ファイナルファンタジー13
スクウェアエニックス
まあまあ(10点) 2011年6月12日 ひっちぃ
空想世界の人類は、半造物主ファルシたちの庇護のもとで高度な文明を発展させ、コクーンと呼ばれる人工衛星上の都市群を築いて繁栄していた。しかし絶えず地上のファルシからの侵食を受け、たまに一部の人々がルシ化(影響下に入る)されるので、聖府(政府)はパージ政策(棄民)をとっていた。パージに反対する者たちが反乱を起こす。日本を代表するコンピュータRPGシリーズの第13弾。
という分かりにくい設定などで不評だったため購入を見合わせていたが、どうせ結局プレイすることになるだろうと思って価格が下がったのを見計らって買い置いていた。このたびようやく時間が出来たのでプレイしてみた。
未来都市の銃撃戦から始まる。仲間内で自衛集団を作って粋がっている若者スノウの一声で、パージ(棄民)される人々が立ち上がって反乱を起こすのだけど、まだ幼さの残る少年ホープの母親がその場で命を落とす。少年ホープは最初震えるだけだったが、そこで出会った少女ヴァニラに励まされて、若者スノウに復讐することを決める。若者スノウにはルシ化された婚約者セラがいて助けようとしていた。彼女の姉の元軍人女性ライトニングもまたセラを助けようとしていたが、若者スノウのことは認めていなかった。運搬業のおやじサッズは自分の子がルシにされたのを救おうと行動を共にする。
フルハイビジョンの3DCGで繰り広げられるシーンはどれも美しい。プリレンダリングされたCGがきれいなのは言うまでもないが、ほとんどの場面はリアルタイムにレンダリングされている。モデリングは多少荒いけれど、毛細血管まで表現された肌の質感は非常になまめかしい。カメラワークもダイナミックでまるで映画のようだった。光と輝きに満ちた巨大な現代都市とそこを飛び回る乗り物群が美しい。
しかし脚本には終始違和感を覚えた。ただでさえディープ気味なSF設定の上に乗っかっていて不安定なのに、その上で動くキャラたちの挙動がおかしい。若者スノウが率いる自衛集団の若者たちの掛け声「俺たちノラは」「軍隊よりも強い!」一体どういうメンタリティを持っているのだろうか。なぜか少女ヴァニラが語り部をしているのだけど、この演出に何か意味があるのかと思って最後まで遊んでみても結局意味不明だった。
たぶん一番盛り上がるのは、少年ホープが自分の母親の死の責任を若者スノウに負わせようと迫るところなのだけど、これのどこがドラマなのか首を傾げた。あの場面で若者スノウが取った行動は別に悪くないし責任もないと思う。少年ホープはあの場でただ震えるだけしか出来なかったのになぜそこまで強く言えるのか。贖罪をテーマにするという飾りつけがしたかっただけにしか思えなかった。この作品を構成する大小さまざまな要素はほとんどこんな感じで単なる飾りに過ぎない。
戦闘システムはコマンド入力式だけどシリーズのアクティブタイムバトルと銘打った半リアルタイムな方式を引き継いでいる。リーダーしか操作できないのは12を引き継いでいるほか、キャラごとに従来ジョブと言っていたものをロールと置き換えて戦闘中に随時変更できるようなシステムを10-2から引き継いだ上で、パーティメンバー全員のロールの切り替えをオプティマというパレットで一気に設定/変更するようにすることで、戦術性がありながら非常にスピード感のある戦闘が実現している。ピンチのときは守備的なロールを各メンバーに取らせ、スキを見て一気に攻勢に転じられるようあらかじめオプティマを設定しておく。ロールは六種類あって、アタッカー(主攻撃)、ブラスター(補助攻撃)、ディフェンダー(防壁)、ヒーラー(回復)、ジャマー(弱体)、エンハンサー(強化)から選べる。強敵と戦う場合は味方を強化し敵を弱体してから一斉に攻撃するとか、雑魚相手なら最初から一気に畳み掛けるとか、強化はせずに弱体だけでいくなど自由度が高い。ただし、手動で操作するリーダーの反応がどうしても自動メンバーより遅いほか、下手に手でちまちまコマンドを選ぶよりもさっさと半自動コマンドを入力したほうが早いため、オプティマの切り替え以外はボタン連打しているだけになってしまう。
