クビツリハイスクール
西尾維新 (講談社NOBELS)
まあまあ(10点) 2007年12月29日 ひっちぃ
性格破綻者の大学生の青年が、奇妙な縁で知り合った「人類最強の請負人」という二つ名を持つ美女に強引に誘われて、謎のお嬢様学園に潜入して一人の女学生を学園から連れ出そうとする。人気ライトノベルミステリー戯言シリーズ三作目。
序盤、一人称で物語を語る主人公が強引に言いくるめられるシーンが笑える。一人称で語っているのに相手に騙される過程を淡々と客観的に語っているのはいま改めて考えてみると性格破綻者の主人公が確信的にやっているのかもしれない。
この戯言シリーズの一番の特徴、読者が語り部に騙される仕掛けがまた大きく使われるのかと思ったら、今回は本の厚さ通り小ぶりのなんてことのない話で終わってしまった。
本シリーズはなんだかんだで萌えミステリーなんだなということを再認識してしまった。主人公と請負人に加え、学園内の三人の少女が登場するが、そのうちの二人の描写が浅くてガッカリした。残りの一人も訳の分からないことになっているし。
その分、意外にも主人公が自分の性格を自己分析する描写が結構あって、物語もそれに沿って進んでいく。なぜこの異常な性格をした主人公が、人類最強の請負人と呼ばれる美女・哀川潤に気に入られ、事件で活躍することが出来るのか。結論ははっきりしないがなんとなく分かってくる。
西尾維新の文章は本作でも冴えていて、読んでいて気持ちいいし先が気になって本に張り付いて読んだけど、読み終わってみると今回は大した話ではなかったなあと思った。むしろこの程度の話をよくここまで夢中で読ませてくれたものだなあとヘンに感心した。
ネタバレを防ぐためにボカした言い方をすると、ミステリーというジャンルとキャラクター萌えという趣向は、両者をあまり突き詰めすぎると互いに食い合うところがあるなあと思った。一部のマニア的には最高かもしれないけど、私はげんなりした。
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