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ぼくたちは勉強ができない 10巻まで

筒井大志 (集英社 ジャンプコミックス)

最高(50点)
2019年2月11日
ひっちぃ

貧しい家庭に育った高校三年生の唯我成幸は、学費全額免除の特待生になるべく日々勉学にいそしんでいたが、同じ学年にいる二人の才女に阻まれてしまう。しかしあることを条件に推薦が認められる。その二人の才女はそれぞれ数学と国語の天才だったが、互いに行きたい進路が逆なのでなんとかしてほしいと頼まれるのだった。少年マンガ。

週刊少年ジャンプに連載されていてアニメ化も決まっているみたいで、手堅く読めるラブコメ作品っぽくて絵も好みだったので手に取ってみた。とても面白かった。

小柄で無表情なメガネ女子の緒方理珠は数学の天才で難しい問題をスラスラ解いてしまうのだけど、彼女はカードゲームやボードゲームなどのアナログゲームの対戦が大好きで、それなのに勝負の駆け引きが苦手でいつもボロ負けしてしまうので大学で心理学を学びたいと思っていた。しかし彼女は国語が絶望的に出来ないのだった。うどん屋の娘で胸が大きく、引っ込み思案で恥ずかしがりやだけど思ったことが割と表に出やすい性格をしている。

色白な大和撫子の古橋文乃は一度見たものならなんでも覚えられる上に異常な文才を持っているが、亡くなった母親の姿を夜空に求めているうちに天文学を学びたいと思うようになる。しかし彼女は数学が苦手なのだった。背伸びしたがりで成幸に対してもマウントを取ろうとするが素直になれない。混乱すると言葉づかいが乱れるところがかわいい。ヒロインの中ではツッコミ役のポジション。

この二人の才女に対して努力型の主人公(?)唯我成幸は最初二人のことをそれぞれ得意な分野に進めばいいのにとひがみまじりに思っていたのだけど、二人の切実な思いに当てられて考え直し、真剣に教育係をつとめようとする。しかしこの二人、それぞれ性格に難はあるもののかなりの美少女で、ふとしたことで意識させられてドキドキしてしまうのだった。

メインヒロインは二人かと思いきや、このあと三人目の武元うるかが入ってくる。こいつは水泳で国体優勝を狙っているスポーツ少女なのだけど、スポーツ推薦のために英語を勉強する必要があり、成幸は彼女のことも面倒を見なければならなくなる。前述の二人と違ってこいつは中学の頃からなんだかんだで成幸と仲が良く、というかうるかにとって成幸は一番自分のことを理解してくれている人だと思っていて恋心さえ抱いている。しかし成幸のほうは距離が近すぎてかうるかのことをそれほど意識していない。色黒で元気な女の子。超好み。

というわけでこの三人が多分メインヒロインなのだけど、なんと読者投票の第一位は当初成幸に対する壁として登場する冷徹な女教師の桐須真冬が取るのだった。こいつは理珠と文乃に進路を強要しようとしたいわば悪役の立場にいるのだけど、その理由がかつての自分の後悔によるところがちょっとジンとくるほか、大人の女なのに誰よりもドジっ子の上に見栄っ張りなかわいい女なのであった。読者人気ナンバーワンになる理由がとてもよく分かった。学校ではぴしっとスーツを着た大人の女なのに、家ではジャージを着て汚部屋で暮らしている。

あとメイド喫茶でバイトしながら医学部を目指している小柄な先輩の小美浪あすみに成幸はいつもやり込まれながらも勝手にこいつが自滅して弱みを見せられたり(でもフラグは立たない)、貧乏子沢山の家庭の中で一番上の妹である水希がブラコンで好かれていたりと全方面でハーレムものの主人公しているけれど、勉強の教え方には自信があるものの自分には自信がないのでただただ翻弄されるのだった。

出てくる女の子はみんなそれぞれかわいくて個性的で、自分は特にスポーツ少女のうるかが一番好きではあるけれど、割とまんべんなくみんな好きになった。

コメディとしては読んでいて何度も声に出して笑った。みんなワタワタした感じがよかった。勘違いが連鎖していく感じがとにかく楽しい。みんな必死で取り繕って、その緊張が爆発したり解けたりして笑いが起きる感じ。たまにシリアスになるところもよかった。

サービスシーン(露出が多いラッキースケベ系な)もあるけれど、割合としてはそんなに多くないし、全然下品じゃない。でもしっかり肉感的で魅力的な絵で素晴らしい。無意味な入浴シーンとかも一応あるけれど、同じ雑誌に掲載されていた矢吹健太朗・長谷見沙貴「To Loveる」や河下水希「いちご100%」なんかと違ってなぜかそんなにあざとさを感じない。絵のタッチが低年齢層向けの学習雑誌に載っているようなマンガをそのまま少年向けに進化させたような感じがする。みんな健康的。絵が洗練されていてすっきりしていてとても読みやすかった。

ちょっとケチをつけると、近刊はあまり話が進まずストーリーがちょっとマンネリ化しているような気がする。

ブラコンな妹の出番が話の外の1コマにしかない。このキャラたぶん要らないと思うし、作者もそう思っているから通常話で描かないんだと思うんだけど、じゃあなぜそもそも登場させたんだろう。読者の反応を見ているのか、それとも今後のストーリーで重要な役割でも担うんだろうか。

受験勉強のテクニックがときどき語られるけれど、ほどよいバランスで話を補強するぐらい。たぶん読者はそこまで受験のテクニックとか求めていないだろうからこれぐらいがいいんだと思う。

男キャラが主人公のほかには脇役しかいない。本当に端役ばかりで魅力的なキャラがいない。そういう割り切りなんだと思うけど、女性読者をもっと獲得するチャンスを放棄していると思う。等身大的な女キャラもいないし。

得手不得手と本当にやりたいことといったテーマが出てくるのだけど、そこまで大きく扱われておらず、あくまで話の土台でしかない感じ。もっと深掘りしても良かったテーマだと思う。これも含めて、この作品にはあんまり大きなテーマや展開がなく、小さくまとまっている。この先の恋の行方に関してもそんなに深刻じゃない。気楽に読めるし、それでいてある程度登場人物の真剣さに感情移入できるし、本当に絶妙なバランスなのかもしれない。

ちょっと自分語りすると、自分は数学が得意でコンピュータが大好きだったのでそっち方面に進んだんだけど、就職して五年以上経ってからやっぱり自分は文章を読んだり書いたりするほうが好きだなと思った。でもほかの道に進んでいたら逆にコンピュータやりたかったとか言っていたかも。高校の頃に自分の本当にやりたいことが分かっているかどうかなんてわからないし、そもそも「本当にやりたいこと」なんてものはないと思う。人は何か一つのことを続けていればそれがやりたいことになってくるし、逆に何かに反発することが原動力になることだってある。

受験もの(といってもこの作品と三田紀房「ドラゴン桜」ぐらいなんだけど)を読んでいると、もっとちゃんと勉強していたらよかったと思ってしまう。自分はあの頃も結構勉強していたと思うんだけど、あんまり勉強法とかよく分かっていなかったと思う。ちなみにスポーツものを読むとそれはそれでもっと運動しておけばよかったと思ってしまう。いまから後悔しても遅いんだけど、いい作品に出会ったってことなんだと思う。

あんまり露骨なハーレムものは引いてしまうという人にはぴったりの、とても完成度の高いソフトなハーレムもの作品だと思うので広く勧めたい。特にいままでラブコメを敬遠していた人なんかには最高の入門書だと思う。ただし、この手のものに慣れ親しんだ人にはかなり物足りなく感じるかも。

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