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    神林長平 (ハヤカワ文庫)

    まあまあ(10点)
    2008年4月15日
    ひっちぃ

    突如チーフからクビを言い渡された海賊課宇宙刑事ラテルと黒猫異星人アプロが、再就職先ということで出向いた映画会社で不思議な出来事に遭遇する。裏では伝説の海賊ヨウメイと、彼に気に入られようと海賊課を潰そうとするカッツの化かし合いが繰り広げられる。神林長平の人気SFシリーズの第二弾。

    今回は目次に三章並んでおり、それぞれ一応独立しているが、ヨウメイに気に入られようとする海賊カッツの仕掛けたCATSシステムに絡んだ連作短編となっている。CATSシステムとは人々の精神をコントロールして自分のあるべき姿に作用して外見まで変えてしまうものだ。

    一話目はラテルたち海賊課刑事が寂れた映画会社に乗り込んでいく話。黒猫型異星人アプロが、コマーシャルに騙されて変なチョコをつかまされて悔しがったり、自分が主役の映画を撮れと要求したりと、本気でバカを言っているところが面白い。

    二話目は情報軍との野球対決。ある博士が昔の文献から野球のルールを発掘してきたので親善試合をやることになった。野球とは名ばかりのなんでもありのドタバタ。ラテルがルールを拡大解釈し、アプロが暴れまわるだけでなく、彼らの相棒の人格を持った対コンピュータフリゲート・ラジェンドラまでもがキレて暴走する。

    三話目はそれらの騒動を陰で引き起こしていた海賊同士の戦いと、海賊を追う刑事たちの活躍が描かれる。

    ほぼギャグ作品だと思っていいんじゃないだろうか。登場人物たちの掛け合いが面白い。なかでも笑ったのが、CATSによって知能を持った機械までネコにされてしまうところ。宮崎駿の「となりのトトロ」に出てくるネコバスを思い出した。ネコバスよりこっちのほうが早いんだな。

    ギャグは面白いのだけど、そのほかの点ではあまり見るべきところはなかったように思う。ヨウメイとカッツの駆け引きもあまり面白くない。マーシャ・Mという女性刑事も弱かった。まあ軽く楽しめればいい作品なんだと思う。

    野球が終わったあとで、今度はアメフトやろう、と言ってオチる場面がある。神林長平が大好きだと言っている「涼宮ハルヒの憂鬱」の作者・谷川流は同作でここをオマージュしたんじゃないだろうか。

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