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フードコートで、また明日。 2巻まで

成家慎一郎 (KADOKAWA 角川コミックスエース)

傑作(30点)
2025年9月30日
ひっちぃ

高校生女子で黒髪ロングの和田と金髪黒ギャルの山本は、中学三年生の頃に急に仲良くなったが進学先が分かれたため、毎日放課後に近所のショッピングモール内にあるフードコートで会って話をするようになる。少年マンガ。

2025年にアニメ化されたのを見てとてもおもしろかったのでこの原作マンガを手に取ってみた。おもしろかった。アニメはたった6話で終わってしまった。原作がまだそんなにないからしょうがない。単行本2巻までで大体消化してしまったと思う。

凸凹コンビというか、まず黒髪ロングの和田は見た目に反してすごくおしゃべりで攻撃的で頭が悪い(!)のに対して、金髪黒ギャルの山本はあまり口数が多くなくて温厚で頭がいいというギャップがある。

だから二人の会話は大体和田が主にネットで聞きかじった話題をひたすらしゃべりまくることから始まる。それを聞いた山本はときどき相槌をうちながら、話の中のツッコミどころに対しておだやかだが的確な返しをする。それを聞いて和田は半ギレしてわめきちらしたりする。

山本の返しが頭よすぎて和田の理解を越えたときに、アニメでは和田の後ろに宇宙猫が描かれていたのがおもしろすぎたんだけど、原作マンガにはそのシーンがなかったのでアニメスタッフがグッジョブ過ぎた(単行本未収録の話の中にあるのかもしれないけど)。これ以外は二人が互いに最悪の水着を選んで着させるチョイエピソードも含めて大体原作にもあって楽しめた。

和田を初めて見たとき、VTuberの月ノ美兎を思い出した。黒髪ロングでネットの申し子と言えばまず彼女だろうと思った。ただ、月ノ美兎はそこそこ頭がよくてエロにリミッターがないのに対して、和田は頭悪いしエロについては全然ダメだと言っている。

和田と山本は高校生女子なんだけど、世間に需要があると思って調子に乗っていないところがいいと思う。じゃあなんでそれぞれかわいい恰好をしているのかというと、和田の場合はクラスで浮かないためで(話しかけづらいと思われているらしいが)、山本は自分の好きな格好をしたいと思っているから。こういう意志を感じさせる女の子ってかわいいと思う。

和田は胸が大きいんだけど、グラマーな体形で腹肉もめっちゃあると自分で言っていて好感が持てた。一方の山本はやせ型で貧乳なんだけど、どっちもそこまで胸のネタを擦らないところがいいと思う。…と思って読み返してみたら和田は何度か山本にマウントとってたw

和田の表情がめっちゃ豊かで笑った。ドヤッたり不機嫌だったり笑ったり泣いたり軽蔑したり憧れたり不安だったり冷めていたりと、とにかく百面相だった。一方の山本は大体アンニュイでダルげな感じではあるんだけど、たまに怒りをにじませたり笑顔を見せたりする。

山本は口数が少なくて基本自分から話を振ったりはしないんだけど、聞かれたら自分の好みを答えるし、なかでも好きな配信者について語るときには静かな情熱を見せる。

女の子が二人でとりとめのない話ばかりしているだけじゃなくて、和田が昔一人の男の子から好かれていた話とか、山本の家は母子家庭なんだけどやんちゃな弟が別れた父親のほうになついてしまって母親のことを考えると憂鬱になる話なんかもあって、そういうことで揺れる彼女たちがますますいとおしくなった。

登場人物はほかにもいて、その和田のことが好きだった男子と、そいつが付き合っている和田似の彼女とか、和田が時々話題に出すゴリラ顔のクラス女子なんかが、舞台となっているフードコートに時折現れたりする。ちなみにこの作品の場面は大体フードコードなんだけど、たまに学校や帰り道が出てくる。

キャラがかわいいだけじゃなくて等身大(?)で悩んでいて愛着も持てるという少なくとも自分にとって理想的な日常系の作品なのでぜひ読んでみてほしい。とはいっても、圧倒的に引き込まれるストーリーがあるわけでもなく、またすごく感動的なエピソードが描かれるわけでもないので、気楽に読んでじっくり噛み締めるぐらいのおやつ感覚がいいと思う。

[参考]
https://www.kadokawa.co.jp/
product/322005000443/

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