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T8iE mkII

beyerdynamic, Astell&Kern (iriver)

まあまあ(10点)
2018年7月13日
ひっちぃ

世界で初めてダイナミック型ヘッドホンを開発したドイツの音響機器メーカーbeyerdynamicに対して、韓国のオーディオブランドAstell&Kern (iriver)が企画を持ち込んで共同開発した高級ダイナミック型イヤホン。小さくて美しいボディに1,000テスラもの強力な磁力を持つダイナミック型ドライバーを搭載しているのが特徴。

全体
小さい金属製のボディ

beyerdynamicはその後自社だけでxelentoという同じようなモデルを開発してこの世界でヒットしたので、同社の高級ヘッドホンT1を持っていて気に入っている自分としてはずっと気になっていたのだけど、なかなか値段が下がらないので値下がりを待っていたら、こっちのAstell&KernとのコラボモデルT8iE mkIIのほうが先に値崩れしてきたので思わず衝動買いしてしまった。リファービッシュモデル(再調整品)が57,800円だった。ちなみに初代T8iEはどうも初期不良がひどかったみたいで、そのせいもあってかシリーズを通してあまり売れなかったらしい。

金属製で丸みをおびたおにぎり型(?)のフォルムがとても美しい。アクセサリーを思わせるほど素晴らしいと評する人がいるのもうなずける。ただ、本家のxelentoがシルバーで本当にアクセサリーっぽいのと比べると、この元祖T8iE mkIIのほうはちょっと黒みがかっている。渋い色合いなのはいいけれど、やっぱりシルバーのほうが美しいと思う。

新宿西口のヨドバシカメラで本家xelentoのほうを試聴したことがあったのだけど、Fiio X5 2ndという五万クラスぐらいのデジタルオーディオプレイヤーで試聴したせいか、特に感動のない音だったので買うのはやめようと思っていた。やっぱり自分にはダイナミック型ではなくマルチBA型の音のほうが合っているんだろうと確信が持てた。

ただ、あくまでちょっと試聴しただけなので、所有してじっくり聴いているうちに感じ方が違ってくるのではないかとの思いも消えなかった。でもそんな理由で十万以上する製品を買うのはさすがに愚かしいので、大幅に値崩れしたら拾おうというぐらいにしか思っていなかった。最終的にバランスケーブルがついていたことが決断の理由となった(?)。

届いて開けてみたら片方の耳垢ガード用のネットが外れていた状態だったので、写真をとって対応をお願いしたところ、新品との交換になった。新品のamazonでの最終価格が八万五千円ぐらいであることを考えると割と得をしたのかもしれない。

肝心の音は、エッジ(輪郭)がとても研ぎ澄まされていて、鋭くて透明感のある音を出す反面、中域が凹んでいて弱く、ちょっと聴き疲れする感じの音だった。もともとダイナミック型といえば一体感のある豊かな中低域が特徴だったと思っていたのだけど、最近の高級ダイナミック型イヤホンは高解像度押し(特に高域)の傾向にあるみたいで、原理から想像するイメージとはあべこべになってしまっている。同じダイナミック型のIE800で感じたような音の太さはこのT8iE mkIIではまったく感じなかった。IE800を聴いていた当時に愛用していたJH Audio Angieに対して、いま愛用しているJH Audio RoxanneやWestone W60は中低域も割と出ているので、比較優位を感じにくかったのかもしれない。

しばらくpioneer XDP-30Rにバランスケーブルをつけて聴いていた。ケーブルは付属のものではなく中国メーカー製の純銀ケーブルにした。純銀ケーブルは高域が強めになるのに加えて、XDP-30Rが軽快な音を出す小型プレイヤーなので、ますます先の傾向が強まった。

で、最近になって付属のアンバランスケーブルでFiio X7 mkIIやONKYOのGRANBEATなんかで聴いてみているのだけど、割と普通の音が出ていると思った。バランス駆動と銀線が聴き疲れするほど鋭い高域の元だったことに気づいた。GRAMBEATのアンバランスは引き締まってしっとりした良い音が出るのだけど、このT8iE mkIIだと少しシャリついた感じがしてちょっと力不足な感じがした。X7 mkIIとアンプモジュールAM5で聴いたら音がどっしりと落ち着いた。AM5は元々ヘッドホン駆動用なので、ヘッドホンと同じ磁力のドライバーを動かすのにはこのぐらいあったほうがいいんじゃないかと思う。

