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    佐々木敏 (週刊アカシックレコード030123)

    傑作(30点)
    2003年1月28日
    ひっちぃ

    アメリカのイラク攻撃の気配がいま弱くなってきている理由を、東京電力の三月からの原発停止と中南米石油大国ベネズエラのストライキという二つの事件から分析し、オイルメジャーが再びオイルショックを起こして儲けようとしているためだと予測している。

    まず現状、中南米で多くの原油を輸出しているベネズエラの石油公社で社員のストライキが起き、収まる気配がないそうだ。そうなると、原油の供給は中東に依存気味になる。そこへアメリカがイラクに侵攻すると、中東のオイルの供給が不安定になり、原油の値段が上がる。中東の安い原油が値上がりすると、ロシアや北米なんかの採掘コストの高い原油が売れる。その結果オイルメジャーつまり原油の大会社が儲かる。いま原油の大会社を支配しているのがロックフェラー財閥なので、タイトルも「敗れざるロックフェラー」となっているのだろう。陰謀論めいた題だが、感情論はなく事実や予測だけを書いている。

    そこへ日本では、東京電力が原子力発電所の管理体制の杜撰さにより原発をすべて一旦停止することになり、その時期が三月に決まったらしい。原子力発電所が止まると、それ以外の発電所の多くを占める火力発電所への依存が高くなる。火力発電所は石油を必要とする。ここで原油価格が高騰ということになると、新たなオイルショックはさらに度を強めることになることは確実だ。だからこそ、アメリカのイラク侵攻が三月に延期されたのだ、というのが筆者の大胆な予想だ。

    非常に理に適った予測だと思う。読んでいて気持ちいい。この予測が当たったらもちろん驚くし、はずれたとしても脚本家として非常に優れた人だと思う。

    筆者は前から、日本国内で起こる原発関係の不祥事は、石油陣営の工作の疑いが強いと主張してきた。先進国フランスで何の問題もなく利用されている原子力発電所が、日本では今後なくしていくべきだと言われ続けてきた。一つ一つの事実を吟味してみても、私も原子力発電所がそんなに危険なものだとは思えない。東電のコマーシャルではないが、火力や水力などと共に原発は併存するほうが良いと思う。

    筆者の佐々木敏は例によって田中宇をライバルとして批判の対象としている。田中宇はアメリカ政権内部の二つの派閥の争いがイラク侵攻を思い止まらせる方に行っていると分析している。それに対して佐々木敏は、いいや予定は一切変わっていないただ時期が伸びただけだと言っている。今回はとても分かりやすい勝負になりそうだ。東電の原発停止後ほどなくしてイラク侵攻があれば佐々木敏の勝ち。一向に侵攻がなければ田中宇の勝ち。東電の原発停止前にイラク侵攻があれば、まあ佐々木敏がうまいこと保険を張っているので辛勝といったところだろう。

    後半では、ドル対ユーロという構図で興味深い分析をしている。ドル陣営がアメリカ・英連邦・日本・ロシア・トルコで、ユーロ陣営がイギリス以外のヨーロッパだとしている。アメリカはユーロの台頭を許さないらしい。なぜなら、中東の原油価格の支払いをドル建てで独占したいからで、彼らにユーロ建てさせたくないらしい。いまドル支配が崩れてしまうとドルが暴落してしまう。

    ホルムズ海峡に機雷をまく工作ができる、と半ば強引なことを書いているのは気になる。湾岸戦争中にイラク側が故意に油をペルシャ湾に流出させたというデマを流したのは確かに工作だったが、それはアメリカがイラクを空爆するときに精油所をひそかに爆撃するだけであとはマスコミ工作で済んだ。しかし機雷を巻くという工作は一線を超えている。そんなことが可能なのかどうか疑問だ。

    [参考]
    http://plaza12.mbn.or.jp/
    ~SatoshiSasaki/

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