中国の壷
川原泉
傑作(30点) 2004年12月12日 ひっちぃ
再婚家族のほぐれを描いた表題作「中国の壷」と、江戸時代のとある弱小藩の騒動を若い藩主とその妻を中心に描いた「殿様は空の城に住んでいる」の二つの中篇を収録した単行本。
まず「中国の壷」。まず遣唐使としてやってきた若者と唐の若き大将軍との交流が描かれる。そして時代は流れて壷の精として遣唐使の若者の子々孫々を見守ってきた若き大将軍が、現代の子孫である娘とその義理の兄のエリート社員とその家族の微妙な軋轢に関わっていく。
川原泉って真面目な人が実は内部でどうのこうのっていう話が好きなんだろうか。他にも似たような作品があった。それはいいとして、壷の精となった若い大将軍ってこの物語に必要だったんだろうか。なんか余計な気がする。過去の悲しい出来事なんてとってつけたみたいな感じだし。いや不覚にも目頭が熱くなったのは言っておこう。でもちょっとあざといなぁ。それさえ除けば普通にいい作品。
「殿様は空の城に住んでいる」はとにかく力作。密度が濃い。江戸時代の殿様の生活とか解説しちゃってる。よく調べたなあ。勧善懲悪の、陰謀を阻止しようとする話で、読み終わってすっきりする。ほのぼのしているけどしっかりした主人公の姫もいい感じ。川原泉の作品に出てくる主人公の魅力が凝縮されている。
三つ子とか五つ子とか好きだねぇこの人は。描くのが面倒だからとかそんな理由だったりして。
今の普通のマンガに慣れていると、マンガってこんなに密度を高く出来るんだ、と思える。すごいね。これが定価390円なんだから。マンガが安いのか小説が高いのか知らないけどさ。
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