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    梅棹 忠夫 編著

    まあまあ(10点)
    2005年9月21日
    ひっちぃ

    大阪のホテルプラザが外国人向けに日本のことを紹介する本を英語で用意するために作者に依頼したのを元に、読み物としてあえてそれを日本語に翻訳しなおした本。

    編著者のもとに五人だったかの共著者が集まり、日本のことを説明するテーマを会議により77にまで絞り、分担を決めて書いたのだそうだ。

    77のテーマには、群島、森林、四季から始まり、征服王朝、京都、漢字と仮名、歌と小説、神道、城、自由都市、朱印船、大阪、札幌、郵便・電信、戦争、地震、メカトロニクス、高度成長時代、ニュータウンなどなど古今東西いろんなものを選んでいる。

    要は読み物だ。ただ、そもそもの目的からすれば当然だが、そんなに思ったほどは面白くなかった。日本のことをなるべく客観的に紹介するために日本人自ら筆をとった本だ。この人たちはこの人たちで日本に誇りを持っているのだろうけど、ちょっと客観的すぎるように思う。ヨーロッパと比較しているところはもともとのこの本の目的からすれば不可欠でうまいと思うが、もっと日本を自慢してやる態度があったほうが、元々の読者である外国人にとっても良かったと思う。もちろんこの逆輸入版のようなこの邦訳版の読者である私たち日本人にとってもだ。なんだろう、こういう変な気遣いが日本人の美学なのだろうか。

    77のテーマのうち私の中で一番印象に残っているのは札幌の項だ。明治政府は北海道にアメリカ式の農業を広めるため、当時現職のアメリカの農務長官ホレイス・ケプロンを「日本の最高官以上の高給でスカウト」したのだそうだ。この人があの「少年よ大志を抱け」で有名なクラーク博士を呼んだとある。この人もまた当時マサチューセッツ農科大学学長だったらしい。この人たちが来てくれたことや努力もすごいけど、呼ぶ決断をした明治政府も大胆だなぁ。

    やや物足りなさが残ったのは、著者が複数いるからだと思う。良くも悪くも無難な内容に収まっている。日本とはこうなのだという一本の筋だった主張が薄い。もともとそういう本じゃないからしょうがない。ただ、安心して読むことの出来る本ではある。あ、それと、諸外国と日本の比較が時々なされるが、もっとあってもよかったと思う。

    それなりに面白い本ではあったが、あえて読まなくても良かったと思っている。

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