楽しみたいのであれば好みが分かれると思う。音楽と音響の違いを分かりやすく言うと、きれいなメロディや豊かなハーモニーなんかが音楽で、うなる重低音とか心地よい管弦楽器の音とかが音響だろうか。本製品の音響について、自分は割と好きだけれど、いわゆるイコライザーで整えられた音だと思うので、ピュアオーディオ的なものが好きな人にはいまいちに感じられると思う。

この製品が登場するまでは、ノイズキャンセリング機能はBoseの独壇場だったらしいのだけど、こいつによってソニーが復権したそうだ。Boseの場合、ノイズキャンセリング機能がいくら強力でも、肝心の音作りがオーディオマニア向けではなく、音楽を楽しめるよう同社独自の色付けがあって、それが嫌いだからと敬遠する人がいた。自分の場合、Boseの音は嫌いじゃないのだけど(なにせスピーカーを3組にアンプを1台持っているぐらいだし)、当時は値段が高く感じたので試聴しようとも思わなかった。

今回自分が購入を決断した大きな理由は、ソニーが店頭デモ用にボタンで操作できる非常に分かりやすい試聴端末を用意していることだった。デモ用の音楽にJ-POPというかJ-ROCKのラルク・アン・シエルの曲などを選べるようにしてあったのが良かった。音数の少ないジャズとかポピュラー(サイモンとガーファンクルなど)とかだと、大抵のオーディオ機器で良く聴こえて正直ほとんど参考にならないので、幅広い周波数の音がまんべんなく入ったゴチャゴチャした曲で試聴したい。あと、録音状態の良いものと悪いものとがそれぞれどのように聴こえるのかも知りたい。たぶんメーカーの心情としては、自分とこの機器が一番よく鳴る曲しか客に聴かせたくないだろうし、客も客でそういうよく鳴る曲を掛けている機器を選んでしまうからだろう。

実際に大通りや電車のホームで使ってみたところ、この製品のノイズキャンセリング機能のすごさがすぐに体感できた。あらためてカナル型のイヤホンの耳栓のような遮音性をかいくぐっていた騒音がいかに大きかったのかと驚かされた。高価なカナル型のほうが心地よい音が聴けるのだけど、騒音が邪魔をして音楽全体があまりよく聴こえない状態になるのに対して、ノイズキャンセリングが効いていると全帯域がしっかり聴こえる。十年以上前だと地下鉄では無駄な戦いをしていたように聞こえたのだけど、今回地下駅で試したらこれなら十分だろうというぐらいに聴けた。遮音性で定評のあるSHUREのカナル型と比べても十二分に優位に立っているように思えた。

MDR-1000Xの音作りは割とフラットだと思う。重低音が響くわけではない。でも高域は多分ちょっと上げていると思う。分類としてはいわゆる「弱ドンシャリ」なのかもしれない。そこまで高性能というほどではないドライバを専用の内蔵アンプでイコライザーを掛けて鳴らすという、ちょうどB&W P7 Wirelessのような音作りと近いと思う。というかBluetoothヘッドフォンはたぶんどこも同じような方針で作っていると思う。

ただ、両者は環境によりだいぶ異なってくる。MDR-1000Xがいい音で聴けるのは騒音のある場所だけで、家で聴くとだいぶ眠たい音に聞こえる。音響的な魅力がまるでない。不思議なことに、騒音下では独特な音響的魅力も感じていたのだけど(言葉で表現するのは難しいけれど心地よいザクザク感があった)、家だとそれがまったく感じられなかった。これに対して、ノイズキャンセリングのないB&W P7 Wirelessは騒音下では全然使い物にならないけれど、家では楽しく聴ける。

いままでただ無線でノイズキャンセリングありの前提で書いてきたけれど、無線にも方式というかプロトコル(?)があって、自分はiPhoneならAACでAndroidならapt Xで聴いている。わずかにapt Xのほうが音がいいらしいのだけど、自分は体感できるほどには感じなかった。しかし、バッテリーが低下してきたときに切り替わるSBCは明らかに音質が下がったのが分かった。ほかにソニー独特のLDACというのがあって、ソニーのウォークマンやスマホにしかいまのところ搭載されていないので試せていない。ソニーが提供するのでAndroid 8で他社も実装すると言われている。ただ、帯域が広がるだけなので、320kbpsが最高のmp3では意味がなく、ロスレスフォーマットの曲データを再生しないと恩恵にあずかれないと思う。そもそもこいつにそこまで高音質な曲データを再生する能力はないんじゃないだろうか。

