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  • ヨーロッパが罪を犯しアラブに代償を払わせる

    神保隆見 (アジア国際通信 1999年03月01日号 No.200)

    傑作(30点)
    2002年8月11日
    ひっちぃ

    我々があたかもイスラエル建国の国際社会での協定のようなものだと思い込まされていたバルフォア宣言が、実はイギリスの外相から一貴族に出された単なる私信だったという事実を紹介した話。

    アジアどころか国際社会の闇を報じつづけるアジア国際通信の記事。発行者は神保隆見で、現在は MSN ジャーナルを立ち上げた田中宇が運営に協力している。

    宣言の全文はたった 56語で、原文とその訳は以下のとおり。訳文はアジア国際通信からの引用。

    *

    Foreign Office
    November 2nd, 1917

    Dear Lord Rothschild,

    I have much pleasure in conveying to you, on behalf of His Majesty's Government, the following declaration of sympathy with Jewish Zionist aspirations which has been submitted to, and approved by, the Cabinet.

    "His Majesty's Government view with favour the establishment in Palestine of a national home for the Jewish people, and will use their best endeavours to facilitate the achievement of this object, it being clearly understood that nothing shall be done which may prejudice the civil and religious rights of existing non-Jewish communities in Palestine, or the rights and political status enjoyed by Jews in any other country."

    I should be grateful if you would bring this declaration to the knowledge of the Zionist Federation.

    Yours sincerely,
    Arthur James Balfour

    *

    親愛なるロスチャイルド卿

    私は、内閣にたいして提出され、承認されたユダヤ人シオニストの願望に対する同情を示す次のような宣言を陛下の政府を代表して、あなたに伝えることを大きな喜びと存じます。

    陛下の政府は、パレスチナにおけるユダヤ人の民族的郷土の設置に好意を抱いており、この目的の達成を容易にするために最善をつくすでしょう。ただしその際、パレスチナに現存する非ユダヤ人共同体の市民的・宗教的諸権利や、他の国においてユダヤ人が享受している諸権利や政治的身分に害を与えることは何も行われないことをはっきりと了解されるべきものとします。

    私は、もしあなたがシオニスト連合にこの宣言をお知らせくだされば幸甚と存じます。 

    敬具
    アーサー・ジェイムズ・バルフォア

    *

    原文は、イスラエル外務省のページにあったもの。http://www.mfa.gov.il/mfa/
    go.asp?MFAH00pp0


    上のリンクは、以前私が海外の歴史コミュニティ向けに紹介するときに探したときは見つからなかった。フランス語のサイトしか引っかからなくて陰謀めいたものを感じた覚えがあるのだが、ひょっとしたらスペルミスして検索したかもしれない。ロスチャイルドのスペルを Rotschild で検索したからかもしれないが、そのあと Balfour Declaration で検索した覚えもあるので、ひっかからないはずはないのだ。

    見ていていま思ったのだが、この Foreign Office というのは本当についていたのだろうか。と思って調べてみたら、オリジナルの文書だという画像ファイルを見つけた。イスラエルドメインなのが気になるところだが、以下のリンクを参照。

    http://www.wzo.org.il/home/
    movement/
    balfour2.htm


    アジア国際通信ではこの文書は、イギリスの一貴族から別の貴族に宛てた単なる「私信」、と言っている。確かにこの文書を見ても、公文書ではないことは明らかなのだが、外務省からの手紙というのであれば私信なのかどうか私にはよくわからない。なんにせよ、たった 56語だし、建国については一言も触れていないことは確かだ。… national home というのは民族的郷土なのか自分たちの国家なのか私の英語力では分からないが、手続きに関しては述べておらず、あくまで理念だけを言っている。

    皮肉にも、この文書がパレスチナ人らの権利保護を約束しているにも関わらず、現実はそうはなっていない。

    というのが前半部で、後半では我々はユダヤ人とアラブ人がはるか昔から争っていたかのように思わされているが実はウソで、不仲には百年の歴史もないのだと言っている。そもそもユダヤ人を離散させたのも長年差別しつづけてきたのもキリスト教社会なのだという。アラブ人たちは寛容ですらあったのだ。

    いまインターネットを検索すると、バルフォア宣言が単なる書簡だったということを書いているページがそこそこ見つかった。さらりと書き流しているものが多いが、私にとってはかなり衝撃的なことだった。

    情報操作とは、ウソを流すことだけではない。思い込ませることのほうが効果は大きい。たとえば、アンネ・フランクはガスで殺されたのではなく腸チフスで死んだ、という事実もそうだ。たとえ真実がどのようであれ、このような思い込みが起きていることには疑いの目で見なければならない。新聞だけを読んでいてはダメだ。こうした視点を我々に啓蒙してくれるものも読まなければ、世界は見えてこない。

    [参考]
    http://jimbo.tanakanews.com/
    200.html

    (最終更新日: 2009年6月29日 by ひっちぃ)

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