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    作:高見広春 画:田口雅之

    まあまあ(10点)
    2009年9月26日
    ひっちぃ

    現代日本を軍国主義の独裁国家にしたような空想世界。そこでは無作為に全国から中学三年生の一クラスを選び、最後の一人になるまで殺し合いをさせる「プログラム」と呼ばれる実験が定期的に行われていた。修学旅行のバス移動中に催眠ガスで眠らされた一同は、人払いされた離島に移され、殺人ゲームに強制参加させられる。

    深作欣司監督による映画が世界的に有名になったが、安易そうな話に思えてならなかったので私は見なかった。あれから時が過ぎ、連休中に私は初めてマンガ喫茶でマンガを読むことにしたのだが、どうせならわざわざ買うほどではないもののそれなりに興味を引かれた作品を読むことにしようと思い、目についた本作を読んでみることにした。

    古い。とにかく作風が古すぎる。2000年に最初の単行本が出た作品とは思えない。

    絵は七割がたうまいと思うのだけど、特別に愛らしく描きたくて描いたと思われる一部のヒロイン、それに純情そうな少年のタッチが濃すぎて気持ち悪い。それ以外の人物の絵はうまいことはうまいのだけど80年代の絵なんじゃないかと思う。型にハマってて俗っぽい。でも分かりやすくて読みやすくはあった。

    脚本の古さについてはもう導入部の文章をそのまま引くことにする。

    *

    ここに大東亜共和国って
    国がある――――
    バリバリの軍事国家で
    アメリカ(米帝)はじめ
    世界各国と対立中…
    おかげで半分鎖国状態さっ

    いや ふだんの生活がそんなに
    特別だってわけじゃない……
    学校に行けば仲間もいるし
    不良もいれば
    オカマだっているぐらいだ

    ただ オレにとって最悪なのは
    オレの心をふるわせる
    ロックンロールが
    敵性音楽=ご法度だってこと…
    まあ 抜け道は
    あるんだけどねっ……

    *

    これはひどくないか?

    殺し合いというゲームに参加させられた生徒たちが、互いに互いを信じられなくなっている中で、それでも信じようとするというドラマが描かれる。でもちょっと娯楽性に重きを置きすぎているんじゃないだろうか。この作品を読んでいると、人間というものを描きたいというより、よりセンセーショナルに学生の殺し合い描写を描きたかったとしか思えない。

    二人の悪役、超大金持ちで才能に恵まれているが人の心を持っていない冷酷な男と、人を利用することしか考えておらず色仕掛けを駆使してライバルを倒していくセクシーな女、この二人を使ってだいぶグイグイと展開を引っ張っていっているのだけど、安易すぎないだろうか。

    と散々けなしたが、にも関わらず結局私は全巻読んでそれなりに満足してしまった。この娯楽性には逆らえなかった。うーん。すごい。先の展開が気になってしょうがなかった。ベタな要素もなんだかんだでそれなりに楽しめた。ベタなドラマ、ベタなエロ、ベタな感動。ヘタに奇をてらった作品より楽しめた。

    ちょっとずつ惜しい要素がいくつかあった。たとえば、かつて卑怯にも友達を置いて逃げだしたことのある人間が、このゲーム中に助け合いを求めてくるところ。どう描いてくれるんだろうと期待していたら、都合よく悪役がやってきて話を台無しにしてしまう。正直この作品で一体何を描きたかったのだろうと首を傾げたくなる。幼少の頃のトラウマが描かれたと思ったら娯楽要素だけ抜き出して終わりにしてしまうし。読者がそういう小難しいものを求めていないということを前提にしているのだろうか。

    エロ要素はちょっと下品ながら魅力的で楽しめた。グロ要素は多少やりすぎ感がある。脳みそが吹っ飛んだり、内臓が飛び出したりする。こういうのが好きな人にとってはそれだけでこの作品を楽しめると思う。こういう楽しみ方も別に悪くはないと思うので好きなら勧める。でもこういうのが嫌いならそれだけでこの作品を読まない方がいい理由になる。エログロを除けば取り立てて読むのを勧めたいような作品ではない。

    (最終更新日: 2010年4月29日 by ひっちぃ)

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