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    原作:海法紀光 作画:千葉サドル (芳文社 まんがタイムKRコミックス)

    まあまあ(10点)
    2015年9月13日
    ひっちぃ

    高校の校舎内でまるで毎日が合宿であるかのように寝泊りする「学園生活部」の少女たちの日常を描いた作品…かと思いきや、人間がゾンビ化する感染症が広まった空想未来の日本で精一杯生きていこうとする話。少年マンガ。

    2015年7月からアニメ化されて放映されていたのを見て3話で視聴をやめたのだけど、その後にネットでの評判(必ずしも良いものばかりではない)をみて少し興味が湧きなおしたので原作であるこのマンガのほうを読んでみた。

    結論から言うといまいちだった。

    この作品の何がカギかというと、主人公のムードメーカーな女の子が分裂病になっちゃってるところ。彼女の頭の中では今も学校のみんなが生きていて一緒に授業を受けたりおしゃべりしたりしている。そのことを友人二人は痛ましく思ったり逆に彼女の明るさに元気づけられたりするという複雑な気持ちをもって寄り添っている。主人公の女の子は類型で言うとイタかわいいヒロインなんだと思う。

    で自分はこのイタかわいいヒロインのことが好きになれなかった。無邪気すぎて腹が立ってくる。たとえば周りのみんなを元気づけようと思っているヒロインだったら、そのけなげな意志の強さに魅力を感じるのかもしれないけれど、こいつの場合単に自分の心が折れて逃げているだけ。じゃあかわいそうな魅力があるのかというと、頭の中がお花畑なのでそれも感じられない。このキャラを好きになる人っていうのは、そんな彼女のことを全部包み込んで愛することが出来るような想像力と感受性の豊かな人なんだと思う。少なくとも自分にはムリだった。

    友達が二人いて、一人はスコップ持ってゾンビと戦う活発な元陸上部の少女で、一番感情が豊かで激高したり悲しんだりしてすぐ行動に出る魅力的な女の子。実質的な主人公はこいつなんじゃないかと思う。もう一人はこの不安定な生活を続けるために帳簿をつけて色々考えている賢い少女で、あまりこいつ自身のことは語られないので実質的に物語の進行役というか調整役みたいになっている。

    アニメ版には最初からもう一人いるけれど、この原作マンガのほうだと途中参加してきて、改めてこの部の人間関係やこの物語についての冷静な視点を与えてくれるようになっている。

    他に顧問の先生がいる。この先生の存在自体が第一部でのメインテーマになっている。ネタバレになるので詳しくは書かないけれど。

    ストーリーものとしては、この悲惨で孤立した状況の中で、目先の生を追いかけること、長期的な生存手段を確保すること、救助されるための策を講じること、他の生存者を探すことなんかがあるのだけど、どれも大して面白くなかった。

    こんな状況なのに遠足とか肝試しなんかをやっちゃうところがありえない。主人公の頭の中がお花畑状態なので、そんな理由をつけないといちいち行動できないからなのだけど、それを主人公目線で描いてしまって一体どうしたいのだろう。まさかこれで萌えろとでも言うんだろうか。周りの危険な状況が分からないでただなんとなくおびえている幼い女の子に萌える作品ってことなのかな。

    現在の状況があまりはっきりしないのがもどかしかった。主人公目線だと単に部活動やってるだけっていう認識だから。

    ゾンビは階段を登ってこれないため、校舎の二階以上は安全地帯になっている。一階は階段手前でバリケードを組んでいてそれ以上入ってこれないようになっている。一階には購買や図書室なんかがあるので、定期的に危険地帯に足を踏み入れて目的を果たしに行く必要がある。また、学校にある物資には限りがあるので、近所のショッピングモールなんかに遠征に行く展開もある。

    スコップ持った元陸上部の少女が、片思いしていた男の子への想いを回想するところは、なんとなくいい感じではあったのだけど、あんまり入っていけなかった。どうしてだろう。男の子が終始影絵のような描かれ方をしていて、少女との交流みたいなものがなかったからだろうか。それとも、男の子がゾンビ化しただけじゃ安易に感動は得られないってことなんだろうか。

    顧問の先生の想いが結局あんまり描かれていなかったと思うのだけど、もっとなにか読み取れたのだろうか。主人公の女の子の頭がお花畑になるきっかけを作ってしまったというけれど、何が理由だったのかよく分からなかった。「学園生活部」を作ったこと?

    にわかオタクの自分にとっては、この作品が量産された美少女ものの一つという域を出なかった。でもまあ5巻まで読み進めることが出来たということは、それなりに読めたということでもあったのかな。

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