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    西尾維新 (講談社 講談社BOX)

    いまいち(-10点)
    2012年11月10日
    ひっちぃ

    命に係わる危機を乗り越えた高校生男子・阿良々木暦が、日常に戻って大学受験に備えて勉強する日々を送っていたあるとき、自分の姿が鏡に映っていないことに気が付く。忍野忍に血を吸わせなければ吸血鬼の能力が使えないはずなのになぜ?人気ライトノベルのシリーズ完結への序章。

    表紙は斧乃木余接という童女の式神というか人造人間まあフランケンシュタインの仲間か。だから今度はこいつに焦点を当てて話が進むかと思いきや、単にこの世界での怪異が本来どんなものであるかを説明させるための存在に過ぎないのだった。

    今回は話がひどいなあ。意味ありげに登場した新キャラが自己完結して終わるだけ。自己完結っていうか自分の属する世界の秩序に従っているだけなのだけど、その真意については一切語られず。続刊への伏線にしてもひどい。

    今回の目玉は、主人公の阿良々木暦が中学生の自分の妹と一緒に風呂に入るシーンか? つまらない意地の張り合いから流れ上仕方なく一緒に風呂に入ることになる二人。ほかの作品だと互いに意識しあってどうのこうのあるわけだけど、この作品は地の文でそういう感情を否定しつつも事実が積み上げられていってなんとなくわかってくるという面白味がある。

    あともう一つ。式神であるとされる童女は、つまり人形なのだという設定の妙を生かして、今回はあっと驚く登場の仕方をし、そしていかにも人形にありがちな凌辱を受ける。プッと笑ってしまった。

    でも今回は主人公のモノローグがうざすぎる。「目覚まし時計」という言葉から色々屁理屈を組み立てるのだけど、阿良々木暦ってこんなキャラだっけ?すごく西尾維新っぽいけれど、阿良々木暦は違うと思う。そして内容自体がどうしようもなくつまらない。こういう文芸が好きな人が読んでもいまいちだと思う気がする。知らないけど。

    今回の話がいまいち盛り上がりに欠けるもう一つの理由として、主人公の相方であり運命共同体でもある忍野忍がほとんど脇役になってしまっていること。主人公にすべてをゆだねているから言葉少なになっているのだという説明もできるけれど、ここはもっと話に加わるべきところなんじゃないかと思った。もっとも重要なポイントだけは押さえたけれども。戦場ヶ原ひたぎも出てくるけれどあんまり会話なし。

    というわけで分量の割に面白い個所があんまりなくてつまらない作品だった。

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