ネコソギラジカル
西尾維新 (講談社NOBELS)
まあまあ(10点) 2008年1月29日 ひっちぃ
ここ数ヶ月の間、色々な事件に巻き込まれてきた戯言遣いこと大学生の青年いーちゃんの前に、「世界の終わり」を求め続けてきた痩身着流しの男が立ちはだかる。こうしてガラじゃないのに無理やり物語の主人公に仕立て上げられたいーちゃんは、仲間の助けを借りながら最後の戦いに挑む。戯言シリーズ本編の完結編。
メタフィクションみたいなのが好きじゃないとあまり面白くないと思う。主人公の敵は、自分の納得できる物語というか運命みたいなものを探していて、その対象として迷惑千万なことに主人公を勝手に敵と定めてしまうのだが、この人は一人で勝手にここで盛り上げようとか配役をどうしようとか決めていく。主人公はそんな男の裏をかこうとがんばってはみるのだが、男の恣意に振り回されっぱなしで手応えがない。こういう趣向は私としてはなかなか面白いし新鮮で読んでよかったとは思うのだが、ダラダラと締りのない話でちょっと飽きも感じた。
作者の西尾維新って人は多分小説が大好きなんだろうな。優れた書き手としての異才を感じつつ、その前に無類の読み手なんだなあと思う。悪い意味で。良い読者ってのはどんなとがった作品もそれなりに楽しめる人たちだ。だからそれが書き手としての節操の無さとか締りの無さにつながっていると思う。
戯言シリーズ一巻二巻あたりは、奥深い物語の導入部として読んでいたおかげでそれが気にならないどころか魅力として感じていた。しかしこうして物語が完結してみると、結局色んなことが分からないままとなっていて、良く言えば読者の想像を掻き立て、悪く言えば全部放り出して終わってしまっている。良質な読者に向けて書いているんだろうなあ。
一冊二冊ではなくこうして十冊ほどこの人の作品を読んでみると、良くも悪くも一人の作家の魅力と欠点、自分との相性の良い部分と悪い部分が分かってくる。フィクションのそれも小説ってのはあくまで一人の想像力の範囲内でしか作られない。それは私もよく分かっているつもりだった。
この本シリーズに出てくる哀川潤の台詞じゃないけど、まだまだ可能性を感じる人なので、余裕こかずなまけずにもっとがんばってほしいなあ。一部のマニアのハートはもうガッチリ掴んだのだから、もうちょっとメジャー志向になったほうがいいと思う。萌えキャラの残虐死体なんか書くのはしばらくやめて。なんかちょー高みからおせっかいなことを言っていると自分でも思うけど。
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