全カテゴリ
  ■ 映画、テレビ番組、舞台芸術
    ■ テレビドラマ
      ▼ ハケンの品格

  • 新着リスト
  • 新着コメント

    登録

  • ハケンの品格

    日本テレビ

    まあまあ(10点)
    2007年3月17日
    ひっちぃ

    沢山の資格を持つがヒューマンスキルがなく残業もせず必ず三ヶ月で延長なしに契約を切るスーパー派遣社員・大前春子が、食品関係の商事会社でクセと人情味のある若い二人の主任や同僚の派遣社員らと共に仕事上の問題を乗り越えながら、クールな外見を保ちつつも内面が変わっていくさまを描いた作品。

    多くの人がそうであると思うが私も何度もこの作品に心の中で突っ込んだ。ありえねー。だがそんなリアリティのなさが大して気にならないほど作品がそれなりにしっかりしている。現実ではないどこか別の世界の話なのだ。

    多分脚本家は派遣社員について伝聞でしか知らないのだろう。だから、正社員と派遣社員の関係を、言葉にしやすい事実だけで考えていて、空気感みたいなものが一切考慮されていない。設定や背景だけ頂きました、みたいな感じだ。

    週刊文春のテレビドラマレビューで今期一番評判が良かったのがこの作品で、レビュアーの一人が本作のことを木枯らし紋次郎だと言っていた。ヒロインの決め台詞の一つ「あたしには関係のないことですから」が、紋次郎の「あっしには関わりのねえことでござんす」と似ているというのだ。笑った。でも本作は結局一社内の話で終わる。

    これまた週刊文春の別のコーナーで誰かが言っていたように、小泉元首相の子供で七光りだと散々叩かれていた小泉孝太郎の好演が光っている。これ事実上の主演なんじゃないかと思った。ヒロイン・大前春子を演じる篠原涼子と、その恋愛対象(?)となる東海林武を演じる大泉洋、この二人の演技のほうが良かったし彼らがこのテレビドラマの主役のはずなのだが、二人の仲を取り持とうとする賢ちゃんを演じた小泉孝太郎の方が主役っぽかった。こういうポジションの俳優として使いやすそうなので今後色んなテレビドラマに出そうな気がする。

    本作の筋は、仕事は出来るが無愛想な派遣社員のヒロインが、硬軟二人の正社員の主任と時にぶつかったりなだめられたりしながら、過去の嫌な思い出で閉ざしてしまった心を徐々に解きほぐされていくというものだ。毎回他の登場人物も絡んで一騒動起こる。どれも本当にたわいない話で、あえてここで紹介すべきものは一つもない。

    何が面白いのかというと、ヒロイン・大前春子の言動や態度が見ていて気持ちいいのだ。正社員相手に言いたいことをはっきり言うし、終業の鐘が鳴ったら引き止められるのを振り切ってさっさと帰る。愛想や媚は一切ない。視聴者は自分が派遣社員でなくても、社会を構成する一員であるならば自らを重ねてみて、ヒロインのこういう態度が取れたら気持ちいいだろうなぁ、と思うに違いない。本作のすべてはヒロインの言動や態度にあると言ってしまっていいと思う。特にヒロインが車を修理しようとして途中まで分解して時間が来てそのまま帰るシーンは笑った。しかもなんでも資格を持っているヒロインが自動車整備士は持っていないというオチも良かった。

    というこの作品自体の評価は置いておくとして、派遣社員というものが世の中でこれだけ注目されている中で、派遣社員を扱ったテレビドラマとして注目された本作が実態と乖離していることについて、私はテレビ局として問題があると強く思う。どの段階で誰が方向性を決めたのか知らないが、もっと世に問いかける内容であってほしかった。時々断片的に真実に切り込まれるが、ワンフレーズだけでは訴えかけに乏しい。

    コメントはありません

    manuke.com