イヤーピースは独自の通称「ベイダーチップ」が入っている。ジョージ・ルーカスの映画「スターウォーズ」シリーズに出てくる悪役ダースベイダーのヘルメットに形が似ているからみんなそう呼んでいる。自分は旧ドイツ軍のヘルメットに似てるなあと思った。他のイヤーチップと違って耳に詰めるのではなくかぶせるようにつけるので、人によってはあまりフィットしないようだけど、ちょうどいいサイズを選ぶと耳に吸い付くようにフィットするらしい。自分も吸い付くとまでは言わないけれど少し大きめのサイズで確かにぴったりはまった。コードを耳に掛けるいわゆるShure掛けをしなくてもつけられる。

自分にとってこのT8iE mkIIは一週間に一回か二回ぐらい聴くローテーションに入っていたのだけど、最近になってShureのKSE1200というコンデンサー型イヤホンを買ってしまったので、ローテーション落ちの危機を迎えている。T8iE mkIIは自分の手持ちの中でもっとも小さくて装着感がいいので、特に夏場は汗をかいて耳からずり落ちやすくてRoxanne IIの出番が減るのだけど、Westone W60のほうをなんだかんだで選んでしまいがちになっている。付属のバランスケーブルはW60に装着しているので半分T8iEのおかげでもあるのだけど(笑)。W60が味付け系なのに対してT8iEは素材のまま系なので気分次第で使い分ける余地がある。

ただ、いまだとJVC HA-FD01や02という安くていいモデルがあるので、この系統の高解像度なダイナミック型で仮に後継機を出してもよほど魅力がないと厳しいと思う。FD01を実際にアキバヨドバシで試聴したところ、このT8iE mkIIで感じたキレのある高域が大体似たような感じだったので驚いた。FD01の低位モデルFD02はアルミの音導管オンリーというだけで三万以下で手に入る。まあ、キレのある高域以外の部分での基本性能はT8iE mkIIに分があると思うし、インフレが続いているダイナミック型の高級イヤホンのなかでも一応現役という扱いをネット上の掲示板では受けている。Dita Audioの双子FealtyとFidelityなんかに話題では押され気味だけど。

本家xelentoとの音の違いは、xelentoのほうが明らかに音のバランスがいいらしい。自分は一応両方聴いているけど短時間に交互に聴き比べたわけではないのでよく分からなかった。視聴したときはxelentoにはクセらしいクセはまったく感じられなかった。だからすぐには魅力を感じられなかったのかもしれない。まあもっとクセがないKSE1200なんかは試聴してすぐに魅力にやられたのだけど。

比較的どうでもいいことだけど、T8iE mkIIをiPhoneにつないだらこれはこれでいい音がした。たぶんiPhoneとか安いプレイヤーを基準に音をチューニングしていると思う。じゃあなんでX5 2ndでパッとしなかったのか分からないけれど、ヨドバシで試聴するとなぜかいまいちに感じてしまうせいかもしれない。いや、X5 2ndも一応五万クラスのそこそこのプレイヤーだし、音に少しクセがあるので相性が良くなかったのかも。

ネットでは、ロックを聴くのに向いていると書いている人がちらほらいた。付属ケーブルで聴くと特にアンバランスでは割と根っこの部分で武骨な音だと思う。勝手なイメージだけどドイツ製って感じ。

ダイナミック型のハイエンド機を作っているDitaやCampfire Audioは小さなメーカーだし、ドイツのもう一方の雄であるsennheiserはIE800Sでマニアにそっぽを向かれたので(大幅に値上げしたのにそれほど音質が向上しなかったので)、大手メーカー製で定評のあるこのxelentoとT8iE mk2はダイナミック型の音が好きで大手のサポートを受けたい人にはいい選択肢だと思う。ただ、従来のダイナミック型の特徴であった暖かい音だとか肉厚な音を求めている人は、一度試聴してからのほうがいいと思う。

[参考]
https://www.iriver.jp/products/
product_137.php

(最終更新日: 2018年9月24日 by ひっちぃ)

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