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  • Roxanne II

    Astell&Kern(IRIVER), JH Audio

    傑作(30点)
    2018年3月4日
    ひっちぃ

    韓国の電子機器メーカーIRIVERの高級携帯オーディオブランドAstell&Kernが、アメリカのインイヤーモニターの権威Jerry Hervey率いるガレージメーカーJH Audioと提携して、従来のアクリル系ではなくフルメタルボディで仕上げた同社の看板モデル。低域と中域と高域をそれぞれ4基ずつ12基のバランスドアーマチュアドライバでカバーし、位相を揃えて繊細な音を出す。

    当初は約27万という定価で売られていたが、最近では大手家電量販店などで十四万ぐらいまで値下がっており、2017年秋になってNTTのグループ会社NTTレゾナントが運営するネットストアNTT-Xにて月一で行われているX-DAYという特売イベントで先着五名に十万で叩き売られたので衝動買いした。なお、先着五名分はなかなか埋まらなかった。

    自分は同社の高域特化モデルAngieを買って半年近く聴いてきてかなり満足していたので、そのうち安くなってきたら上位モデルや新製品を買おうと思っていた。次世代モデルAngie IIの展示品がヨドバシのアウトレットにて八万(+ポイント10%還元)で売られていたけれど、さすがに同じグレードのモデルを買い足すのはどうかと思って悩んでいたらすぐ売り切れたので、次の特売を狙っていたらこのRoxanne IIが出た。ドライバ数で言うとAngieが8基に対してRoxanneは12基搭載している。高域・中域・低域のドライバ数がAngieの場合は4+2+2に対してRoxanneは4+4+4なので全域が同程度にカバーされている。

    まあドライバ数が多いイコールその音域の音が大きいというわけではなくて、より繊細に鳴らすように各ドライバに分散しているだけなのだけど、それでも聞き比べてみるとサウンドチューニングからして中低域に厚みがある。ちなみに最上位モデルのLaylaは聴いたことがないのだけど全域でフラットらしく、それと比べるとRoxanneは中低域が元気なロック向けのチューニングだと言われている。聴いてみてそのとおりだなと思った。

    買う前にヨドバシカメラ新宿本店のオーディオコーナーで一回試聴していたのだけど、そのときはFiio X5 2ndというそんなにパワーのないデジタルオーディオプレイヤーしか持っていなかったせいか、そんなにいい音には思えなかった。なので正直そこまで期待してはいなかったのだけど、買って聴いてみたらマルチドライバの繊細さに加えて中低域の厚みと質感が素晴らしく、Angieの上位モデルだけはあるなと思った。

    12基もドライバもあるのでハイパワーなポータブルヘッドホンアンプChord Mojoで聴いてみたものの、中低域がもっさりして相性がそんなに良くないように思ったので、小型プレイヤーのpioneer XDP-30Rのバランス出力でしばらく聴いていた。JH Audioは濃いと言われている音なので、スッキリ系のプレイヤーで聴かないと一部個性を潰しあってしまうと思う。しかしずっと聴いているうちに、たまになんだか砂粒がはじけるような違和感を覚えたので、買い足したデジタルオーディオプレイヤーFiio X7 mk2 + AM5で聴くようにしたところ概ね収まった。さすがに12基もドライバがあると制動が困難なので、それが特に高域のドライバに影響を及ぼしたんじゃないかと思う。8基のAngieだとXDP-30Rでもきれいに鳴ってくれるし、ほとんどの曲ではRoxanneでも違和感なく鳴ってくれるのだけど。

    自分は高域特化モデルAngieをとても気に入って愛用していたので、この中低域重視モデルRoxanneはあまり好みに思わないんじゃないかと思っていた。本当は最上位モデルLaylaを狙っていたのだけど、初代Laylaは化け物みたいにでかいし、小さくなったLayla IIはなかなか安くならなかった。Laylaも12基だしクラシック向きだっていうから、ポップやロックを聴くならRoxanneのほうがサウンドチューニング的にいいんじゃないかと思って買うことに決めた。Laylaが一番フラットらしいけれど、次いでAngieのほうがフラットだというから、Roxanneのチューニングはとがっているんじゃないかと懸念していたのだけど、そこまで極端な味付けにはなっていなかった。むしろ、中低域が厚いおかげで電車の中でもしっかり聞けて良かった。それと、中低域の土台の質が高くてしっかりしているためか、上に乗っかっている高域の繊細さも強調されたように聞こえた。

    こいつの中低域はダイナミック型にも十分対抗できていると思う。Astell&Kernがドイツの大手音響機器メーカーbeyerdynamicに企画を持ち込んで作ったダイナミック型のT8ie mk2も再生品が投げ売りされていたのを最近買っちゃったので(!)聞き比べてみたのだけど、AngieのあとにIE800を聴いた時ほどにはダイナミック型の優位を感じなかった。でもさすがにダイナミック型のT8ieのほうが音が小気味よく弾けていて気持ちよかった(特にバランス接続で)。ただ、エージングがまだのせいもあってT8ieは全体的に出音が雑な感じがした。

