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まちカドまぞく 5巻まで

伊藤いづも (芳文社 まんがタイムKRコミックス)

まあまあ(10点)
2020年1月19日
ひっちぃ

東京郊外のボロアパートに母と妹と三人で暮らしていた高校生女子の吉田優子だったが、突如先祖返りして悪魔のような巻角が頭から生えてくる。闇の一族「まぞく」として覚醒したのだと母親から告げられ、町内に住む光の一族「魔法少女」と戦わなくてはならなくなるのだった。萌え4コマギャグマンガ。

アニメ化されたのを見て、せいいっぱい「まぞく」ぶる主人公に対して、やたらテンションの低い魔法少女が淡々と受け流してヘンな日常が続いていくのがなんともいえずクセになってしまい、こりゃ原作も見ておこうと思って手を出してみた。面白かった。

優子は活動名をつけろと言われ、三択を迫られて「シャドウミストレス優子」を名乗ることになるが、あまりにダメダメなので略して「シャミ子」という愛称が定着する。ほかにも、思い通りに変形させることができるはずの武器が彼女の偏った想像力によって毎回突飛なものになったり、悪の女幹部にありがちな露出度の高いコスチュームを嫌がり、どうしても必要なときだけ着ることから「危機管理フォーム」と呼んでいたりするところとか、普通の感覚とはちょっとずれたところがなんだかほほえましい。ご先祖ことリリスが自分の故郷であるメソポタミアのことを「メソポタでは…」と略して言うところなど、語感が色々と愉快だった。

普通のいい人がいきなり悪役をやらなければならなくなるタイプの作品はちょこちょこあるけれど、この作品の一番の特徴は正義側もやる気がないというかあさっての方向を向いているところだと思う。「魔法少女」の千代田桃は一見ピンクの髪をした普通のヒロインっぽいのだけど、シャミ子の襲撃(?)をはいはいとばかりに軽くいなしたあとで、力のないシャミ子に筋トレをさせようとする。彼女は一人暮らしをしているのだけど、偏った食生活をしていてだらしない生活を送っている。一方のシャミ子は長年の貧乏暮らしで生活力が磨かれているので、よくわからないうちに桃の世話を焼くようになる。いわばWボケの危うい構造なのだけど、シャミ子はなんだかんだで自分の役割を守ろうとしているし、桃もそんなシャミ子を助けようとするのでそんなにグダグダにはならない。

このあたりまでが導入部みたいな感じなのだけど、そのうちシャミ子はご先祖のリリスから他人の夢にもぐって操る能力を伝授され、桃の夢の中の世界に入るうちに彼女の心の中の弱みを知ってしまう。なぜ彼女が無気力になってしまったのか。彼女がかつて姉のように慕っていた先輩魔法少女の桜の失踪が絡んでいることがわかる。

と萌え4コマにしてはちょっとシリアスなストーリーが軸になり、ギャグに彩られながら話が進んでいく。桃の危機を受けてもう一人の魔法少女みかんが駆けつけてきたり、ひっそりと街に溶け込んで飲食店を経営している闇の一族の二人組が見つかったりと、登場人物を増やしながらどんどん話が広がっていく。

基本的にはゆるい作品なのだけど、わからないなりにがんばっているシャミ子の一生懸命な姿勢と、そんな真剣なシャミ子から励まされて(?)エネルギーをもらっている桃の、二人のほっこりした友情が妙にじんわりくる。ライバル関係ともちょっと違う。桃は闇落ちしてもいいと言っているわけだし、なんだかんだでシャミ子は桃の生きる道を示してくれる存在なのかも。そんな不思議な縁が出来てきても、シャミ子はちゃんと自分の役割を思い出して桃のことを「きさま!」と呼ぶところがかわいい。妹の良子にいいところを見せようとしたり、色々なことに責任を感じたりする。

マッドサイエンティストならぬマッドオカルティスト(?)の小倉さんみたいなめちゃくちゃな人はあんまり好きになれなかったけれど、真剣なシャミ子などをあわてさせるような人がいないと面白くないだろうからしょうがないのかなと思う。でもこいつ闇でも光でもないのに色々できすぎ。いや実はみたいな伏線っぽいのがあった気がする。興味ないので流したけど。

助っ人魔法少女のみかんは自己防衛のために周囲に面白時空が発生してしまうという露骨なギャグマンガ体質で最初いまいちな感じだったけれど、シャミ子に次いで根が真面目なのでなにげにこの作品を陰で支えていると思う。

Wikipediaを見ると作者は3巻で完結させる予定だったらしいけれど、アニメ化されることになったので続かせたとのこと。3巻の桜の足跡が見つかったところで確かに話が完結しそうな形跡があった。その後、新たな展開が続くことになるのだけど、本筋がちょっと分かりづらくなっていると思う。結局桜は何をした結果どうなったのかがまだ分かっていない。

キャラがたまにパッと見区別がつかないことがあった。特に妹ちゃんとかみかんあたりにそんなに特徴がないので。

舞台となっている架空の町の名前が「せいいき桜ケ丘」なのがウケた。聖蹟桜ヶ丘じゃん。「多魔」ならぬ多摩地方に住んでいる人にしか分からないな。このあたりは大学の密集地帯なので地方に住んでいて大学進学で上京を考えたことのある人も知っているかもしれない。ローカルネタで笑うことが出来る幸運を噛みしめた(おおげさか)。「多魔川」も出てくるので神奈川県の人にもなじみがありそう。

アニメが良かった。シャミ子と桃の掛け合い、特に鬼頭明里の無気力だったりたまに慌てたりする声がかわいかった。エンディングテーマのイントロのズンドコくるベースがとても印象に残った。

この作品は萌え系だと思うけど、頭のゆるい少女がゆるくボケてゆるく突っ込まれるような甘ったるい作品ではなくて、ちゃんとビシッとツッコミが入るのでわりと広く楽しめる作品だと思う。そこまで面白いわけではないけれど(?)良作だと思う。

(最終更新日: 2020年1月20日 by ひっちぃ)

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