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    福満しげゆき (青林工藝社)

    まあまあ(10点)
    2008年10月12日
    ひっちぃ

    素行の悪い人や痴漢や不良などを陰で成敗している少年たちが、いろんな人を仲間に引き入れてついには自警団を組織してしまうが、組織が少年たちの手を離れて一人歩きし始める。

    「僕の小規模な失敗」という陰鬱な自伝的マンガを描いて限定的に注目されている福満しげゆきによる初の長編ストーリーマンガらしい。

    一見ひ弱そうな小柄の少年や、単なる平凡なサラリーマンにしか見えない親父が、裏でかなりの戦闘力を持っているという設定になっている。少年はいろんな小道具を使いこなし、親父は両手に固定した金槌を振り回す。おとなしそうな少女の性格が悪くて少年たちを振り回す。このギャップが面白い。

    そんな彼らが、電車の中で携帯で通話する人たちから街中の不良まで成敗していくのはスカッとする。半裸にして高いところに吊るす。それが次の日のニュースになる。捕まる恐れを抱きながらも活動はどんどんエスカレートしていく。

    ところが事態はだんたんおかしな方向に進んでいく。このへんからネタバレ扱いにしたほうがこれからこの作品を読む人の興を削がないために良いだろう。

    実にこの作者らしい妄想というか、現実世界ではとても出来ないようなことを最初は願望みたいな形で少年たちに託してやらせていくのだが、でもそんなにうまくいくわけないよなあと作者の悲観的な現実認識が浸食してくる。

    この作品を説明するための一番分かりやすい言葉を探すとしたら、「人の世は決して良い方向には転がらない」みたいなアンチ系になると思う。正義の味方なんてものが成り立つわけがない、と作者一流のニヒリズムが味わえる。この点についてはハッとさせられた。

    しかしあまりこなれた作品とは言えず、もっさりと話が進んでいく。おじさんは不気味だし、少年たち登場人物がどんな思考をしているのか結構分からない。話の展開が気になるから確かに面白い作品だとは思うのだが、中途半端な点が色々放置されていて、読んでいて楽しいのかどうか自分でも分からない感じになる。

    一つの作品から何かを読み取ろうという積極的な意志で作品を楽しむことが出来る人には勧められる。しかし、ただ受動的に作品世界を楽しみたいような人や時には勧められない。

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