    JH Audioといえば装着感の問題がある。Roxanne IIのボディは金属製になったのでずっしりと重いし、冬場だとひんやりするけれど、初代Angieよりも小さくて形もいいので、少なくとも自分の耳には引っかかってくれた。でも自分より耳の小さい人はちょっと厳しそう。自分もイヤーピースが皮脂で油っぽくなっていると耳からずり落ちてくる。冬場はニット帽で支えるとよい(?)。

    JH AudioはAstell&Kernとのコラボモデル以外にも同社単独でRoxanneというモデルを出しているのでまぎらわしい。ネットの評判によると、初代Roxanneは一番音が荒々しいけれど気持ちよく、コラボのRoxanne IIは金属ボディの影響か一番華やかで、さらにそのあと出た単独モデルの新製品Roxanneは一番手堅いといった感じ。このなかで、Astell&Kernとのコラボモデルだけは大手メーカーと組んだせいか在庫が潤沢で値段が安い。正直どのモデルが一番いい音なのかは知らないけれど、一番お得なのは間違いなくこのRoxanne IIだと思う。まあ、いくら安くても好みの音でなければしょうがないので可能なら試聴したほうがいいとは思う。

    Angieと同様にイヤホン側は独自の4ピンケーブルを採用しており、低域をダイヤルで好きなように増減させられるのだけど、入手性が低いので断線したら高くつく。高級な替えケーブルは数万ぐらいするけれど、Moon Audioというガレージメーカーのホームページから直接買うと一万円台から良質のケーブルが入手できる。Astell&Kernとのコラボモデルにはバランス接続推進のためか通常の3.5mmのヘッドホンプラグのアンバランスケーブルのほかに、2.5mmのバランスケーブルも付属している。

    ネットの評判だとフェイスプレートが外れやすいという報告が見られた。自分の買ったモデルはいまのところなんともない。

    前に見てみたら最近まで在庫のあったヨドバシやビックカメラの通販からはなくなっていて、オーディオビジュアル専門店フジヤエービックはまだあって11万ぐらいだった。この世界での有名メーカー製で国内入手可能な物量系の高級イヤホンの中ではもっともお買い得なのがこのモデルだと思う。すでに姉妹モデルAngie IIの在庫はなく、最上位モデルLayla IIはセールでも18万ぐらいする。個人的にはこういうものに掛けられる金額はせいぜい十万ちょっとぐらいまでなのでこのモデルは非常におすすめ。ただし、目の覚めるような素晴らしい音が聴きたければ、良いデジタルオーディオプレイヤーと良い音源(CDなど)も欠かせないということは言っておく。

    一方で、ダイナミック型ならばドイツの大手メーカーbeyerdynamicのxelento remoteがセールで十万円まで下がってきたので、こっちのほうがプレイヤーをそれほど選ばないし手堅い音作りと信頼性で勝るんじゃないかと思う。こいつはAstell&KernとのコラボモデルT8ieのあとでbeyerdynamic単独で開発した純正モデルであり、T8ieよりも一回り完成度が高いと言われている。自分はつい最近T8ie mk2を買って聴いた程度でまだ慣らし運転も大してしてないのでまだなんとも言えないのだけど、独特のイヤーピースの形状がやはり人を選ぶらしいもののRoxanneと比べてボディが大幅に小さいのに結構いい音を出していてびっくりしている。T8ieはフジヤエービックのアウトレットでいまなら七万ぐらいで手に入る。

    と、随分T8ieやxelento remoteを持ちあがてしまったけれど、ダイナミック型と一緒に聞き比べるとどうしてもバランスドアーマチュアドライバ型はなんとなく物足りない音がするように感じてしまうものなのでしょうがない。ただ、じっくり聴いているうちにやっぱりRoxanneのほうがいい音してるわ、と感じてくるのは確かなので、特に店頭なんかで試聴するときには気をつけたほうがいい。

    同じバランスドアーマチュア型の高級機は他にあまり持っていないので比較が難しいけれど、WestoneのW60と比較するとRoxanne IIのほうが明らかに重厚な音がする。ただ、W60はiPhoneのために作ったと箱に書いてあるとおり、iPhoneの3.5mmヘッドホンジャックで鳴らしても華やかで味のある音を出してくれる。まあ最近のiPhoneには3.5mmヘッドホンジャックがなくなってしまったのだけど、そんなに強力なオーディオプレイヤーを使わなくてもRoxanneと違って実力を発揮してくれる。逆に言えば、いいプレイヤーを持ってるなら絶対にRoxanne IIのほうがいい。

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