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荒ぶる季節の乙女どもよ。

原作:岡田麿里 漫画:絵本奈央 (講談社 講談社コミックス マガジン)

傑作(30点)
2020年1月26日
ひっちぃ

文芸部に所属している高校生女子の小野寺和紗は、部活動としてみんなでエロ小説を輪読していたが、自分たちが実際に性に目覚めるのはまだまだ先だと思っていた。しかし幼馴染で隣近所の坊主だった泉はいつのまにか格好よくなって女子から人気になり、周りでも男女を意識した人たちの姿が目につくようになってきた。和紗の内と外で何かが徐々に変わっていく。少年マンガ。

2019年夏にアニメ化されたのを見て、毎週楽しみなぐらいハマったので原作も手に取ってみた。とても面白かったけどアニメで大体カバーされていたので新たな発見はあまりなかった。

最初の紹介で和紗だけに絞って書いちゃったけど、実際には文芸部の五人それぞれに物語がある。

和紗はおかっぱ頭の女の子で、小さい頃からの習慣で隣近所の泉の家に気軽にお使いに行ったついでに上がりこんでなんとなく仲良くしていたが、それが高校生のいまとなっては男女の仲を疑いかねないものとなっていることを意識するようになりつつ、泉だけは普通の男子とは違うのだと思っていた。しかし和紗は偶然彼の自慰行為を目撃してしまい(!)、彼もまた普通の男の子だということに気づいてしまう。

菅原新菜は色白の美少女で、小さい頃に劇団に所属していて演出家の三枝から女の子として見られていたことから、性についてどこか達観していた。しかし実際に自分が成長し、男の子と接してみると、自分の中で何かがたかぶっていることに気づくのだった。

曾根崎り香は文芸部の部長として率先してエロ小説を読みながらも、それはあくまで芸術作品としてであり、実際の営みは下品下劣だと思っていた。しかしクラスで急に自分に好意をぶつけてくる男子があらわれ、戸惑いつつも受け入れるようになり、考え方が180度変わってしまう。しかしあまりに突然の手のひら返しのため周囲にバレないよう隠そうとする。

須藤百々子は小柄な女の子で、まだまだ自分は子供だと思っていたが、急に男の子が接近してくる。しかしその男は何かと自分勝手に振る舞い、いつのまにか彼女のように扱われていることに気づき、男の子ってそういうものなのかと悩まされる。

本郷ひと葉は作家志望で出版社に持ち込みをして編集者までついているが、女子高生の性みたいな作品が売れると言われて書いたもののリアリティがないと言われる。そこでネットのチャットでよく知らない人とエロい会話をして身につけようとするが、その相手はまさかの人だった。

みんな好きになったけど、なかでも色白美少女の菅原新菜が一番よかった。美少女キャラというところがポイントのように思えるかもしれないけれど、彼女が一番自分を奮い立たせてがんばっていると思う。結果的に横恋慕になっているのだけど余裕はなく、周囲からも自分の気持ちからも追い詰められていく。それでも自分の道を進もうとする決意がとてもかっこよかった。

次が作家志望の本郷ひと葉だろうか。自分の作品のためということなので動機は不純なんだけど、性的な行為がどんなものか知りたくて相手に迫りつづけ、相手が相手なので拒否されつづけられる。こいつは完全に痴女だと思うけれど(!)、自分に性的な魅力がないかもしれないと悩んでいて、すごく一生懸命なところが伝わってくる。ほどよくブスかわいい絶妙な絵だと思う。

百合要素が突然出てきたけど別になくてもいいぐらい少なかった。百合が大好物な自分でもろくに反応できなかった。ここで百合を出してしまうのは、身勝手な男の子という存在に別の意味を与えてしまいそうで危険だと思う。

ストーリーの要所要所で学校が絡んでくるのだけど、いまいち説得力がなくてげんなりしてしまう。文芸部の活動がちょっと変でもこの程度で廃部にしてしまおうとするのが納得できなかった。何か別の大きな理由があればよかったのにと思った。それに学校側の権力者を意図的にちょっとコミカルに描いているのも意味が分からなかった。一方で、終盤の事件で急に矛を収めるところは、いかにも公務員って感じで妙にリアリティがあった。