キャラクターの成長にはクリスタリウムと呼ぶ三次元グラフがロールごとに用意されていて、敵を倒して得られるCPというポイントを消費してグラフを進めていってHP+20みたいな場所を通るとそのとおりに成長する。10のスフィア板と酷似しているのはスタッフが大体一緒だからだろうか。思ったほど自由度がないので、最初は物珍しさから少し楽しいのだけど、だんだん飽きてきて作業になってくる。
単に私がヘタなだけかもしれないが、ゲームバランスが悪いと感じた。結構寄り道してキャラを成長させたつもりで遊んでいても、雑魚敵に思ったより苦戦することが多かった。敵にどのくらい楽勝で勝てたかどうか、戦闘終了後にレーティングが表示されるのだけど、一体何が悪いのかよく分からずに戦闘が長引くことがたびたびあった。ちゃんとライブラで敵の弱点を把握した上でその弱点に合った弱体を入れているつもりなのに。あ、途中から強化(エンハンサー)をないがしろにしたのが悪かったのだろうか。オプティマやロールはすぐに切り替えられるけれど、戦闘中にキャラの入れ替えはできないようになっていて、キャラごとに得意なロールがあるので、出現する敵に合わせてキャラ編成をさせたかったのかもしれないけれど、どのロールが有効なのかが地味にしか分からないのでそのままダラダラと続けてしまったのが悪いのだろうか。
ほかにも細かい不満がいくつもある。せっかくオプティマやロールで戦術性が豊かなのに、キャラの立ち位置がいい加減なので、キャラが団子状態になってしまい、まとめて敵の範囲攻撃を食らってしまう。召喚獣がいまいち役に立たない。TP消費技の使いどころが難しい。一方で、中盤までの展開でコロコロと固定戦闘メンバーが変わるのは、戦闘の色んな趣向が楽しめるという点では良かった。
音楽は十分良かったと思う。
13章構成になっていて、10章までが一本道の逃亡劇になっている。その間、ときおり回想シーンが挟まれ、それぞれのキャラが自分の知る過去を明かしていく。プレイヤーはモザイクが完成するごとに真実を知らされていく。この演出自体は悪くないのだけど、明かされる真実とやらに全然魅力がないので逆にイライラする。特にボーダムで花火が上がる場面を見せられるたびにいい加減にしろと言いたくなる。
11章から下界でのミッション攻略が始まり、広大なフィールド上で割と自由に行動できることからネット上での評判がいい。ここから始めさせろと言う声が多数あった。確かにワクワク感があったけれど、別に大した趣向ではないとも思った。脈絡ないし。でもやり込み要素として多くの人を満足させたみたいだった。最終的に巨大な亀の敵を相手に何度も何度も単調な戦闘を繰り返すことに落ち着くみたいだけど。
武器やアクセサリ(防具)を改造して強化することが出来る。強化には素材を使う。素材には生体系と機械系があって、生体系でボーナスを増やしてから機械系で一気にポイントを稼いでレベルを上げるという趣向になっている。あれだけいっぱいある素材が結局ほとんど何の個性もなく単なるポイントだけになってしまっている。まあヘタに相性とかつけられても面倒なだけなのかもしれないけど。
アクセサリには色んな種類があって考えられているけれど、武器はよくわからなかった。キャラごとに固有武器系統があって、それぞれ大きく八種類ぐらいしか武器がない。弱体成功率が上がるもの、ブレイク不可能な代わりに攻撃力が高いもの、など色々個性があるのだけど、ゲームの序盤から終盤まで入手武器の強さに差がないため、たとえば「強い武器を入手する」なんていう機会は発生しない。入手武器は平等で、改造しないと強くならない。改造も中盤ぐらいまでは素材不足であまりできないので欲求不満になる。
この作品、ストーリーが死んでいるのは置いておいて、プレイステーション3という高性能ハードでのRPGのありかたという点では一定の評価をされるべき作品だと思う。細かい不満がいくつもあってイライラするけれど、12のガンビットのようなAIを使ったリアルタイム戦闘とはまた違ったRPGの可能性を示した。対抗馬のドラゴンクエストシリーズが9で携帯機のNintendo DSになってシステムの熟成をはかったのと比べると、正直あまり成果は上がっていないけれどちゃんと進歩して新しいものを見せてくれたなあと思う。ドラゴンクエスト9のほうがずっと面白かったけれど、その点だけは素晴らしいと思う。
(最終更新日: 2023年8月8日 by ひっちぃ)
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