怪物王女 一巻だけ
光永康則
まあまあ(10点) 2007年7月21日 ひっちぃ
現代の日本を舞台としながら、陰で西洋風の怪物がはびこり、怪物の世界の王族の一人である「姫」に関わってしまった少年ヒロとその姉のおっとりメイドが、「姫」の王族同士や異なる勢力の魔物との戦いに巻き込まれる非日常的な日常を描いたマンガ。
この作品はほぼ明確に藤子不二雄「怪物くん」をベースにしている。ただし怪物ランドのプリンスこと怪物くんの役どころとしてビスチェのような黒いドレスをまとった若い「姫」を、フランケンシュタインの代わりに外見がロリコン少女のフランドルを、狼男の代わりにヘソ出しルックの単細胞女リザを、ドラキュラの代わりに上流階級のお嬢様・令裡を配している。
基本は怪物同士の戦闘を扱っている。少年ヒロは一度死んで「姫」の力で蘇っているので多少戦力にはなるが頼りない。「姫」も成人していないので人間に毛が生えたほどの力しかないので武器に頼ってサーベルっぽい剣やチェーンソーなどで戦う。「姫」の親衛隊がいたのだが不明な理由によりいまはいない。他の王族から刺客が送り込まれてきたり、吸血鬼一族などの独立勢力から狙われたり、土着の怪物から襲われたりする。なりゆきで仲間になったりもする。
「姫」は自分の親衛隊を再建する最初として少年ヒロに自分の血を定期的に与えて部下として使役している。ヒロは「姫」に命令されて守るよう言われるが、命令でなくても「姫」を放ってはおけない。「姫」からのなにげない言葉がときにヒロをロマンスの想像へと誘うが、あくまで想像の段階で止まり、ほのかに甘いタッチで毎度短編が締められる。
私は割とこの作品が好きだ。キャラクタに魅力がある。幼女の人造人間が「ふが」しか言わなかったり、「姫」の色っぽいナリと冷たい態度、狼男ならぬハーフ狼女リザの姿形やちょっと頭の足りないところ、吸血鬼のお嬢様・令裡の気まぐれさ。こういう人物たちが非日常な日常をほのぼのと展開しながら、時々襲われて戦いで引き締まるところ。
ただ、ストーリーが単純で飽きてしまう。日常モノにストーリーを期待してはいけないのだろうか。序盤のワイルドマンのエピソードは素晴らしいと思ったが、ちょっと台詞回しに不安を覚えた。そしてそれ以後特に目立って良い話がない。
あ、私はアニメから入ったのでアニメを見続けての感想も入っているので注意。初のアニメオリジナルのエピソードの出来が超イマイチなのを差し置いても、原作つきと思われる話もあんまりよくない。怪物ものなのでドラマを成り立たすのが難しいのかもしれない。
もっとキャラクタの魅力を生かした話作りをしたほうがいいんじゃないだろうか。
ふと思ったのだが、この手の作品ってもっと一般人がカラんで巻き込まれたりするものなのだが、この作品では一般人が出てきてもカヤの外だったりする。ヒロの学校にも令裡以外に主要な人物が出てこない。
一方、怪物の世界にも吸血鬼ツェペリと王女の一人シャーウッド以外に主要人物がいなくて、こいつらも大して内容のある話につながらない。まあこの後の展開で何人か出てくるようだが、戦いだけでドラマが生まれるような気がしない。
まとめると、もっとふくらましようがある魅力的な作品だと思うのに、小さくまとまってしまっているように感じる。
にしてもアニメ版のオープニングとエンディングの曲とアニメーションは両方ともとても素晴らしい。単品として見ても鑑賞できる。エンディングの曲のALI PROJECTは独特のカルトっぽい味にとても研きが掛かっているし、曲の「跪いて足をお嘗め」にあわせて絵も色っぽい。オープニングは真逆で一昔前の男性アイドルのポップロックが脈動感あるギターで軽快にポップにきざまれているのがいい。
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