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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 第12~14巻

渡航 (小学館 ガガガ文庫)

まあまあ(10点)
2020年2月25日
ひっちぃ

色々とこじらせた高校生男子・比企谷八幡は、学内の問題を解決する奉仕部が顧問の平塚先生の退任により解散することになったため、なにかと因縁のあった優等生の雪ノ下雪乃と最後の勝負として保護者たちから反対にあったプロム(卒業生送迎ダンスパーティ)の開催を掛けてそれぞれ別々の企画を立てる。青春小説。

大好きなシリーズだけど最終章というのはきっと難しいんだろうなあと思って出来るだけ期待を下げて読んでみたらなんとかそれなりの読後感で読み終えることが出来た。でもやっぱりちょっと残念な感じはした。

八幡の物語はどう受け止めればいいのだろう。彼が求めていた「本物」はそう簡単には手に入るものではないので、手に入っておめでとうにはならないと思っていたけれど、この結末でなにかしらの区切りになったんだろうか。

八幡の最大の問題はやはり自尊心の無さだと思う。本当はすごいやつなのに驚くほど自己評価が低い。だからこそ、へろっと偽の告白までして振られてみせたり、自分が非難されることで他の人たちを団結させたりして、様々な問題を見事に解決してみせてきた。自分のことなんてどうでもいいとばかりに。

だからこのシリーズの結末は、彼が自傷的な行為をやめて自分に自信を持って歩みだそうとするところが描かれなければいけなかった(一読者の勝手な意見です)。しかしどうだろう。結局雪ノ下雪乃を補佐する形で終わってしまった。

うーん、まあそうなるよねえ。八幡ってそう簡単には変わらないよね。これはこれですごく納得できる。特に雪ノ下雪乃との最終的な関係については非常にしっくりきた。既存の尺度に当てはめると、これほどみっともない恋愛小説はないと思う。でも彼はがんばったし、そもそも男女の負担割合から考えると本来はこのぐらいがイーブンだと思う。

一方で由比ヶ浜結衣との三角関係はなんかしっくりこなかった。特に彼女視点の独白が控えめに言ってウザかった。もとから八幡のことが好きだったということにそもそも納得できていない。彼女の性格からして、物事をはっきりと言えるような、自分にないものを持っている人を好きになるものだと思うけれど、八幡の性格はひねくれているのでそこまであこがれの対象になるものでもないと思う。

他方で雪ノ下雪乃が八幡を好きになる気持ちはちょっと分かる。彼女はあれだけ攻撃的で冷たい性格をしているので人と仲良くなりにくいのだけど、元から自己評価の低い八幡はそんなことを気にしないので障害にならない。なんだかんだで自分と一緒に行動を続ける八幡に好意を持つようになるのはよくわかる。でもそれだと八幡がへこへこしている間しか成り立たない。だから八幡が自尊心を持つようになるのと同時に彼女も人を立てるようなところを身につけていくのがいいんじゃないだろうか。それが一応最後にあの形となって現れたのはとても良かったけれど、逆に言うともっとなにかあってほしかった。まだまだ二人の関係はこれからですよってことなんだろうか。物語は終わっちゃったけど。

由比ヶ浜結衣の物語には結局どういう結末がついたんだろうか。彼女の問題は不和を起こさないように自分を押さえてしまうことだったので、この最終章でようやく彼女は恐れずに自分の意志を主張することが出来たことになるのだけど、なんか最終的にうやむやになってしまったように思った。やはり八幡に告白して雪乃から奪おうとしなきゃダメだと思う。最後にとってつけたようにその件について相談を持ち掛けているのは違うと思う。コミカルでちょっとだけ面白かったけれど。

第三のヒロイン(?)である平塚先生の想いも結局自分にはよく分からなかった。節目節目であらわれて八幡を謎のドライブに連れて行ってフワッとした話をするだけみたいな。

八幡の妹の小町が自分には終始不気味な存在だったのだけど、最後にちょっとだけ分かった気がした。こいつの口癖の「小町的にポイント高い」というのは、「兄想いの妹」を演じていますよという彼女なりの照れ隠し(?)なのだろうと思うけれど、正直ややこしくて感覚的に理解できなくてこいつのことを好きになれなかった。

同じ意味で一色いろはも難しいキャラだったけれど、こっちは割と好きになれた。どうしてだろう。行動や言動が面白いからだろうか。最後に小町と仲良く喧嘩するシーンがとても良かった。八幡が告白してないのに毎度振られるのが相変わらずでウケた。

ヒロインの雪ノ下雪乃とは対照的な存在として出てくる圧倒的な陽キャである姉の雪ノ下陽乃について、結局ほとんど語られずに終わってしまった。こいつはやたらと八幡に執着していて、最終巻でも最後に八幡を焚きつけたことから物語が佳境へと進んでいくことになるのだけど、なぜそんな行動を取るのか?

これはもう勝手な想像だけど、陽乃もかつては雪乃と同じように生きづらさを感じていたから仕方なく努力していまの超絶陽キャになったので、いつまでも大人になれない雪乃に対して過去の自分を見るようにイライラすると同時に屈折した愛情も持っていたんじゃないだろうか。そんな中で雪乃の前には都合よく八幡という人間が現れ、雪乃とくっつきそうな気配が漂った。おそらく陽乃の前には八幡のような人間が現れなかったので、くやしい思いもあるんじゃないだろうか。だからこそ八幡が由比ヶ浜結衣のことを気にするそぶりを見せた時、半ば自嘲的に雪乃はまた振られるんだなあとか言ったんじゃないだろうか。

イケメン葉山の影が薄かった。打ち上げで一応いいところは見せたけどそれだけ。そういえば陽乃となにかあったっぽいけど結局何も語られなかった。ひょっとして葉山が陽乃にとっての八幡で、結局二人はうまくいかずにそれぞれ自分を演じるほうに向かっちゃったんだろうか。

アニメでこの最終章を1クール掛けてやるみたいだけど、一体どうなるんだろうか。前の二期がすごい駆け足で手前までやっちゃったのでちょっと心配なのだった。今回は余裕があるので、登場人物たちの色んな内面を分かりやすく描写してくれそうな気がする。

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