学園アリス 12巻まで
樋口橘 (白泉社 花とゆめコミックス)
傑作(30点) 2007年2月14日 ひっちぃ
人により多種多様なアリスと呼ばれる超能力を持つ子供を集めたアリス学園で、快活で負けん気の強い少女・蜜柑が、最初は嫌われながら徐々に受け入れられ、仲間たちを救っていく物語。
ツインテールで関西弁をしゃべる元気なヒロインが、最初みんなからいじめられる中でがんばる姿が魅力的だ。ヒロインは親友の少女・蛍を追ってアリス学園に来ることになるのだが、ヒロインは蛍のことが大好きでべったりしていて、それを蛍が時に照れながら普段はすげない態度を取るところもいい。
主人公たちは十歳という設定から始まる。その頃はまだ異性に目覚めていない。そんな状態で、いつも自分に冷たい態度をとる男の子・棗(なつめ)に対して、最初は嫌な感情しか持っていなかったのだが、徐々に自分ではよくわからない好意を抱くようになるところがいじらしい。特に確か九巻あたりの展開が絶品で、読んで私は何度もため息をもらした。結果的に棗のライバル的な位置になる流架の、周囲にバレバレな想いも微笑ましい。蜜柑は鈍感なのでまったく気づかないのだけど。
本作は超能力ものだ。自分も何か超能力を持ちたかったなぁ、と思っていた子供の頃を思い出す。みんな何かしら得意分野があって、それぞれの能力を使って活躍する。こんな世界があったらいいなあ。しかもそれが学園ものになっている。超能力者の悲哀も描かれる。私の好きな要素が詰まっている。出てくるキャラクターはどれも魅力的で、脇役一人一人にまで愛着が持てる。
ところが本作には目に見えて悪い点がいくつかある。
まず、反学園組織が絡むとストーリーがグズグズになってしまうところ。最初に棗が誘拐されるエピソードはとても良かったのだが、それ以降の組織がらみのエピソードがどれもいまいちだ。読者からの声の中に、シリアスな展開は早く終わらせてくれというのがあって、それに対していやいやもうちょっと我慢してくれと作者が返したメッセージがあった。
鳴海先生の世代の設定は期待でき、作者があらかじめ作りこんで暖めている様子がうかがえるのだが、語り口が感傷的すぎて形倒れになっているように思う。
ペルソナと戦うときの展開といい、学園の校長たちといい、この作者の描く組織や学園の裏の話はどれも明らかに完成度が低い。この人は陰を描くのが苦手なんじゃないだろうか。蛍の兄も棗の妹もいまいちだし。あんまり無理しないで欲しいなあ。でも作者が楽しんで書いていて、読者に語りたがっている様子がありありと分かるので、そのうちうまくなってくれるといいなぁと期待しておく。
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