世界樹の迷宮
ATLUS
傑作(30点) 2010年10月29日 ひっちぃ
樹海の下に大きな迷宮が発見された。迷宮の奥に眠るという財宝を目当てに、近くの街には多くの冒険者たちが集まってきた。プレイヤーは新入りの冒険者団体を操り、メンバーを迷宮に潜らせ、財宝を探し、戦いの経験を積ませ、迷宮の謎を解明しようとする。コンピュータRPGの元祖の一つ、ウィザードリィの系統を継ぎ、現代的なアレンジを施した3Dダンジョン攻略型RPG。
ネットサーフィン中にどこかのブログでこの作品が絶賛されていたのを読んで、いつか手を出そうと思っていたら、ちょうどATLUS BEST COLLECTIONという廉価版が出たので買って遊んでみた。
まずキャラクターメイキングから入る。五人までのパーティを組めるので、五人のキャラクターを冒険者ギルドで作る。名前は好きにつけることができる。職業があって七種類から選ぶ。転職はできない。職業はちょっとなじみの薄い名前なので最初迷った。近接攻守のソードマン(のくせに斧も使える)、守りが堅くて回復魔法も使えるパラディン、攻撃に特化したダークハンター、弓を使うレンジャー、回復魔法の専門家メディック、攻撃魔法の専門家アルケミスト、補助のバード。さらに追加で、強敵と相性がいいらしいブシドーと、よくわからないけれど強力な魔法が使えるカースメーカーがあるけれど、こちらは探索中に条件を満たさないとなれない。職業ごとに四種類のイメージイラストが用意されていて好きなのを選ぶ。ゲームシステムは伝統的だけどイラストはパッケージと同様に現代的なアニメ絵で親しみが持てる。
町外れに行くと迷宮にもぐることができる。最初は樹海なので緑があって開放的な場所になっている。でも3D視点で視野が限られている。上キーで前進、左右キーで方向転換、と慣れないと難しい。アナログスティック全盛のいまでは懐かしい。
画面右下にボウッと光る玉のマークがあって、これが青いうちは安全なのだけど、緑、黄、赤となるに従って敵と遭遇する率が高まる。雑魚敵は俗に言うエンカウント方式で戦闘に入る。面白いのは、ほかにF.O.E.というフィールド上をうろつく敵がいて、赤い玉のようなものがうろついていて、接触すると中ボスみたいな感じの強い敵と遭遇する。場合によってはかなり強くて勝てないような敵も現れ、接触を回避することを要求されたりもする。
このゲームは基本的には3D視点でダンジョンを攻略するのだけど、Nintendo DSの二画面を利用して、下の画面には2Dで地図が表示されるようになっている。自分が通った場所は自動的に床が描かれる自動マッピングなのだけど、壁やドアや宝箱なんかはあえてプレイヤーにタッチペンで描かせるようになっている。この面倒くささが逆に探索の楽しさを演出している。この2Dマップには、さきほど紹介したF.O.E.という敵のマークも表示されるので、プレイヤーのあとを追ってくるのが分かってスリルがあって面白い。
ただ迷宮にもぐって探索して敵を倒すだけでは面白くないので、いくつか楽しめる要素がある。まずミッションというものが街の役所から発行される。役所の依頼を受けて目的を達成するに従って、最終目的までの道が示されていく。ほかに酒場ではクエストがたくさん用意されていて、街の人々の依頼を受けて小さなおつかいから敵退治やアイテム探しなんかをすると報酬がもらえる。また、敵が落とすアイテムを街の装備屋に売っていくと、特定の材料が揃うごとに武器や防具が店に並んでいく。
こういうコツコツ感がとても魅力的だった。最初はパーティの戦力が弱くてなかなか出歩けない。敵と何回か戦うと疲弊してすぐに街に帰らなくてはならない。でも細々と敵を倒して経験値を得てレベルアップしてキャラクターが強くなっていくと色々なスキルを覚えていくし、敵が落としたアイテムを売って店に並ぶアイテムを買って装備させて強化していく。迷宮を少しずつ探索していくごとに地図が描かれていき、迷宮の全貌が分かってくる。
一方でこういうオールドファッションなゲームに慣れていないプレイヤーにとっては色々と不親切でそっけなく感じると思う。迷宮の秘密を解くという大きな目的や、街の人の依頼という小さな目的はあるけれど、これといった展開がなく淡々と続いていく。
このゲームはウィザードリィのほかにファイナルファンタジーXIの影響を色濃く感じる。特にスキル。迷宮の特定の場所で採掘なんていうことが出来てアイテムを手にいれることができる。続編ではどうやらサポートジョブみたいなものまであるらしい。たぶんこのゲームは色々なゲームの良いところを積極的に取り入れていると思う。オリジナリティはそんなにあるわけじゃないけれど、よくまとめていて小気味のいいシステムになっている。
イライラした点もいくつかある。地味にイラつくのが、攻撃魔法の専門家アルケミストの速度が遅すぎること。複数の敵に対して同時攻撃できる方法が限られている中で、アルケミストの範囲魔法は便利なのだけど、味方の白兵戦キャラが散々殴ったあとでようやく魔法が発動するのでしばしば空振りして敵一匹に無駄なMPを使うことになる。これは頭を使ってなんとかすることが難しいので、結局片っ端から敵を倒していった方が早いなんていうことになり、戦闘に飽きがくる理由になってしまう。
一定フロアごとにボス敵がいて、それぞれよく考えられていてやりごたえがある。ただ、攻略サイトを読まないとよく分からない敵もいた。ボス敵が何度も復活する理由が分からなかった。
迷宮の秘密についてはネタバレになるのでここでは書かないけれど、この会社の作品をいくつか遊んだことがある私にとってはそれほど意外な内容ではなかった(ちなみにこの会社はプリクラを開発したことでも有名)。まあそういうストーリーを楽しむのがメインのゲームではないので比較的どうでもいいことなのだけど、それでもちょっといい感じではあった。ある深さまで迷宮に潜れば分かる。
このゲームは、もう新しいタイプのゲームをやるのはしんどいというおっさんゲーマーから、古いゲームを知らない若い人まで、それぞれ受け取り方は違うだろうけど幅広く受け入れられると思う。一回のプレイ時間を短くできるので手軽に遊べるのもいい。私は通勤時間に電車の中でよく遊んだ。長い通勤時間がうそのように早く過ぎるのはゲームならではだと思う。一方で、さすがにちょっと単調なプレイに時間を使いすぎたようにも思う。一体何十時間使ったのだろう。パズル雑誌を買って遊ぶみたいなものか。
(最終更新日: 2024年11月2日 by ひっちぃ)
|