最後の学校での話は、露骨に風呂敷をたたみにいっていて非常に雑に感じた。仲良しこよしで終わらせたかったからなんじゃないだろうか。自分はやっぱりなにか違うと思う。新菜が横恋慕している以上、和紗とは絶対に仲良くできないはず。百々子は新菜と仲良くなれる可能性はあるけれどやっぱり無理めだと思う。それぞれに傷を抱えたまま、ほろ苦く終わって欲しかった。

Wikipediaを見てみたら原作者の岡田麿里はひきこもり経験があるみたいで、周囲に対する繊細で鋭い観察眼がこのような作品を生んだのかと、非常にありきたりな感想を持った。この人はアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の原作者の一人らしい。自分はあの作品が嫌いだけど、この作品はとても好きになれた。

絵は志村貴子のタッチにどこか似ていると思っていま見比べてみたらそこまでは似ていなかった。線がやわらかいところに共通点がある。もうちょっと線がしっかりしていたほうが自分は好きなのだけど、広い層に受けそうなとても素晴らしい絵だと思う。かわいくて健全なタッチなのに色気がある。

そういえば志村貴子の「娘の家出」を既に読んでいるのだけど、ちょっと難しすぎてもう一度読んでみないとよく分からないのでレビューを書くのを保留しているのだった。

アニメで作家志望の本郷ひと葉の役を黒沢ともよという人がやっていて、最近一番注目しているのだけど、この作品では情熱を内に秘めた地味な女子を好演していて、声にとても感情の成分(?)が載っていてよかった。ゲームではファイアーエムブレム風花雪月の幼い女神ソティスがとてもよかった(ちょっとアラも耳についたけど)。他にスマホゲーで黒猫プロジェクトのアリエッタやドールズフロントラインのP7の声をやってるのを聞いた。P7の出撃時のセリフがすごいポジティブで、毎回聴いているうちにクセになってずっとこいつをリーダーにしていた。

この作品には実際の性描写はほとんどない。一部の登場人物がちょっと暴走したときにコメディタッチのごく軽い露出があったり寸止めがあったりする程度で、あくまで性は恋愛とは切り離せない最小限にとどめられている。

自分が高校生の頃は、初めて同級生の女の子の体に魅力を感じるようになったし、エロ本(の時代だったから)にはとても惹かれたけれど、好きな相手に自分の裸を見せるのは恥ずかくて無理だと思っていた。いま改めて昔を思い出すとあの頃の女の子たちと性行為をしたいと思うけれど(!)、当時はそんなことまったく思っていなかった。

泉くんが恋愛と性欲は別だと言っているシーンがあるのだけど、正直自分には色んな意味であまりピンとこなかった。確かに恋愛とエロDVDとは直接結びつかないというのは非常によく分かるのだけど、色白美少女の菅原新菜に対しては性欲を覚えると言ってしまう感覚がまず理解できないし、新菜への欲情を和紗に対して言ってしまうのがすごいと思う。こいつの言動は男の子の等身大というよりも、女の子が突き付けられたらどう受け止めるべきかという問題を具象化しているのだと思う。

自分はそんな戸惑う女の子たちの姿を見て(言い方は悪いけれど)楽しんだのだと思う。この作品は少年マンガ誌に掲載されていたし、かわいい女の子たちの姿が楽しめるという点で言えば少年マンガだけど、少年の視点がほとんどないという点で言えばこの作品は少女マンガなのだと思う。でも女性読者一般が自分たちの問題だと思って読めたのかどうかはよく分からない。

というわけで少なくとも男性目線で言えば非常に面白い娯楽作品だと思うのでぜひ読んでみてほしい。女性目線で楽しめるかどうかはよくわからない。

(最終更新日: 2020年1月26日 by ひっちぃ)

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