アホガール
ヒロユキ (講談社 講談社コミックス)
まあまあ(10点) 2015年4月17日 ひっちぃ
高校生のまじめな男・阿久津明には、アホすぎる幼馴染の女の子・花畑よしこがいて付きまとわれていた。他にも彼のまわりにはアホばかり集まり、煩わされる毎日を送っている。少年マンガ。
直球の題名と、涙を流しながらバナナを「うめぇ」とほおばる女の子の絵に衝撃を受け、読んでみた。
花畑よしこが並のアホじゃない。アホかわいい女の子というのはオタク系の作品によく出てくるのだけど、もうかわいいとかそんなレベルじゃなくて、現実に存在したら本当にうっとうしいレベルのアホ。表情もちょっとユルい。少年誌の爆発的なギャグマンガに出てくるような全力のアホキャラと同等の女キャラというのは、ありそうで今までなかったと思う。
花畑よしこは阿久津明(あっくん)のことが大好きなのだけど、そんなに恋愛脳というほどでもなく、遊んでくれとうるさい。このままだと放っておくとどうなるか分からないので、阿久津明はなんとかしてこいつを一人でも生きていけるよう勉強や一般常識を教えようとする。
アホなのはこいつだけじゃなくて、花畑よしこのことがとりあえず一通り描かれたあとは「風紀委員長」の女に焦点が当たる。こいつは役職上とても風紀にうるさくて阿久津明と花畑よしこの様子を見て色々と注意してくるのだけど、そのうちいつのまにか阿久津明のことが好きになって訳の分からない行動に出始める。花畑よしこがアホの中のアホなら、こっちはまじめバカで恋愛バカって感じなんだろうか。
アホばかりだとストーリーが破綻するので、常識人キャラとして隅野さやかというかわいい系の世話焼きキャラが出てくる。でもこいつはお人よしで押しに弱いのでなんだかんだで花畑よしこの被害者になるのが面白い。また、こいつにも若干アホな部分がある。
自分が一番好きなのは、花畑よしこの母親よしえ。娘の将来というより自分の老後が心配なので娘を阿久津明とくっつけようとしているというのがウケる。あの手この手で既成事実だの実力行使だのしてくるのがすごく面白い。変人の母親キャラというのは、例えば入間人間「電波女と青春男」とか色々いるのだけど、ただ性格が変わっているだけで何を考えているのかよく分からないつかみどころのないキャラが多いと思うのだけど、このよしえの場合は目的がはっきりしていて手段を選ばずなりふり構わないところがいいと思う。それに、こいつ自身、娘のアホぶりに振り回されているので嫌味がない。女の変人キャラってなんか上から目線なのが多いと思うんだけど、阿久津明にすがるような姿勢が斬新でよかった。
一方で、不良の黒崎龍一がコロッと阿久津明に惹かれて友達になろうとするところはなんかいまいちだった。なんかギャップを活かしきれていないような気がする。この手のキャラって不良としての力を保ったまま仲間になって主人公のためにやりすぎることによるギャグが展開されることが多いと思うのだけど、こいつはすっかり改心してヘコヘコするばかりになるのでとても情けない感じばかりする。
妹の阿久津瑠璃もなんかもったいない感じがする。全力ではないアホキャラで、花畑よしえのことを嫌っているところが面白いんだけど、他のアホキャラに押されてあんまり目立っていないと思う。
花畑よしこが近所の小学生たちからも呆れられているのがウケる。
この作品は4コマ目に独特なものがあると思う。3コマ目でボケがあって、実はこの時点ですでにほとんどオチているのだけど、4コマ目でツッコミが入ったり(ヘンな余韻がある)、ボケを重ねたり(どうしようもなさが増す)、あるいはボケの軌道修正が行われたりする(意外な方向に飛んでいく)。最初は読んでいてなんだか稚拙な感じがしたのだけど、だんだん高度なテクニックなんじゃないかと思うようになった。これ新しいんじゃないだろうか。
花畑よしえと「風紀委員長」の二大アホが話を引っ張っていて、その周りをサブキャラのアホたちが彩っているのがこの作品なのだけど、もっとアホのバリエーションは増やせると思った。天然バカのかわいい系の女の子とか、歯止めのきかない熱血バカとか、策を弄しすぎて裏目に出るバカとか。あ、「風紀委員長」が全部引き受けているのか。
好みが分かれそうな気はするけれど、ありきたりじゃないギャグマンガを読んでみたいという人なら読んでみるといいと思う。萌えたい人には勧められない。
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