Bluetoothで接続するとヘッドフォンから曲の再生や停止や曲送りやボリュームの上下が出来る。イヤーカップの中心を二回タップすると再生と停止、上下になぞるとボリュームの上下、左右になぞると曲送りが出来る。物理ボタンのP7 Wirelessのほうが分かりやすいけれど、どこにボタンがあるのか手でさぐる必要がないのですぐ操作できるし、反応は悪くないので可動部が少ないのはいいことだと思う。ただ、MDR-1000Xは左側に物理ボタンが三つもついているので意味がない気がする。左側の物理ボタンはそれぞれ電源とノイズキャンセリングとアンビエントモードのオンオフとなっている。ペアリングは電源長押し。アンビエントモードはノイズキャンセリングのためのマイクを使って逆に外の音を聞くためのモードで、オンにすると周りの音が聞こえるようになる。そうそう、右のイヤーカップを手で覆うと一時的に音楽のボリュームが下がって外の音が聞こえるようになる。急に誰かと会話しなければならない場合なんかに便利。

MDR-1000Xは有線でも聴けるのだけど、電源オフにして外部のアンプだけで鳴らすと、ものすごく鈍重な音しか出てこなかった。二千円台のヘッドフォンにも劣るぐらいの音だと思う。勝手な憶測をすると、電源オンの時はたぶん内蔵のデジタルアンプでバキバキに鳴らしているからだと思う。アナログアンプじゃうまく鳴らないぐらいに固いというか能率の悪いドライバを使っているからなんじゃないだろうか。

デザインが素晴らしい。未来のヘッドフォンって感じがする。ヘッドバンドの伸縮できる部分が非常に洗練されたメカニック具合で、カチカチという音とともに信頼性が感じられる。ヘッドバンドの内側のプラスチックやイヤーパッドなんかはクリーム色のモデルを買ったせいか旅客機を思わせる高級感が漂っている。ただし、このプラスチックは温度変化に弱いのか理由は不明だが半年で割れたというレビューがAmazonにあった。手で触った感じ、自分のは丈夫そうに見えるのだけど、割れても不思議ではない感じは一応する。

ハードケース(閉)
付属のハードケース

付属のハードケースの出来が素晴らしい。イヤーカップを横に90度回転させて折りたたんで格納できるようになっているので、省スペースでカバンに入れやすい。ただ、ヘッドフォンを取り出したあとの空のケースがかさばる。B&W P7のケースは折りたたんでペッタンコにできた。ただしP7自体はあまり折りたためない。

ハードケース(格納後)
ハードケースに格納したところ

で、いま現在、自分はこいつをほとんど使っていない。その理由は、いまの自分にとって音楽は音響的な魅力がメインだから、気持ちのいい音を気持ちよく鳴らしてほしい。でも身軽に出かけたいときは、iPhoneとこいつだけ持っていけば楽でいい。いい音の出る高級イヤホンはiPhoneに直挿ししても真価を発揮できないのと比べると、別途デジタルオーディオプレイヤーを必要としないBluetoothヘッドフォンは手軽にそこそこの高音質が楽しめる。

ボタン類
電源ボタンなど

ちなみにいま自分の中で使用率が一番高いのはWestone UM pro 50で、最低限の遮音性がありつつ濃密な音が気持ちいいのでもっぱらこれになってしまう(もう汗をかく季節じゃなくなったのでJH Angieになるかも)。バラードとか静かな曲を移動中に聴きたいときはMDR-1000Xがいいけれど、そうじゃなければ出番がないのだった。自分は賑やかな曲が好きなのでしょうがないのだけど、世の中にはバラードのほうが好きという人の方が多いみたいなので、いい選択肢だと思う。ただ、ヘッドフォンに三万も払える人は多分圧倒的に少ないんだろうなあ。

(最終更新日: 2017年10月1日 by ひっちぃ)

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