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J⇔M ジェイエム 5巻まで

大武政夫 (KADOKAWA ハルタコミックス)

傑作(30点)
2025年6月1日
ひっちぃ

ハードボイルドが好きな凄腕の殺し屋Jこと純一は、女子小学生の赤星恵とぶつかったことで人格が入れ替わってしまう。仕方なく純一は恵の体で弟子を名乗って殺し屋稼業を続けながら元の体に戻る方法を模索する。少年マンガ。

作者の大武政夫は超能力少女がヤクザの家に居候する「ヒナまつり」を描いた人で、待望の新作だし5巻の表紙に描かれている独特の物憂げな傭兵っぽい女の子の絵にもひかれて読んでみた。とてもおもしろかった。

女子小学生に入れ替わった純一だったが、ロリコン趣味もなくこの体でどうやって仕事を続けていけばいいのか苦悩する。それだけではなく、恵の母親やクラスメイトたちとなんとかやっていかなくてはならないのだった。

一方の恵はおっさんの体になって絶望しているのかと思いきや毎日好きなマンガを読みながら家でダラダラと過ごすのだった。「ヒナまつり」とおんなじようなシチュエーションに笑った。殺し屋と少女というとリュック・ベッソン監督の「レオン」を思い出すところだけど、ぜんぜん違っている。

恵の母親は病的な教育ママで、娘に猛勉強をさせるだけでなく、部屋の天井には勉強しないとクソみたいな人生を送ることになるなどの過激な張り紙をたくさん張っている。また、離婚した父親は米兵でつまり恵はハーフなので特に一部の男子生徒からはガイジンだとからかわれいじめられているのだった。

そんな恵のことをなんとかしてやりたい純一だったが、彼自身は孤児で学がなく、どうすればいいのかわからないと言いつつ、なんだかんだでいい方向に転がり始める。一方の恵は頭がいいので、純一が買うだけ買って読んでいなかったハードボイルド小説を読んで勉強し、純一の体でかっこよく振舞って純一を感動させる。どこかおかしなところも残しているんだけどw

とまあそんな感じに、まったくタイプの異なる二人の人間が互いの困難に向き合っていくのを見つめ合いながら物語は進んでいく。どんどん話が広がっていき、登場人物も増えていく。キャラが魅力的な上に、ストーリー展開にもワクワクする。

恵の体で殺し屋をやるために、恵のことを生まれながらの殺人鬼で殺した人間の生肉を食うとか言って吹かしてしまったために、ハーフ美少女の容貌で目を剥いて舌を出して狂人を気取るのが絵的におもしろかった。一方の恵も純一のおっさんの体で動物をあしらったパジャマを着てゴロゴロしながらマンガ読んでいるのがウケた。

しばらくするともう一人、ハーフ美人の殺し屋マリーが登場する。こいつは色気で相手を油断させて相手を殺すタイプなんだけど荒事もそれなりにこなせる。実は純一の命を狙っているのだけど、殺し屋仲間として仲良くなり油断させてから事に及ぼうとしている。

なぜ純一が命を狙われているのかというと、もともと純一は広域暴力団の下部組織とトラブって壊滅させており、その後も送られてきた刺客を次々と返り討ちにしていった結果、誰も手だししてこなくなったという経緯があるから。それでも組織の魔の手が伸びてきているわけだけど。

純一に一度敗れてライバル視している殺し屋が登場する。こいつも純一と同じように少女の体になっていて、5巻の表紙になっている物憂げな傭兵風の少女がそれ。ちょっと先行きに不安を覚えそうな展開ではあるのだけど、この作者なら心配していない。まあそこまでドラマチックにもならないと思うけど。それに、そう簡単に物事が解決しないからこそ物語や人物描写に奥行きを感じるんだと思う。

読みやすいしあまり人を選ばないと思うので、ぜひ読んでみてほしい。

[参考]
https://
comic-walker.com/detail/
KC_000789_S?episodeType=first

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