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    Massdrop, Noble Audio

    まあまあ(10点)
    2018年2月12日
    ひっちぃ

    クラウドファンディングサイトMassdropが、アメリカのオーディオガレージメーカーNoble Audioに企画を持ち込んで協業して作ったイヤホン。バランスドアーマチュア型ドライバを出来るだけ多く搭載することを付加価値にして高く売ろうとする従来のビジネスモデルではなく、ドライバ数を伏せて音で勝負する同社のモデルをベースとしながら、価格を安価に抑えているのが特徴。

    Massdropは不特定多数からの要望をもとに製品を企画して注文を集めてメーカーに持って行って独自モデルを安価で届けるので、ポータブルオーディオマニアの間で知る人ぞ知る存在になっている。提携先もその筋の有名メーカーばかりで、あらかじめ注文を集めているのでメーカーとしても売れ行きを気にしなくてよく、品質をそれほど妥協せずにコストダウンした独自のモデルをいくつも生み出してきた。バーゲンハンターの自分も気になったので、色々吟味してこいつを注文した。

    Noble AudioはKaiser 10(通称K10)というかつてのハイエンドイヤホンを生み出したことで知られ、JH AudioやCampfire Audioや64 Audioと並んでアメリカの高級イヤホン界(?)を代表するガレージメーカーと言われている。Kaiser 10はその名の通りバランスドアーマチュア型ドライバを10基も搭載した物量で押すタイプの機種なのだけど、その後はさらに増やす方向には行かず、次世代のハイエンドモデルKatanaでは減らしている。そしてドライバ数を公表していないSavantというモデルではたった2基しかドライバを搭載していないと言われている。そのSavantの亜種とネット上で言われているのがこのNoble Xなのだった。Savantと違ってこのNoble Xのほうはスペックが公開されており、高域用と低域用の2基しかドライバを搭載していないことが分かっている。

    能書きはこのへんにしてまず音について言うと、バランスドアーマチュア型の魅力が存分に発揮されていて、とても繊細な音がする。必要最小限のドライバ数なので音が澄み切っている。シングルじゃなくて二基なので低音も出ており、フラットで自然な音だと思う。

    スピーカーの世界だと一時期3wayとかが流行ったけれど、結局のところほとんどのモデルが2wayになった。トールボーイつまり床置きの大型モデルなんかだとスピーカーユニットが二つ以上ついているのが当たり前になっているけれど、それはエネルギーの必要な低音を安定して出すためであったり、単なるバスレフ(スピーカーユニットの裏側から出る音を誘導)であったり、点音源に近づけるためであったりする。ほかにはハイレゾ再生を謳って超高音を出すユニットとか、声を聴かせるためのユニットというのもあるみたいだけど、基本的には2wayつまり高音と低音の二つのユニットですべての帯域をカバーするのが一般的となっている。そんな基本に立ち返ったのがこのNoble XやSavant(?)の2wayだと思う。

    また能書きを書いてしまった。

    で、結局のところどうなのかというと、いま自分はこいつをほとんど使っていない。一番大きな理由は、音が細いこと。繊細すぎて移動中に聴くと騒音に負けてしまう。じゃあ家などの静かな場所で聴いていないのはなぜなのかというと、中域がなんだか物足りなく感じる。ヴォーカルが引っ込んでいるし、音がスカスカしている感じがする。それに、音にそれほど面白さを感じない。自分は録音がそんなによくなくて極端な音作りの曲をメインで聞いているので、音に繊細さよりも分かりやすさを求めてしまう。そうなると、多ドラつまりバランスドアーマチュアドライバをたくさん積んだモデルのほうが聴いていて気持ちいい。

    自分にはフィットも悪くて、装着して聴いていると自然に少し緩くなり、そうすると低域が減ってしまう。試していないけれどこいつにはコンプライが一番いいと思う。コンプライは耳に密着する半面、音の抜けが悪くなりがちなのだけど、このNoble Xは音が繊細なので遮音性も含めてぴったりだと思う。付属もしているし。イヤーピースは基本的に消耗品なのだからしょうがないけれど、コンプライは特に寿命が短いので、なんかもったいなくて付ける気になれなかった。

    自分の手持ちのデジタルオーディオプレイヤーの中では、Fiio X5 2ndとの相性が一番よかった。中域に独特のコク(?)みたいな味付けがあるので、プレーンな音作りのNoble Xに合ったんだと思う。ドライバ数が少ないおかげでアンプのパワーもおそらくそれほど必要ではないし。まあFiio X7 mk.2 + am5のほうが味付け少ないのに音がいいのだけど。

    こいつを注文してから届くまでの間に、MassdropでNobleのかつてのフラッグシップ機Kaiser 10 Universal Aluminumの復刻版が出たので思わずポチッてしまった。確か受付が去年の十月で、発送が十二月上旬の予定だった。しかし山火事が原因とかで発送が一月末に遅延するという案内が来た。さすがにそれだと正月セールかなにかで欲しいものが出てくるかもしれないのでキャンセルした。すでに二か月も待っていたのでその間に熱も醒めてしまった。ちなみにその後さらに半数の発送が遅れ、いまだに届いていない人もいるらしい。こういうサイトやガレージメーカーだとこんなこともあるんだなと思った。残りの半数は最近やっと届いたとのこと。発送が遅れる組には三万円ぐらいするケーブルがお詫びとして付くことになったらしく、ネットでは対象外の人々がちょっとキレていた。

    で、自分はキャンセルするとは思わなかったから発送までの間にいいケーブルを買っておこうと思ってBeat audioのsupernovaというモデルがちょうどmk.2が出て初代が投げ売りされていたので買ってしまった。K10UAが届くまでの間にとりあえずこのNoble Xにつけて聴いてみたところ、やけにとがった耳に心地のいい音になったのだけど、そのぶん繊細さが失われてフラットでなくなってしまった。面白い音なのでたまに聴いているのだけど、やはり騒音にはまだ弱いので移動中に聴くのには向いていなかった。加えてsupernovaのケーブルが固くてそのせいで耳から外れやすかった。自分が買ったのは2.5mmのバランスケーブルで、pioneer XDP-30Rで聴いた。

    iPhoneのLightningコネクタにさすことのできるケーブルもオプションとして確か$49ぐらいでつけられたので試しに買ってみた。3.5mmの普通のジャックに直接さすよりは多少いい音かなという程度だった。ケーブルの交換が面倒なのでいまはもう使っていない。

    アコースティックでおとなしい器楽曲を聴きたい人が、ちょっと味付けのあるアンプで聴くにはとてもいい選択だと思う。$249という値段からは信じられない位いい音を出す。ただ、アンプやケーブルで味付けしないと物足りない音になりがちだし、そもそも味付けするにも中域の物足りなさは補えない。それにクラウドファンディングなので試聴も基本的に不可能だし、募集期間も限られているので、そのあたりを念頭に置いて選んだ方がいいと思う。中古もあるけれど四万ぐらいするし。

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