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    倉山満 (扶桑社 扶桑社新書)

    傑作(30点)
    2014年12月29日
    ひっちぃ

    「中国五千年の歴史」なるものがまったくの虚構であること、古代から現代に至るまでの中国大陸は革命と内部闘争の繰り返しであること、そしてそんな中国に日本がどれだけ振り回されてきたのかを、憲政史の研究者である倉山満が解説した本。

    YouTube上にアップされている番組CGS「じっくり学ぼう!日本近現代史」が面白かったので、講師の倉山満がその中で頻繁に紹介していた本書を買って読んでみた。

    まず中国大陸の無限ループの法則を提唱している。八段階あるとしているのだけど、引用が面倒なので簡単にまとめると革命と内部闘争の繰り返しになる。それを夏から現代の中華人民共和国にいたるまでの歴代王朝すべてに当てはめて見せる。これはまあ面白いのだけど、同じような説を唱えている高島俊男「中国の大盗賊・完全版」(講談社現代新書)という名著を読んでいたのでそれほど驚きはしなかった。しかし、高島俊男が革命分子の集結から成功までを重視していたのに比べて、倉山満の方は革命後の内紛のどうしようもなさに焦点を当てていて、むしろこっちのほうが中国大陸の本質を的確に捉えているように思った。まず功臣から粛清していくだとか、敵対していた勢力を外征時に先頭に立たせて突っ込ませて人減らしをするだとか、自己正当化のために歴史を書き換えるだとかあけすけに書いている。

    そんなどうしようもなく混沌としているのが中国大陸だという前提の上で、ようやく清朝末期と日本との抗争についての解説に入る。約束を守らない、居留民を襲ってむごたらしく殺す、ウソをついて騙す、と勝つためならなんでもやるのが中国人だという前提に立つと、日本がなぜ中国大陸で泥沼の戦いに巻き込まれたのかがすんなりと説明がつく。もっとも筆者は、中国人のどうしようもなさを訴えるというよりは、そんな中国人に対してうまく対処できなかった当時の日本の政治家や外交官や軍人を責める方向で話を進めている。

    一番印象深かったのが、二十一か条の要求についてのエピソードだった。これは正確には十四か条の要求と七か条の希望に分かれているらしいのだけど、日本はこれを袁世凱との交渉のベースにしようとしていた。しかし袁世凱は一計を案じて、中国の民が渋々要求を飲むよう「最後通告」として出してくれないかと裏で日本側に言ってきたという。それを聞いた日本側はそういうことならとまんまと「最後通告」として要求を出してしまう。袁世凱はそれをいいことに諸外国に対して日本の非道を訴えて日本を悪者にしようとした。なんだかまるで河野談話のときの韓国の作戦にも通じるものがあり、今も昔も日本は変わらないんだなとうんざりしてしまう。

    よくある争点として、いわゆる「南京大虐殺」についても触れている。著者は8ページで9つの論点を挙げて否定している。それぞれの論点はこの手の話が好きな人にとっては定番のものなのでいちいち紹介しないけれど、完全なでっちあげ説を取っている。自分はこれまでは、軍服を着ずに民間人のふりをして襲ってくる国民党軍の兵士と戦うために、日本兵が間違って本物の民間人もそこそこ殺しちゃっていたんじゃないかと思っていたのだけど、そもそも国民党軍は司令官が逃げて戦う意志がなかったので軍服を着たままの兵士が自国の民間人を殺して服を奪って逃げたんじゃないかと思うようになった。あと一応、当時日本国民だった朝鮮人が暴走した説もあるかなと思っているのだけど、論点の一つとして挙がっている「南京の人口がその後増えた」があるのでやっぱり民間人虐殺の類は一切なかったんじゃないかと思う。逃げ遅れた国民党軍の兵士を処刑したという記録があるという話も聞いたことがあるのだけど、これまた論点の一つである「捕虜となる資格すらないゲリラ兵」だったのだから虐殺には当たらない。

    シリーズ前著「嘘だらけの日米近現代史」と比べてボリュームが1.5倍ぐらいあり、そのせいか新書の割にそこそこ記述が充実している。もっといくつか重要なポイントを絞って紹介したいと思ってもう一度パラパラと本書をめくってみているのだけど、内容盛りだくさんなので他にどこを重点的に紹介しようか絞り切れなかった。YouTubeの「じっくり学ぼう!日本近現代史」と内容がかぶるところも目立つのだけど、そっちを見ていない人にとっては特に読み応えのある内容になっていると思う。いま尖閣諸島なんかで明確に敵対しつつある中国の真実を知るうえでとても良い本なのでぜひ勧めたい。

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