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  • ナンシー関

    傑作(30点)
    2002年6月13日
    ひっちぃ

    消しゴム版画家という不思議な肩書を名乗る人だが、むしろテレビ評論家として有名。突然の訃報なので、この人自身を批評して送る。

    私がこの人のテレビ批評記事を初めて読んだときには、うわっ、えげつない批評をする人だなと思った。というのは、とにかく容赦ない上に、芸能人なんかの出演者を実にあざとい存在のように描写するからだ。行き過ぎというよりは、想像力の働かせすぎ、考えすぎ、なんじゃないかと思った。正直、ついていけないこともあった。私が彼女と世代が違うので

    たとえば、この芸能人がこの番組に出る理由。日本テレビの人気番組「おしゃれ関係」は芸能人のイメージ回復のためにあるだとか、落ち目になった芸能人がどういう流れで露出場所を変えていくだとか、普通の芸能記事には見られない分析を披露していた。例をあげると、吉田栄作が「マネーの虎」に出ている件、そしてこの番組がゴールデンアワーに進出するのと同伴して吉田栄作がゴールデンに復活したことなんかを挙げていた。

    私が毎週読んでるのは、週刊文春の連載「テレビ消灯時間」であるが、先週はとある昼メロの安直でバカっぽい造りをとことん馬鹿にしていた。いや、本人はひょっとすると馬鹿にしているつもりはないのかもしれないが、読者は十中八九そう思うだろう。

    辛口評論家についてよく言われるのは、対象を愛しているからこそ辛口なのだ、という安直なコメントである。ナンシー関については、私からはなんとも言えないが、普通の人ならどうでもいいと思う昼メロに堂々と突っ込むあたりは、それなりに愛を感じなくはない。ただ、やはりテレビを愛しているかということになれば、彼女は愛していなかったと私は思う。とにかくあきれていた。

    産経新聞に大月隆寛が言葉を寄せていた。ちょっとおおげさなんじゃないかと思った。なにしろ、三島由紀夫などと同じように、一つの時代が終わったと思う人は多いのではないか、なんてことを言っていたからだ。

    ただ、彼女がいなくなったことで、テレビになんでもかんでも言い込まれていってしまうのではないかという「怖さ」を私は強く感じる。犯罪を犯した芸能人が知らないうちに復帰する、というような重大なことに関する批評ならそれなりにメディアに期待できるのだが、テレビの作るどうしようもないでっちあげに突っ込める人はいるのだろうか。橋田寿賀子ファミリーに、伊東家の食卓に、あそこまで突っ込める人はいるのだろうか。

    突っ込みだけではない。自分が良いと思った番組を支持することもあった。テレビ東京の大食い選手権を支持するのはどうかと思ったが、なぜ支持するのかという主張は非常にもっともなものだった。TBS がパクり番組をはじめたときも冷静で、パクりが悪いのではなくてパクりかたを批評していた。時に感情的な批評もしたが、感情的であることを断っていた。評論家としてとてもよかった。

    かなり太っていた人らしく、39歳という若さで亡くなったと知って驚いた。大手芸能プロダクションによる陰謀…の線はかなり薄いだろうが、そういう説が広まっても不思議ではない。とにかく残念である。

    現在、彼女の個人ページにはつながりにくくなっている模様。

    [参考]
    http://www.bonken.co.jp/

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