狼と香辛料5
支倉凍砂 絵:文倉十
まあまあ(10点) 2007年8月23日 ひっちぃ
若い行商人クラフト・ロレンスが、途中拾った賢狼ホロという狼か少女の形をしている五百年生きてきた女神様を、彼女の故郷に送り届ける道中に巻き込まれた騒動で一儲けしようとする話。
今回のテーマは…ネタバレになるので書けない。ただ、割とありきたりながら、重いテーマが描かれていると思う。にしてはお粗末に感じる。前作と同じように、大きなテーマを別のエピソードから理屈で導かせる手法が使われていて、それが結構露骨なのでヘタだなあと思う。ただ、前作のような失敗はしておらず、ロレンスとホロの関係が一歩進む描写が盛り上がりを見せている。その分なぜか商売描写が犠牲になっている。
相変わらずロレンスとホロの甘い会話は健在だ。とても密度の濃いやりとりが描かれる。うーん。思春期の頃は友達との会話や異性への意識もこんな感じに過敏だったけど、そんな時代はどこかへ行ってしまった。そういう意味では、いまでもこんな文章が書ける作者の力ってのはすごいのかもしれないけど、単にコミュニケーションの経験値が足りないだけのようにも見える。
すべて頭で考えて書いている人なんだなと思う。
私がこのシリーズで魅かれていたのは、多分作者の思春期的な見方が色濃く含まれていたからだろう。特にホロの描写は、無条件にまぶしい存在だった異性の同級生と、彼女らへの自分の願望を思い起こさせる。永井豪がずっと童貞だったように、こういう芸術作品っていうのはみずみずしい感性を持った人でなければ書けないと思う。
この人の作家性はとても素晴らしいと思うのだが、物語の組み立て方や描写がいまいちなのが残念なところだ。
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