未確認で進行形 6巻まで
荒井チェリー (一迅社 4コマKINGSぱれっとコミックス)
まあまあ(10点) 2015年4月24日 ひっちぃ
母子家庭の姉妹のもとに、許婚だと言う男の子とその小姑が押しかけてきて一緒に暮らすようになった。どう考えても小学生にしか見えない小姑は二人を半ば強引にくっつけようとするが、無口な男の子からの押しつけがましくない好意に、小紅は戸惑いながらも心を開いていく。四コマ風マンガ。
2014年にアニメ化されたのを見て微妙だなあと思いながらも、ほのぼのとした日常系の話を楽しめたので原作も見てみたくなった。
この作品の一番のポイントは、題にある「未確認」が「未確認飛行物体(UFO)」のような意味での使われ方をしているように、許婚だという男の子とその小姑が特殊な能力を持つ一族の人間であるところ…のはずなのだけど、作中ほとんど能力を使わない。小学生(?)の小姑・真白がその力を使って姉弟の通う高校に強引に編入している点が一番大きいのだけど、それ以外はごく普通に生活している。正直、最初アニメを見ていたときは、こんな設定いらねーなんて思っていた。というか今も半分そう思う。
話の軸は、許婚の関係にある小紅と白夜の不器用なやりとりと、小姑の真白が小さいのに小生意気なことを言って二人をくっつけようとするところにあるのだけど、それ以上にその真白が姉妹の姉の紅緒にいじられまくる描写が多い。紅緒は高校では生徒会長をやっていて全校生徒から慕われる存在なのだけど、家では妹べったりで真白がやってきてからは真白のことを追いかけまわして暴走している。登場人物が少ないせいかそんなシーンばかりで進んでいっているように見える。
真白の背伸びが面白い。完全に幼女なのに小姑を気取っているところとか、そのくせ納豆とかおくらなんかのネバネバした食べ物が苦手だったり、なにかと紅緒につきまとわれて幼女のようにかわいがられ、それをものすごく嫌がるさまがかわいい。
真白と白夜は山奥の田舎からやってきたので、田舎者ギャグがたびたび見られる。信号機が少ないだとか、それなのに携帯電話は持っているだとか、いままで聞いたことのないお菓子に過剰な期待を寄せたりするのが面白い。
ただ、自分は日常系の作品が好きなのだけど、思ったほどこの作品には惹かれなかった。理由はよく分からないんだけど、真白に焦点が当たりすぎているのと、それ以外の点で単調だからなんじゃないかと思う。
他の日常系の作品と比べて、登場人物のキャラの膨らましが少ないと思う。ストーリーを展開するつもりがないみたいだから、この手の作品はキャラクターを見せていくものだと思うのだけど、見ていてあんまり愛着が湧かない。真白にはカレーが好物だとか自分がUMA(未確認動物)なのにネッシーなどのUMAのチョコ玩具を集めているだとかこまごまとした設定が盛られてキャラクターが魅力的になっているのに、他の登場人物にはそういうのが少ない。
トラブルメーカーの紅緒とあと新聞部のお調子者の女の子がなんかいまいちで、自分勝手なところにばかり目が行ってイヤな感じがする。こいつらは人に迷惑かけてばかりで、自分が失敗して痛い目にあうことがあまりないので好きになれなかった。
一方で、紅緒のことが大好きな生徒会書記の女の子がいて、家と学校での紅緒の表裏を際立たせていて面白かった。こいつは紅緒を崇拝するあまり妹の小紅に突っかかる、自分勝手で攻撃的なキャラなんだけど、小紅のことがうらやましくてしょうがないという弱みがあるのであまり嫌な感じがしない。まあ紅緒にも一応そういうところがあるのだけど、なんか色々と超越していて人間って感じがしない。
小紅は基本的におとなしめの妹キャラで、姉の紅緒のことを姉様(ねえさま)と呼んでいて(紅緒の希望でそう呼ばせているらしい)真面目なキャラなのだけど、口調は割とぶっきらぼうで男言葉を使うのがアニメを見ていてとてもかわいいと思った。なにかと反発するところも。
うーん、こうして色々思い出しながら書いてみると魅力的な点が割とあるのだけど、読んでいてなにか微妙というのは変わらないのだった。なにかもっと仕掛けがあればもっと面白かったと思う。せっかく謎の力を使える一族が出てくるのに、その設定を使ったワクワク感がまったくないというのはどうなのだろう。一迅社といういかにも編集の力の弱そうな新興出版社の限界なんだろうか。まあそこが逆に、あざとくない自然な作品として楽しめる理由でもあるのかもしれない。
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