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    西尾維新 (講談社NOBELS)

    いまいち(-10点)
    2008年1月31日
    ひっちぃ

    人気ライトノベル(?)戯言シリーズの作品世界で使われる言葉を辞典形式で作者が解説したもの。

    本シリーズの本編を読んだら色々と説明されない世界設定が多くて欲求不満に陥ったので、もしやこの本で解説してくれているのかと期待して買って読んでみたが、ほとんど解説されていなくてガッカリした。こんなに分厚くて全460項目15万文字と帯に書いてあるのに、ここまで情報量が少ないことに逆に驚かされた。やっぱこの人は華麗な筆さばきの人なんだなあと妙に感心した。

    あとがきで作者が、作家になって良かったことは読書がいっそう楽しくなったことだと言っているが、まさにこの言葉がすべてをあらわしている。作者は読者と一緒になって読者と同じ目線で自分の書いた作品を語っているのだ。だから、作品で描かれなかったことは作者にも分からない。決めてない。多分こうだろうなんていうふざけた言い方すらしている。いわば本書は作者自身によるファンブックとなっている。一応創作の舞台裏も解説されているのだが、主に言葉遊びの種明かしだ。あるいは単純なバランス感覚による登場人物の造型の説明など。だから作者と作品の中身との関係なんかがあまり透けてこない。

    たぶんこれだったら2ちゃんねるのラノベ板の西尾維新スレの住人のほうが妄想まじりでもっと面白い想像をしまくっていると思う。まだ読んだことないけど。

    この人は作品を精緻な伽藍としてではなく、子供みたいな感覚で作って育てているんだろうなあ。創作なんてのはもともと一般に作者自身でも容易にコントロールできないものだが、それにしても見事な放任主義である。子供には子供の世界があって親がそれを知らないのは当たり前だという割り切りがある。ここまで開き直られると読者としても肩をすくめて笑うしかない。

    こういう世界設定集みたいなものを書くんなら、この本のためだけに色々な設定を作って欲しかった。これも一つの作品なのだからそのぐらいの労力は払ってもいいんじゃないだろうか。あるいはせめて本編で描かれなかったものをもっと思い出して描いて欲しかった。

    だが所々で興味深い記述も見られる。特に、作者の小説家としての信念とか、一冊分丸ごと没になった作品があって粗筋を説明していたり、デビュー前の作品について言及していたりしている。ってこれってザレゴトディクショナルというよりニシオイシンディクショナルだよなぁ。

    戯言シリーズは最初の二作だけミステリーテイストで、あとは人間の常識を超えた力を持つ殺人者たちの「人外バトル」であることが作者自身によって言明されている。正直私の好みではなかったことが改めて分かった。

    とまあぶつぶつ言ってきたが、割合読める本ではある。それに、この本自体や好みに多少問題はあっても、作者のことは好きになってしまった。物足りなくはあるが結構あけすけに語っているところがみられる。作者の西尾維新が語り部で主人公の物語と考えれば…。

    あと本シリーズを振り返ってその魅力を再認識できるという利点もあった。最終巻ネコソギラジカルは上巻の春日井春日や闇口崩子がとても楽しかったのを思い出した。結構忘れるものだな。あの話、長くて、上中下のつながりが薄いから。

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