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    フクダーダ (角川書店 角川コミックス・エース)

    いまいち(-10点)
    2016年9月5日
    ひっちぃ

    母子家庭に育ち、母親の負担を減らすためにプログラマーのバイトに日々精を出す高校生の兼多航は、幼馴染にして現在住んでいるマンションの大家の娘である紅林智との遠慮ないやりとりの中で恋が芽生える気配はまだなかったが、ある日突然三人の「許嫁候補」の女の子がやってきて誘惑される。足並み揃える彼女らは、互いに「許嫁協定」を結んでいた。ラブコメマンガ。

    自分はフクダーダ先生のエロマンガのファンなので、一般コミックも描いていることを知ってすぐに飛びついて読んだ。

    この人の作品に出てくる女の子たちはとても人間くさくて、男に対して主導権を握ろうとして虚勢を張ったり、逆に開き直って正直になったり、かと思ったら再び自分の思い通りにしようとするといった駆け引きが生々しい。また、最初は言いなりだったけれど火がついて次は自分のやりたいように動いて男をたじろがせたり、逆に自信のない男に自信をつけさせてうまく自分を攻めさせようと振る舞ったりと、みんな魅力的でかわいい。

    というわけで期待がものすごく膨らんだ状態でこの作品を読んだのだけど、自分がいいと思っていた要素がほとんど見あたらず、さっぱり面白くなかった。

    話の筋を紹介していくと、まず三人の女の子が主人公の兼多航と再会するやいなや強制キス三連発をする。でもって一日の始まりに三人揃ってパンツを見せてあいさつするという意味不明の儀式。うーん。この人なりに売れ線を狙ったんだろうか。こんな痴女、受け入れられるはずないと思うのだけど…。

    この三人の女の子と主人公とは実は幼馴染の紅林智よりも前に子供の頃に出会っていて、遊びで結婚の約束をしてみんなで撮った写真にメッセージ書きしているのが残っている。そこから三人は十年の想いを温めており、大きくなった主人公のことを一度陰でこっそり見て想いをあらたにし、金と親の権力で学校の同じクラスに転入したり、同じアパートの部屋を借りて住んだりする。超ベタだけどこのへんはまあ流せばいいと思う。

    色々と展開はあるのだけど、基本的にはこの三人がそれぞれ主人公を誘惑していく話が続く。彼女らは痴女ではあるけれど一応恥じらいはあって、彼女らなりにそれを乗り越えてがんばっていっているのだろうけれど、もう既に針が振り切れていてあまり伝わってこない。

    三者三様に個性があって、まず帰国子女の王道ヒロイン(?)でちょっと変わったところのある扇黄珠代、モデルをしていてそばかすで普通の女の子っぽい藍京莉歌、大和撫子っぽいけど実は怪力を持つ黛紗苗。でもそれぞれ個性的なのになぜ協定を結んで同じような行動をとりたがるのかが意味不明。そしてそんな痴女三人組とは距離を置きながら実はむっつり痴女(?)の紅林智を加えた四人で主人公を取り合うのだけど、読んでいて心底どうでもいい感じ。

    紅林智はまあいいんだけど、三人が最初から主人公のことを好きという時点で、最初に書いたようにフクダーダ先生の魅力の多くを放棄してしまっていると思う。それとも既刊8巻まで出ていることだし、こういう今どきの売れ線でそれなりに当たっちゃってるんだろうか。であればただただ「俺損」なだけなのだろうか。

    協定女子三人とも個性的だけど、主人公に対するアプローチの仕方は結局みんな強引という点では変わらなくてつまらない。一見おとなしそうなキャラの黛紗苗に怪力という属性をつけている時点でもうどうしようもない。

    痴女痴女書いてきたけれど、男に対して積極的なのがダメなんじゃなくて、公衆の面前だとかみんな揃っているところで破廉恥なことをしてしまうという文字通り痴女なところがひどい。男にパンツを見せるところは必ずしも恥ずかしがらずに堂々としていてもいいんだけど(!)、男にパンツを見せているところをみんなに見せようとしないで欲しいし、先走っているところを見られたら恥ずかしがってほしい。

    主人公の兼多航が空気すぎる。時折彼女らの行動に対して感想らしきものをつぶやくだけといっていいほど存在感が薄い。この人の描く男キャラって、自分のやりたいことはしっかりと女の子に求めつつも、遠慮がちだったり気遣いを見せたり相手を立てたりと、活き活きしていてかわいくて(?)魅力的なのだけど、この作品にはそういうところはほとんど見当たらない。女の子たちを引き立てるための装置に徹している(?)。ハーレムものの成立条件を満たしていないんじゃないかと思う。

    そんなわけで、この作品唯一の魅力は幼馴染の紅林智になるわけだけど、なんとこいつも…。話の流れ的にはそんなに不自然ではなかったと思うのだけど、彼女が素直な恋心を出していくために選んだ結論に至るまでの心の動きがあまり読み取れなくて、彼女のこともあまり好きになれなかった。

    あとがきを読むと、作者が好きなように描いているように読み取れるのだけど、不思議でならない。のびのびと痴女を描きたかったんだろうか。

    絵はエロい。大きすぎる胸を除けば寸胴なリアル体型だけど魅力的。いかにもアニメっぽいいまどきの絵と比べるとクセがあってダサさも感じなくはないけれど、肉感的ですごくいいし、個性的で確立されていると思う。この絵、大好き。

    とりあえずこの作品の紹介はなかったことにして、成人向けの作品のほうを読むことを勧める。男性向けだけど、女性読者でも楽しめると思う。

    (最終更新日: 2019年6月1日 by ひっちぃ)

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