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  • NHKスペシャル 灼熱アジア 第3回「インドネシア 巨大イスラム市場をねらえ」

    NHK (2010年11月13日21時〜)

    傑作(30点)
    2011年2月11日
    ひっちぃ

    日本の金融機関が、巨大な人口を誇り近年経済発展が著しいイスラム国家インドネシアにどのように進出し戦っているのかを追ったドキュメンタリー。

    まずインドネシアのみずほコーポレート銀行の話。これまではインドネシアに進出してきた日系企業を中心に貸し出していたけど、最近はもう現地企業のほうが比率が高いらしい。現地の不動産会社から現地人を融資担当の責任者としてヘッドハントしてきて営業活動をしている。現地の財閥に切り込むために子会社から落としに掛かろうと満を持して低金利のプランを持っていったらもっと金利を低くしてくれと言われて驚く。その背景には、既にライバルの外資系銀行が他の子会社にそれくらいの低金利でどんどん融資している事情があったらしい。

    銀行だけじゃなく、オートローンというかバイクローンの会社も進出している。首都ジャカルタには既に摩天楼がそびえ、道には車があふれている一方で、大小一万数千の島からなるインドネシア全土はまだまだ田舎で、人々はバイクを手に入れるさなかにある。日本のホンダは既に大きなシェアを持つ一方で、これまで乗り切れなかったヤマハが新製品で巻き返そうとしていた。いままでインドネシアの道路事情が分かっていなかったので悪路でも走りやすいよう車輪の幅を広くしたり、貞淑なイスラム女性のために足を揃えて乗れるモデルを売り出した。

    そんなヤマハと提携して、現金を持っていない貧しい若者などにローン会社が売り込みをかけ、バイクを月賦で買ってもらう。三井物産が現地に設立したBAF(ぶっさんなんたら)は現地人に大幅に裁量を認めることで、世界的に見てもっとも成功した現地法人になったそうだ。それでもいつまでも順調にはいかず、利子をとってはならないイスラム系の会社がローンの利子の代わりに手数料に上乗せする方便で進出してきたりして戦いが厳しくなり、いままで開拓してこなかった場所への新規出店をもっと進めようとするが、そこには民族紛争や力を持った現地の販売店との提携が求められた。

    みずほは融資だけでは限界を感じたため、日系企業がインドネシアに進出するためのアドバイザー業務も始めたり、さらには現地企業との橋渡しをするところまでやるようになる。中でも番組で取り上げられているのは、現地の流通卸会社と提携して乳製品の製造会社を合弁で作るよう日本の乳製品会社にも呼びかける話。最近ようやくインドネシアでは冷蔵庫が普及してきているので、いままで腐りやすくて売れなかった乳製品を売るためのチャンスなのだという。まだ早いと渋る現地の流通卸会社の幹部に対して、日本の技術をアピールして投資を折半で行って工場を建設するだとか、包装は既にある現地の会社の設備がそのまま使えるだとか相手にもうまみを示してビジネスを提案する。

    あーこりゃすごいなと思った。日本が不景気なわけだ。そりゃこういう国が好景気で沸くのも当然だ。なぜ日本の景気が悪いのかという話が2ちゃんねるであるときに、結局のところ日本が新しいビジネスを作ることが出来なかったのが悪いという結論に持っていく人がポツポツいて、うーんそれってそんなに重要なことなのだろうかといままでは思ったけれど、結局のところインドネシアみたいな国と日本の違いってのは発展度を除くといかに人々が新しいものを欲しがっているのかという点に尽きるのではないだろうか。

    いま日本で人々が望んでいる高額なものって、老後の安定、勤務地に近い住居、子育てのための資金、このぐらいじゃないだろうか。この三つをうまいこと金融商品にできたらいいのに。年金は払うだけ損だと思われ、老人介護施設は倒産して払った金が無駄になり、住宅の価格が手に届きにくくなり、子供は作るだけ損する。これらに金を投資すればするほど儲かる仕組みがあればいいのに。2ちゃんねるでも誰かが言っていたけれど、私は年金を縮小すればいいと思う。年金があまりもらえないとなれば、豊かな生活を送るためには子供を作って子供に養ってもらわなければならなくするし、稼げる子供を育てるには教育への投資がもっと必要になる。子供に世話してもらえば老人介護施設はあまり必要なくなる。人口が増えていけば不動産の価格もどんどん上がるから不動産を買うほうが得になる。って日本列島がどこまで耐え切れるかw まあここまでしなくても、緩やかなインフレさえ起きれば自然と年金だけでは不安になり財政赤字もやわらいで経済がまわっていくはずなのに、既に財産を持っている人たちがインフレを嫌がって経済を停滞させているんじゃないか。これやると銀行が一番困るみたいだ。邦銀は海外に進出している支店は世界でがんばっているのに、国内ではろくに審査能力を持たずに新規ビジネスの芽を育てず債券ばかり買って国内の低金利にあぐらをかいて…と言うとちょっと一面的すぎるか。銀行だっていまのルールに従えば自然とそうするしかないのだろうから、じゃあ誰が悪いのかって色々考えていくと誰も悪くなかったりしそうなのだけど、少なくとも「やれることのある人たち」に責任を取って動いてもらわないとどうしようもない。

    なんか話が脱線したけれど、インドネシアの様子を見ていると、なんだかビジネスが面白くみえてくる。どこの会社と提携させて工場を作るだとか営業所を置くとか楽しそう。まあ多くの人にとっては目の前の小さな仕事を片付けるだけの日々なのだろうけど、実際にモノを売ったりローンの契約をまとめたりするのも悪くないなと思った。日本じゃ必要のない人々に無理やりモノを売りつけるような営業ばかりのような気がしてイヤになる。うちの会社と契約すれば互いに儲けられますよ、っていう話はあまりなくて、どれだけリベートを出せるか、どれだけ泥臭い人間関係を維持できるか、というしょうもないことに労力を注がなければならない。ビールなんて味に大した違いはないし、薬だってそんなに効き目に大した違いはなくても、バーのオーナーやら小さい診療所の開業医なんかを回って「人間力」を試される。なんて不毛なのだろう。

    NHKのこういうドキュメンタリーって見てみると割とコンスタントに面白いものが多いので、あんまり自分の関心に近くなくてもとりあえず録画しておこうかなと思わせる魅力がある。構成もよく出来ていて、数十分の番組内で一つじゃなくて三つぐらいの当事者の視点で語られていて、それらが適度にシャッフルされているので飽きがきにくく時間の経過を感じさせる。シンプルで分かりやすくてポイントがはっきりしている。地味なのでそれと感じにくいけれど、とても完成度の高い番組ばかりだと思う。とはいっても、NHKとしての見方なんかをアナウンサーや有識者に解説させたりする部分については、なんか方向性がおかしいとか微妙なことがたびたびある。今回取り上げた番組にはそういうのがなくて、事実を積み重ねていくのがメインなので良かった。

    とか言いつつ、録画してから三ヶ月も寝かせていたんだな私w

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