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  • 初音ミク

    クリプトン・フューチャー・メディア株式会社, YAMAHA

    傑作(30点)
    2008年10月18日
    ひっちぃ

    ヤマハの音声合成技術VOCALOID2を使って声優の藤田咲が演じるバーチャルアイドル「初音ミク」の声で歌わせることの出来るソフト。作曲や声の調整のためのDAW風のエディタと、DAWから使えるVSTiプラグイン二種類などからなる。

    著作権問題で趣味としてすっかりニッチな分野になってしまったと言われているDTM(コンピュータでの音楽づくり)でひさびさのヒット商品となった。また、ありえないほど巨大なツインテールの独特なたたずまいにより、ソフトとは別にキャラクターとしてもヒットした。

    ニコニコ動画やYouTubeなどの動画サイトが一般的になったことで、アマチュアの作曲家が絵描きと一緒になって質の高いPV風の動画を配信し、それを多くの人が盛り上げてムーブメントを作った。人気の高い曲はカラオケで配信されたりCD化されたりした。

    これまでにも音声合成ソフトはあったが、声優を使ってアニメ声を全面に押し出したことでオタク文化にアピールし、低価格で質の高い発声で誰にでも簡単に歌わせることが出来ることが、ここまでのヒットにつながったのだと思う。最近のコンピュータ性能の向上や動画サイトの登場が後押しした。

    私も発売された当初から注目していて、いずれ買ってみようと思っていた。ただ、この手のソフトはそんなに売れるとは思っていなくて、販売店が過剰に仕入れすぎていずれ値崩れするだろうと踏んで購入を留まっていた。実際そんなに注目されているほどの売り上げは無いみたいだが、普通に継続的に売られるほどの量は出ているみたいで、一向に投げ売りされる気配がないので、しびれを切らして買ってしまった。秋葉原のヨドバシカメラで14,800円だった。

    普通に歌ってくれる。まだ色々不自然だが、このぐらい歌ってくれるのなら十分満足できる。特に声の伸びが素晴らしい。ビブラートがとても自然。

    不自然な部分は、ユーザが細かい設定を行うことである程度はなんとかなる。数種類のパラメータをいじって自然な発声にするのだ。アクセントの強弱、音程が安定するまでの立ち上がり、音の硬軟など。こういうパラメータをいじっていると、普段人間が普通に歌っている声がいかに細かく制御されているのかがよく分かる。

    作った歌声は付属のエディタで歌わせることが出来るほか、大きく三つの方法で使える。

    まずオーディオファイルに落とすこと。Waveファイルに出力してくれるので、それをカラオケ演奏と組み合わせたり、総合的な作曲ソフトに読み込ませれば、バックの演奏と合わせることができる。たぶんこの使い方が圧倒的に多い。

    次にSteinbergが開発して事実上の標準となっているVSTiというプラグインの方式でソフトウェアMIDI音源として鳴らすことが出来る。ただしMIDIの一般的な制御コードとは多少異なるので、MIDIのソフトから全部制御するのは難しい。

    あらかじめ歌詞を入力しておいてリアルタイムにMIDI鍵盤で引いた音階で歌わせることも出来る。これにはリアルタイム用のVSTiプラグインを使う。

    また、ReWireという外部機器制御用の共通規格でも制御できるらしいが、私はよく分からないので使っていない。

    歌声を自然に近づけるにはそれなりのテクニックが必要になる。ネットで研究が進められており、うまい人と下手な人とで大きな差がある。つまり使いこなすのが難しい。習熟するための書籍やサイトが色々あるので勉強の必要があるだろう。

    それでもやはりどうしても不自然になりがちな弱点がいくつかある。たとえば濁音が弱いなど。このような欠点を克服するため、うまい人は自然な発声をある程度あきらめてクセのある歌わせ方をさせていることが多いように思った。ちょっとフランジャーっぽい(?)感じになったりする。

    このソフトの一番の功績は、女声のそれも特にアニメ声のヴォーカルが欲しかった人たちに素材を提供したことだろう。プロのミュージシャンですら(つんくとか)男に媚びるような歌を女の子に歌わせるにはそれなりの動機付けが必要なのだが、相手が電子音なら自分の妄想を思う存分歌わせることが出来る。

    作成した歌声は、音楽の素材としてなら自由に使える。ただし「初音ミク」というキャラクターの権利は発売元が握っているので、キャラクターを前面に押し出すには制限がある。また、公序良俗に反する内容を歌わせたものを発表することは禁じている。公共の電波で発信できることが目安らしい。エッチで卑猥な歌詞や、国家転覆とか差別系の内容はダメなのだろう。もちろん個人で楽しむのはいくらでも自由だ。

    これの第二弾として「鏡音リン・レン」という双子の男女のロリショタ版(幼い女の子と男の子)の製品が出たが、舌ったらずな発声を狙ったコンセプトからか使いこなすのがさらに難しいらしい。ほかにこれら以前の製品としてMEIKOやKAITO、最近出た色物系でGacktをモデルにした「がくっぽいど」なんかがある。

    多くの人は、市販されているシングルCDなどのカラオケ素材を使って歌わせて楽しんでいるらしい。オリジナル曲を自分で作る層はやはり少ないだろう。私も試しに一曲短いのを作ってみたが、創作活動は思いのほか気力を使うので疲れた。キャッチーなイメージの製品の割に、使って楽しむのは敷居が高い。

    近いうちにこのVOCALOID2シリーズの第三弾が出るらしい。仕組みそのものはあまり変わらないみたいだが、音声データのボリュームを増やすみたいなので、より自然な歌声になるんじゃないかと楽しみだ。しかしキャラクターとして大ヒットした初音ミクほどの人気が出るかどうかはまた別のことだろう。

    開発元のクリプトンは、ニコニコ動画やYouTubeのような動画サイトを独自に立ち上げるなど、製品の開発だけでなく環境を整えることにも気を使っている。

    気軽に買うにはちょっと高めの値段なのが惜しいところだが、お試し版もあるらしくて15日間だか二週間だか使えるので試してみると良いだろう。より強力な新製品を出したら、旧製品を安くしてもっと手軽に楽しめるようにしてほしい。

    にしてもニコニコ動画などの最近の動画サイトはすごい。音楽だけでなく、ちょっとしたアニメ映像や、MADと呼ばれる著作権的にはアウトだが既存の映像作品を切り貼りして面白おかしく字幕とか付けた作品なんかが沢山ある。さすがに趣味の範囲を超えるには限界がありそうだが、どこまでレベルが高くなるのか計り知れないものを感じる。

    [参考]
    http://www.crypton.co.jp/
    vocaloid/

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    manuke.com