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幽☆遊☆白書
冨樫義博 (集英社 ジャンプ・コミックス)
まあまあ(10点) 2013年3月17日 ひっちぃ
中学生の不良少年・浦飯幽助は、喧嘩が強くてすぐ問題を起こして教師やみんなから嫌われていたが、あるとき車にひかれそうだった子供を助けて代わりに死んでしまう。それを見ていた幽界の人間が、生き返るチャンスをやろうと幽助に話を持ち掛ける。かくして幽助は、幽界の指示で人助けをする探偵のようなことを始める。週刊少年ジャンプに連載されていた人気少年バトルマンガ。
学生の頃、この作品の連載が始まったとき、自分は週刊少年ジャンプを購読していた。少ない小遣いをやりくりして、毎週このマンガ雑誌を買っていた。それほど当時の「ジャンプ」には面白い作品がたくさんあった。しかし、この作品はあまり面白くなかったのでいつも読み飛ばしていた。そのうち人気が出てきてアニメ化されたりゲーム化されたりして、どうやら大ヒットしているらしいということは知っていたけれど、この作品に対する興味は大してわかなかった。しかし最近、同じ富樫義博によるHUNTER×HUNTERという作品のアニメを見て面白いなあと思っているうちに(原作マンガのほうはとっくに見ていたが)、だったらその前の幽遊白書のほうも面白いんじゃないだろうかと思えてきたので読んでみた。
序盤がとにかくつまらない。これじゃあかつての自分が読まなかったのも無理はないなと思った。
一言で言うと人情もの話になっている。幽助は悪いことばかりやっていたので友達もいないし教師からも疎まれていたのだけれど、彼の死を悲しんだ人が三人いた。幼馴染のおてんば少女・雪村瑩子と、母子家庭で一人で幽助を育てた元ヤンの母親と、いつも喧嘩で幽助に負けていた同じく不良の桑原和真。幽体となってさまよう幽助は、自分が死んだと思ってそれぞれの形で悲しむ三人を見る。ここまではよかった。
しかし、幽助が生き返るための条件として幽界からあれこれ指示されたりいくつかの条件を満たさなければならなかったりする話が行き当たりばったりで、幽助とは関係のなかった人物についての単発のお涙頂戴話が続く。読み物として決してつまらなくはないのだけど、無名の少女漫画の平均レベルにも劣る話ばかりだった。
幼馴染の少女との仲が進展しない。序盤に限らず終始ほとんど進展しない。というか出番すらあまりない。幽助が幽体になってさまよっているあいだ、幽界との仲介をする「ぼたん」という少女が実質的なヒロインとなる。幽助は「ぼたん」に対してはなんとも思っていない。ただ、いつのまにか幽助と親しくしている「ぼたん」に対して、瑩子がなにやら嫉妬しそうになるシーンが出てきて、これは面白くなりそうだなと思ったのだけど、結局それっきりになってしまった。ジャンプはあんまり恋愛を前に出さない方針みたいだからこんなものか。恋愛を前に出している小学館の週刊少年サンデーの部数がひどいことになっているみたいだし、少年向けには友情と勝利の優先度が高いんだろうなあ。
友情のほうは、桑原和真という不良仲間というか幽助のほうは最初なんとも思っていなかったけれども桑原のほうは幽助を非常にライバル視していてなにかと対抗してくるキャラがいたり、最初は敵として出てくる蔵馬や飛影なんかが出てくる。しかし、戦いのときに協力することが戦闘力を上げるだとか、仲間を気遣うシーンがあるものの、友情と呼べるほどの熱い何かがあるわけではないと思う。
で、確か最初の3巻ぐらいまではこんな調子でぼやけた展開が続くのだけど、だんだんバトルの占める割合が上がってきて、ついにはバトルものにありがちな武闘大会が始まる。ここへきてやっと少し面白くなってくる。この暗黒武術会編は、この作品の一番盛り上がるところだと思う。ちなみにその前には修行しにいくお約束の展開まである。大会が終わると、新展開としてまた違った能力を持った人間たちが幽助たちの前に立ちはだかり、それが魔界の関係者である一人の男の野望につながり阻止する話がある。最後に、魔界を舞台にした非常にスケールが大きくて荒唐無稽な話が始まるものの、急速にしぼんで物語は完結する。
この作品が全19巻で累計五千万部も売れているのが信じられない。なぜこんないま一歩な作品が大ヒットしたんだろう。なにか自分はこの作品の持つ魅力を見落としているんだろうか。単に好みじゃないからだろうか。あるいは読んだ時期が悪かったんだろうか。自分はかつて同じ雑誌に連載されていた車田正美「聖闘士星矢」が大好きだったのだけど、いま読み返したら同じようにいまいちと思うのかもしれない。いまの自分はこの作品を、才気ある作者による初期作品としてなら理解できるのだけど(特に終盤)、こんなにヒットしたという事実を受け止められない。いまからすると夢のような18時台という恵まれた時間帯でアニメ化されたからだろうか?
読者アンケートで人気キャラのランキングをやっていたので見てみたら、主人公の幽助を差し置いて、飛影と蔵馬の人気が高かったのに驚いた。幽助自身にそれほど魅力がないのは納得の結果なのだけど、飛影のどこがいいんだろう。飛影のちょっといい話は終盤なのでランキング集計前のことだし、こいつはドラゴンボールで言えばベジータみたいな位置づけのやつだから…あ、そういうことか。蔵馬は妖怪だけど人間として転生していて最初のほうでいい話が出ている上にビジュアル的にも優男なので人気があるのはまだ分かる。
結論を言うと、HUNTER×HUNTERが面白いからといってこの幽遊白書に手を出すのはやめておいたほうがいいんじゃないかということ。もしそれでも読みたいなら序盤がつまらないのは諦めること。また、そこを過ぎてもHUNTER×HUNTERほどはおもしろくならないので過度な期待をしないこと。終盤の超展開はあまり余計なことを考えずに楽しもうとすること。これだけ守っていればそれなりには楽しめると思う。
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コメント
自己犠牲の要素あり ひっちぃ そういえば幽助は、蔵馬と出会ったばかりのエピソードで、蔵馬が自分の命を犠牲にして育ての親を救おうとしたときに、自分の命を少し分ける代わりに蔵馬の命を助けようとした。これも「友情」に分類されるんだろうか?うーん、出会ったばかりの頃だから、これはむしろ博愛に属していて、あまり少年マンガ的な要素じゃないように思う。どうなんだろう。
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