掟上今日子の推薦文
西尾維新 (講談社 講談社BOX)
まあまあ(10点) 2015年10月10日 ひっちぃ
眠りに落ちるとその日の記憶がなくなってしまう「忘却探偵」の掟上今日子さんが、芸術家を囲っている高層マンションでの事件を解決する。ミステリー出身の西尾維新がミステリーに回帰して描いているシリーズの第二弾。
第一作目を読んで割とおもしろかったし、今日子さんの奇矯なふるまいが魅力的だったのだけど、今回は結論からいうとあんまりおもしろくなかった。
導入部、才気あふれる小生意気な少年が出てくる。すっごい西尾維新的なキャラ。このシリーズは割と普通の小説風に進めていくのかと思ったら、こんなマンガ的なキャラが出てきて面食らった。こういう特殊な人物を出しちゃったら、こいつの悩みとかあんまり共感できないので、作品の底が浅くなると思う。まあ一人称をとっている警備員は一般人なので、今日子さんと少年の奇人ぶりを際立たせているのだろうけれど、こいつのことは大して掘り下げていないし。っていうか前作の語り手がまた出てくると思っていたら影も形もなかった。ちなみに三作目も最近読んだのだけど、いままで出てきたキャラは出てこない。と思ったら四作目には厄介氏がまた出てくるらしい。
序盤に出てくる絵の価格の謎はちょっとおもしろかった。同じ絵のはずなのに、その日その日の記憶を失う今日子さんが全然違った評価を下した理由とは?まあ大した謎じゃないのだけど。
色々雑だと思う。三十数階のマンションにエレベーターが一台しかないなんてありえないし。事件のカギとなる謎についてもふうんって感じ。今日子さん自身の謎についても何も語られないし。三作目でも何もなし。ひょっとして西尾維新はこの作品を長く書き続けていこうとしているから書き惜しみしているんだろうか。一作ずつ話が完結する作品なのだとしたら、話がもっとおもしろくないと読む気になれなくなる。期待の新シリーズだったのに。
この作品と同じモノを扱った作品といえば、最近読んだ米澤穂信の「鏡には映らない」(古典部シリーズ)のほうがずっとおもしろかった(軽いネタバレ?)。まあこっちはちょっと出来過ぎな感じなのだけど、なぜ折木が嫌われていたのかがやっと明かされたので。ただ、ヒロインがほとんど出てこなかったのが残念だった。ゲストヒロイン(?)もそっけなかったし。
知り合いのミステリー好きに勧めるにも弱いし、一体誰に勧めていい作品なのか分からないんだけど、流麗な文章を読みたい人にならまあ。
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