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    阿川佐和子 (講談社文庫)

    まあまあ(10点)
    2011年3月10日
    ひっちぃ

    当時テレビの女性アシスタントからエッセイストになったばかりの阿川佐和子が、57人の作家に短いインタビューをした連載記事をまとめたもの。作者の初連載らしい。

    作者はテレビ朝日「テレビタックル」などでおやじを転がしたり週刊文春でインタビュー記事を連載したりしている阿川佐和子。作家の阿川弘之を父親に持ち、父親の知り合いのつてでテレビに出るようになった作者が、25年ぐらい前に作家としてのキャリアを始めて間もない頃の作品。ブックオフで105円でry

    やっぱり最初の五人分ぐらいまでは固くて、読んでいてあまり面白くなかった。正直途中で読むのをやめて捨てようかとさえ思った。でも我慢して読んでいるうちにじわじわと楽しめるようになっていった。対談形式ではないのだけど、作者の地の文と相手作家の台詞が対話をするようになり、早くも作者の魅力的な雰囲気が伝わってくる。

    そもそも25年前の人気作家を相手にしたインタビューだから私は半分ぐらいしか名前を知らないし、名前だけ知っていてもよく知らなかったりするのだけど、割と楽しめる話がいくつかあった。

    「失楽園」ブーム直後の渡辺淳一から男と女の話をされてすっかり上がった作者に対して「まだ、そういう経験ない?残念だね。今度、あなたがドロドロに汚れたとき会いたいな」と言う渡辺淳一もすごいが、こういうことをそのまま書いてしまう作者もすごい。ちなみに渡辺淳一はもともと整形外科医だったらしい。

    藤沢周平は最初中学校の教員をやっていたらしいが、病気で療養しなければならなくなり、やっと回復したものの教師に戻れなかったので校長先生に職を斡旋してもらおうと相談したら東京に行った方がいいと言われて冷たくあしらわれたと思ってショックを受けたらしい。もしそのとき市役所の事務員かなにかを紹介してもらったら作家をやっていなかったかもしれないと言っている。

    評論家にもインタビューしている。川本三郎という人がこんなことを言っている。「ほら、音楽の世界でイギリスってクラシックの作曲家をほとんど生んでないでしょ。だいたい作曲家ってドイツ人ですよね。それを批判されると、イギリス人の答え方としては、『僕たちは作曲家は生んでいないけれども、いい観客だったじゃないか。ハイドンにしろヘンデルにしろ、育てたのはイギリスの観客だ』って言うんです。私もそれにあやかって、いい聴き手、いい読み手になろうというふうに思っているんですね」うーん。評論家はかくあるべし?

    いまでは旦那の悪口ばかり書いている林真理子が、当時は新婚ホヤホヤでノロけているのがウケた。

    何人か私の好きな作家がいて私はその人の著作を読んである程度その作家について知っていたのだけど、残念ながらこの本ではそんなに魅力を引き出されていないなと思った。紙面も限られているし、有名なエピソードを繰り返し語るわけにもいかないだろうからしょうがないとは思うのだけど、そう考えると短いインタビュー記事という形式そのものがあんまり良いものではないと思う。

    それに、当時のことは知らないけれど、いま色んな雑誌に掲載されているインタビュー記事って、インタビュアーが興味を抱いた人にインタビューするのではなく、単にインタビューされる側の人たちが自分たちの宣伝をするためにインタビューを受けていることのほうが圧倒的に多いんじゃないかと思う。テレビのゲストなんて結構露骨なのばっかりだし。

    でもそんな中で作者の阿川佐和子は非常に人間的に魅力のある人で、インタビューされる人たちが心を許して色んなことをしゃべっていると思う。この本はあまり一般的には勧められないけれど、この種の作品としては良い部類だと思う。

    にしてもテレビ朝日「アメトーーク」でやってた「徹子の部屋芸人」で取り上げられていた黒柳徹子の芸人殺しの対談がものすごく面白かったw

    (最終更新日: 2011年3月10日 by ひっちぃ)

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