全カテゴリ
  ■ 映画、テレビ番組、舞台芸術
    ■ アニメ
      ▼ 君の名は。

  • 新着リスト
  • 新着コメント

    登録

  • 君の名は。

    監督・脚本・原作:新海誠 (制作:コミックス・ウェーブ・フィルム)

    まあまあ(10点)
    2017年9月11日
    ひっちぃ

    飛騨の田舎町で暮らす高校生女子の宮水三葉は東京に憧れており、ある日自分が東京の高校生男子になるという非常にリアルな夢を見る。と同時に、前日の記憶がなく、その間に自分が突飛な行動を取っていたことを知らされる。実は三葉は東京の立花瀧という高校生男子と時々中身が入れ替わっていたのだった。アニメーション映画。

    2016年に大ヒットした日本のアニメーション映画。「秒速5センチメートル」などで一部のアニメ好きに知られていた新海誠監督の六作目。NHKが特集するほどブームになったのだけど自分は結局映画館には行かず、Blu-rayが出るのを待ってから見た。面白かったけれど、思っていたのとちょっと違った。

    前半は男女入れ替わりが面白おかしく繰り広げられるほか、飛騨の田舎町の風景や伝統が描かれる。ちょうど中間点で、あっと驚く出来事というか事実が描かれ、後半はそれをなんとかできないか奔走する展開になる。ネタバレになるので詳しくは説明しないけれど、単なる男女入れ替わりではなく、ちょっと交錯していることが分かる。

    面白かったけれど、思っていたよりややこしい作品だった。こんなにSF要素のある作品が興行成績で日本歴代5位になったのが意外な感じがした。こういうのが割と好きな自分ですらちょっとスッキリしなかったのに、老若男女に受け入れられたというのがとても意外に思った。

    ヒロインの三葉もヒーロー(?)の瀧くんも際立った個性のない普通の高校生なのだけど、互いに入れ替わったことにより最初はどうせ夢だからとばかりに思い切った行動を取る。それにより、瀧くんになった三葉は女子力を発揮してバイト先の美人の奥寺先輩と仲良くなってデートの約束まで取り付けたり、三葉になった瀧くんは男子に気さくにボディタッチするなどして人気者になったりするのだけど、それぞれ自分の分を超えているため調子に乗るなと互いに不満を募らせる。二人はルールを決め、やってはいけないことを定め、その日に起きたことは互いのスマートフォンに日記として書いておくことにする。こうしているうちにいつしか二人はこの絆を掛け替えのないものと思い始める。しかしこの関係は唐突に終わる。

    正直、ヒロインの三葉のことをそんなに魅力的に思えなかった。家系で妹とともに巫女の仕事もやっていて、神事でみんなの前で踊ったり口噛み酒を造ったりするのだけど、それ以外は取り立てて特別な魅力を持つわけでもない普通の女の子だった。何かに打ち込んでいるわけでもなく、好ましい性格をしているわけでもない。生まれ育った飛騨の田舎町を嫌っていて東京に出たがっている。母親とは小さい頃に死別し、父親は家を出て土建屋と組んで町長をやっており、祖母と妹と三人暮らしをしている。

    一方の瀧くんも平凡な男の子で、父子家庭で新宿だか四谷だかの高校に通っている。バイト先の美女の奥寺先輩に惚れているけれど自分から積極的な行動を取れずおどおどしているところがかわいい。ヒロインよりは魅力があると思う。

    二人の対話がほとんどない。日記での間接的なやりとりと、あとは特別な場面での特別なやりとりだけ。あ、三葉が瀧くんのことをヘンタイとののしる場面があったっけ。でもなんかあんまり入ってこないセリフだった。

    妹ちゃんがかわいかった。宮崎駿「となりのトトロ」に出てくるメイを現代風にした感じ。姉になった瀧くんが毎朝胸を揉むところを目撃しての反応とか色々。全体を通じて何度か声に出して笑えたシーンがあった。ほかに、三葉の親友の女の子と男の子とが仲良さそうにしているところとか、瀧くんの友人二人が瀧くんを生暖かく見守っているところとか、ちょっと微笑ましかった。

    音楽をRADWINPSというバンドがやっているというのは最初不安だったのだけど、この作品に独特の空気感を与えていて良かった。ただ、音を途切れ途切れにするというミックス上の技巧が聴いていて不快だったし、バンドがやることじゃないと思う。ラップを取り入れたUVERworldみたいにミクスチャーはなんでもありなのかな。

    題の「君の名は」がよく分からなかった。名前ってそんなに重要だったんだろうか。むしろ名前をダシにして瀧くんが告白(?)しているところが良かった。

    ラストはこの監督独特の感傷で終わっていて、正直自分にはあまりピンとこなかった。「秒速5センチメートル」の場合はすれ違っちゃってるから感傷エンドが一番いいんだと思うんだけど、この作品はもっと分かりやすいハッピーエンドがよかったと思う。あ、作品の構造上、無理なのか。

    後半ダレた。映画館にはリピーターが多かったとNHKは報道していたけれど、自分は少なくとももう一度見たいとは思わなかった。普通の人にはこの作品はよく分からないうちに終わるのでもう一度見て確認したいとかそういった感じなんじゃないかと思えてくる。

    「秒速5センチメートル」は誰かに見せたい作品だったけれど、この「君の名は」はそれほどではなかった。だからあまり積極的に勧めたいとは思わないけれど、前半の男女入れ替わりは見ていて楽しいので、そこだけでいいなら勧める。

    (最終更新日: 2017年9月11日 by ひっちぃ)

    コメントはありません

    manuke.com