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  • サトラレ TRIBUTE TO a SAD GENIUS

    原作:佐藤マコト 監督:本広克行

    まあまあ(10点)
    2005年7月25日
    ひっちぃ

    半径10メートル以内の人間に自分の考えていることを思念のようなもので飛ばしてしまう存在、通称サトラレという特殊な人間を描いたマンガの映画化。本作では、若き天才医者である七番目のサトラレと、サトラレ対策委員会から派遣された女性精神科医と、その周辺の人々を描いている。

    私はマンガ好きだが、この作品の原作をまだ読んでいない。割と有名な作品なのでいずれ読んでみたいと思っているうちに、映画のほうを先に見ることになった。なので原作と映画を比較することは出来ない。原作を含めた映画作品としてレビューする。

    この作品のコアはサトラレ(悟られ)という存在そのものだ。SF作品ということができるだろう。と同時に、他人に思考を読み取られてしまうという特性から、ヒューマンドラマにならざるをえない。まあ作ろうと思えばサイコホラーにでも何でも出来たのだろうが、一番自然な形で設定を活かせるのはハートウォーミング系だろう。ギャグもあって笑える。

    もし自分がサトラレだったらどう思うだろうか。まず思いつくのが異性や性欲関係だろう。期待にたがわずいきなりその描写がある。もし自分がサトラレだとしたら相当恥ずかしいだろうが、本人には自分がサトラレであるという自覚はないし、法律で周りの人は本人に自覚させてはならないということになっている。でもサトラレという存在がいるということは全国民に知らせている。

    サトラレを一般社会で生活させるために国家による様々な努力が払われている。そういう設定を自然にするために、サトラレは先天的に頭がよくて、GNPの伸びに対して1/4近くも貢献したということになっている。このへんがSFの通の楽しみ方だろう。

    さてストーリーは、30過ぎの女性精神科医が視点になっている。鈴木京香が演じている。ごく当然の配役だが、なんか魅力を感じない。もっと活きのいい女優を使って当たっていたら、それだけでこの作品はもっと魅力的な作品になったと思う。鈴木京香だって悪くないとは思うのだが、枯れていてぜんぜん面白みがない。

    逆に主演のサトラレの青年はすごくいい感じだった。素朴で純情な感じがよく出ている。彼の思念の声に何度も切なくなった。

    ただ、話はすごく単純だ。サトラレという仕組み以外にこれといった仕掛けがないし、主人公の純粋な想いが周りに伝わるということで演出されるシンプルな感動話だ。七番目以外のサトラレが現れてサトラレの苦悶が語られたりもするが、あまり深く掘り下げてはいない。

    にしても感動的なのは、人間が自分の感情を素直に相手に伝えることができたら、そして自分の偽らざる気持ちが相手に伝わったとしたら、どんなに素晴らしいことだろう。それが、これ以上ない形で理解できる。こんな単純なことでみんなハッピーになれるんだということ。それが出来ないから人間は猜疑心を持ったり互いに傷つけあったりするのだという現実世界の切なさ。想いを映画という芸術作品にしたという見方からすれば、まさに芸術とはかくあるべしというものだろう。

    いい映画だが、楽しめたかというとあまり楽しめなかった。

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